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ヤフーは新人事制度を定着させるために何をしたか? ヤフーの人材育成「1on1」とは何か【第2回】

2017年05月09日 06時00分更新

文● 本間浩輔(ダイヤモンド・オンライン

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上司と部下が1対1で直接対話することの効果に注目(※写真はイメージです)

ヤフーの「1on1」が、人事の領域で関心を集めている。1on1とは、正しくは「1on1ミーティング」といい、原則として毎週1回、30分間、上司が部下と対話するという制度である。その狙いは何か。どのように制度を運用しているのか。1on1の生みの親である、本間浩輔・ヤフー上級執行役員に今回は「1on1を定着させるための工夫」について語ってもらった。

>>第1回を読む

経営陣全員が1on1の重要性を
理解し率先垂範してくれた

 ある事業部門で部長をしていた時に、私が勝手に始めた部下との定期的な対話。2012年に思いがけず人事の責任者を命ぜられ、この1on1ミーティングを全社の制度として、人材育成の柱としようと考えました。

 それまでヤフーは、隣の席の同僚ともメールでコミュニケーションを図るような会社だったのですから、1on1の導入は簡単なことではありませんでした。

 幸運だったのは経営体制が替わり、会社自体が変わろうとしていたタイミングでもありました。そのため、人事部門は、会社がどう変わっていくのか、また新しく行う1on1をなぜやるのかについて説明する機会を得ることができました。

 社内ポータルサイトなどを使って、「なぜ1on1をするのか?」「ヤフーは1on1をすることによってどう変わりたいのか?」というような、人事サイドの思いと要望を伝えることから制度導入を開始しました。

 この時に、私たちは、ほかの人事制度との補完関係を説明することと、人事が伝えたいことを伝えるのでなく、社員の疑問に答えることに留意しました。

『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』 本間 浩輔 (著) ダイヤモンド社刊 1944円

 人事制度の補完関係については「ヤフーの1on1は人事評価にどう結びつくのか」、また「管理職の職務定義と1on1をどのように関連させるのか」、「仮に個人の業務成果が優れた人が1on1をしない場合はどうなるか」など、丁寧に説明していきました。

 また、説明ではできるだけQAを多くしたり、質問に個別に応える時間を増やすなどして、社員の疑問にも答えるようにしました。

 この導入のフェーズで大きかったのは、経営層を巻き込んだことです。社長の宮坂学や副社長の川邊健太郎をはじめとする経営陣全員が1on1の重要性を理解し、率先垂範してくれたことが効果的でした。

 このことにより、はじめのうちは半信半疑だった管理職たちも、重い腰を上げざるを得なくなりました。

「部下が活躍する舞台をつくるのが
上司の仕事」

 また、「1on1」を実行せざるを得ない仕組みもつくりました。

 「1on1チェック」という仕組みをつくり、1on1の実施状況を可視化しました。

 これは、部下の側に、受けた1on1を点数化してもらい、それを上司にデータとして返します。

 点数化の指標は「内省効果」「気づき」「キャリア自律」「目標達成・評価」などで、これを3カ月に一回、実施します。

 大事なことは点数の高低ではなく、ビフォーとアフターの差です。アセスメントを振り返りの材料にして、クオリティを上げてもらうことがポイントです。

 同時に、マネジャーの定義も変えました。

 プレイング・マネジャーとして自分が活躍するのではなく、「部下が活躍する舞台をつくるのが上司の仕事」であり、それができない社員は管理職からは外れてもらうというメッセージを示したのです。

 部下のマネジメントが向かない人は、無理に管理職にならず、プレイヤーとして十分に才能を発揮する仕事ができればよい、と私たちは考えています。

 そのため、ヤフーにとって1on1をうまくできないということは、管理職も不向きであるかもしれないということも繰り返し伝えました。

 もちろん、マネジャーすべてが、このような考え方と施策を快く思ったわけではないでしょう。第1回で述べたように、「1on1に時間をとられてほかの業務ができない」とか、「1on1に意味を感じない」などと何度も言われたものです。

 それでも、マネジャーは部下の育成をすることが最も大事な仕事であり、その核になるのが1on1である、と繰り返しメッセージを伝えることで、マネジャーたちも考え方を変えざるを得なくなっていきました。

 同時に、1on1チェックによって自分の取り組み姿勢と内実を客観視することも、行動の変容につながりました。

マネジャーをバックアップする
さまざまな仕掛け

「1on1はやらざるをない」

 そういう空気をつくった後は、1on1を継続させ、技術を高めるためのバックアップのさまざまな仕掛けをスタートさせました。

 まず、主に応答技法を学ぶための研修を実施しました。応答技法は「技術」なので、正しく学べば誰でもできるようになります。

 5人一組で行うシャドーコーチングというものも始めました。これは5人一組で行うもので、一人が上司役、もう一人が部下役を務め、上司と部下それぞれの後ろにシャドーがつきます。シャドーは上司役、部下役それぞれの話し方、聞き方を観察する役割です。残りの一人は、上記4人を俯瞰した位置から、どんな発言のやり取りが行われるか、特に言葉に注視して観察するオブザーバーを務めます。

 コーチングの終了後、上司役と部下役は、それぞれのシャドーとオブザーバーからフィードバックを受け、次回以降に活かします。

 さらに、社内コーチの養成も同時に行いました。社内コーチは、いわば1on1のエバンジェリスト(伝道師)あり、1on1のやり方に迷った人にとっての相談役です。

 また、人事部門の同志でもあります。人事がどれだけ1on1が重要だと言っても、限界があります。社内コーチは、人事の意図と現場の感覚がわかるので、現場に適した方法で、1on1の浸透を図ってくれるのです。

 社内コーチ候補生は、前述したコーチング研修を受けるほか、全員が社外のプロフェッショナルについて、より専門的にコーチングを学びます。また、毎週、2人一組でのピアコーチングを行い、対話のクオリティを高めます。このようなやり方で養成され、認定された社内コーチは、現在100人近くにまでなっています。

 このような、さまざまなバックアップ施策も奏功したのでしょう。1on1のスタートから5年経ち、社内調査では社員の9割が、少なくとも隔週で1回以上の1on1を実施しています。

(ヤフー上級執行役員 本間浩輔)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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