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子供向け活動量計のご褒美システムが新しい

2017年05月13日 12時00分更新

文● 四本淑三

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大人が子供を管理する仕組み

 大人向けのライフロガーと大きく違うのは、データを同期するのが保護者のスマートフォンという点だ。

 大人は自分のスマホに同期するのが普通だが、データ管理のために、10歳に満たない子供にスマホを与えるのは問題があるだろう。これについては後述するが、同期用のスマホを子供に与えてはまったく意味を成さない機能も内包している。

 まずvivofit jr.を買った保護者が最初にやる仕事は、自分のスマホに同期用アプリ「vivofit jr.アプリ」をインストールし、子供を登録することだ。

 同期したデータは、GARMINのクラウドサービス「GARMIN CONNECT」に蓄積するので、アカウントも必要だ。すでにほかのGARMINのデバイスを使っている保護者なら、そのアカウントでログインできる。

 保護者と子供はアプリ上では「ファミリー」として登録され、子供はボタンひとつでいくらでも増やせる。このあたりの画面はとてもサイバー感がある。一人で面倒見きれん、と思ったら保護者ももうひとり設定できるが、13歳以上の人間に限られる。ここでは保護者として「としみ」と、子供「としみ子」を設定した。

アプリ側の設定で、端末の液晶に子供の名前を表示させることもできるが、2バイト文字は表示できない。アルファベットなら大文字で7文字まで

アプリで確認できるデータは3つ。「ステップ数」と、1日の運動時間と目標に対する達成度合を示す「アクティブな時間」は、センサー側の画面でも確認できるが、睡眠時間と睡眠の状態を示す「スリープトラッキング」はアプリのみ表示できる

同じGARMINのデバイスを使っていれば、ファミリー内で歩数を競うこともできる。これは保護者が大人げなく勝ってしまった様子

子供のタスク管理「お手伝い」機能

 子供向けのデバイスらしくなってくるのはここから。冒頭で紹介した「お手伝い」と「ご褒美」は、子供のタスクとインセンティブを管理する機能である。

 決められたタスクを子供が実行すると「コイン」が貯まる。コインが子供と約束した枚数に達すると、子供は「おこずかい」や「新しいおもちゃ」といったご褒美と交換する権利を得る。

 タスクには「宿題をする」「おもちゃを片付ける」「歯磨き」のようなものがアプリにリストされているが、これは子供と相談して好きなものを追加できるし、報酬としてのコインの枚数も自由に設定できる。ご褒美と交換に要するコインの枚数も同様だ。

プリセットされたタスクのリスト

プリセットされたご褒美の例

 どんなタスクが出されているか、いままでにコインがどれくらい貯まったかは、センサー側の画面に表示される。それを見て子供はお手伝いに励むだろう、というのが大人側の目論みであり、要するにガミガミ言う手間を、活動量計にやってもらおうというものだ。

 ここで親が気を付けなけばならないのは、コインにはバーチャルな価値しかないが、ご褒美はリアルなお金や時間を消費するという点だ。タスクを乱発し、コインを発行しすぎて、ご褒美との交換が滞ると、確実に子供との関係が悪化する。バランスをうまくコントロールできそうにない場合は、この機能は子供にナイショにしておいてもいい。それでも子供の活動量のロギングはできる。

1日60分の運動を促進する仕組み

 GARMINがさすがだなと思うのは、コインに換算できるタスクの中に、活動量計で評価できる項目はひとつも入っていない点だ。そもそも公園で走り回るより日陰でゲームをしたいタイプの子供は、まず活動量をごまかす方法を考えるだろう。

 たとえば指先にベルトを掛けてクルクル回せば、歩数としてカウントされる。この際、真円ではなく楕円を意識したほうがカウントアップしやすい。しかし、ある時間だけ急激に運動量が上がると保護者にバレるから、適度にゆっくり回す、あるいはカウントアップの時間を分散させるような工夫が必要になる。

 ズルと言えばズルだが、長い目で見ると、これも人類が習得すべき知恵かもしれない。たとえば、もしなにかのはずみでAIが人類を支配する世の中になったとしたら、子供の頃からセンサーで管理され、その網の目をくぐってきた彼らこそが、人類を開放する救世主となる可能性だってある。

 大人だったら、ぜひそういう大きな目で見たいところだが、いま活動量をコインに換算してしまうと保護者が窮地に立たされ、やったやらない、ウソをついたついていないで言い合いとなり、子供との関係を悪化させることにしかならない。

 そこで活動量のモチベーション維持のためには「アドベンチャートレイル」という別の仕組みが用意されている。

 一日の活動量の目標は60分。この目標を達成すると次のステップに進み、ステージをクリアすると、そのたびに新しい生き物が登場するというもの。

 あいにく大人用のバンドがなかったので、私は指先にはめて3日間歩き回り、アドベンチャートレイルのステージひとつ分をクリアした。おそらく同じことを日本のメーカーがやったら、もっとエンターテインメント性を持った仕掛けができたかもしれないなあ、というのが感想だ。

 いずれにせよ活動量計のデータから子供の状態を判断し、コミュニケーションを取るのは、システムではなく保護者である。これが大人向けデバイスと大きく異なる2つめの点だ。

 そのような見地から、あなたにはvivofit jr.を子供に買い与える自由も、買い与えない自由もある。

■関連サイト



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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