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私たちが「整形手術」をためらわない理由

2017年04月28日 06時00分更新

文● 有山千春(ダイヤモンド・オンライン

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※写真はイメージです

一昔前に比べ、美容整形手術によって顔や体を“改造”する若者たちが増えている。最近は女性だけでなく、男性でも抵抗感を持つ人が少なくなっているようだ。その一方で、「親からもらった体を変えるなんて」という意見も相変わらず根強い。美容整形をためらわず、積極的に手術を受ける人々はどんな考えを持っているのだろうか。取材してみた。(フリーライター 有山千春)

厚ぼったい一重まぶたが
コンプレックスだった

「私が“やった”約10年前とは、考えられないくらいカジュアルになりましたよね。世間の見方も、お値段も。あのときは、“たかが”二重まぶた整形で、一大決心が必要でしたもん」

 そう振り返る優花さん(30歳・仮名)は、高校を卒業して数年後、「親の同意なく手術できるようになった瞬間に」、某美容外科に駆け込み、埋没法(※まぶたの皮膚に糸を通し、二重をデザインする手術法)の美容整形手術を受け、念願の二重まぶたを手に入れた。

「厚ぼったい一重まぶたがコンプレックスで、高校3年間ずっとアイプチをしていたので、後半はもう、まぶたは赤く腫れ上がり、痛々しいものでした。見かねた親が、『自分のお金なら、整形してもいいよ』と理解を示してくれたんです」

 当時の手術代の相場は、片目で5万円、数年単位の保証がついていた。地元の派手な同級生たちは「羨ましい」と羨望の目を向けたが、それ以上に陰口も多かった。

「そんなに高かったの? 今は片目1万5000円くらいでできるんじゃなかった?」

 そう驚くのは、優花さんの同僚である美咲さん(30歳・仮名)。「私は昨日、鼻にプロテーゼ入れてきたよ。どう?」と、優花さんに事もなげに報告する。

「モデルさんと接する機会が多い職業なので、彼女たちのスッと綺麗に通った鼻筋に憧れていたんです。40万円くらいしましたが、綺麗な鼻に仕上がったので満足しています。これまでも、涙袋にヒアルロン酸注射をしていましたし、整形に対するハードルは低いですね」

アパレル店員は
職業柄、整形に違和感を持たない!?

 2人は、人気アパレル店の販売員。職業柄、人に見られる機会が多く、美意識が高いためか、整形により理想の“美”を手に入れることに違和感を持たないようだ。

「確かにアパレル会社は、普通の会社よりも整形している子、多いかも。この前、2つ隣の店の若い子が、『昨日、目頭切開やってきたんすよー』なんて話しているのを聞きましたしね」(優花さん)

 一方、「絶対にやっているのに、頑なに教えてくれない子もいる」(美咲さん)という。

「入社2年目の若い子なんですけど、明らかに、休み明けにガッツリ目頭切開してきたことがあったんです。私が『いいじゃん、バランスよくやってもらったね』と言うと、何もしていませんが何か?という態度でした。ああ、きっと周りのネガティブな目が気になる子なんだな、と思いましたね。私たちは、自分が綺麗になれればそれでいいので周りの目は気になりませんが、その子と仲の良い子は地味な子が多くて。地味な子って、妬みや僻みなのか、整形にネガティブなことを口に出してきがちなんです」(美咲さん)

「わかるー」「ねー」と、同志で盛り上がる彼女たちは、「コンプレックスで、毎朝鏡を見るたびにストレスを抱えるよりも、整形したほうが手っ取り早い」(優花さん)という、合理主義者なのだ。

鼻を高く見せる“鼻プチ”
数日後に口から出てきた

 2人以上に“人に見られる”ことを生業としているコスプレイヤーのめぐみさん(26歳・仮名)は、くっきりとした二重にシャープな小鼻の持ち主だが、それらは「コスプレ用のメイクの賜物です」ときっぱり言う。その通り、カラーコンタクト、アイテープ、つけまつげ、ダブルライン、涙袋シャドウ……などのアイメイクを落とすと素朴な一重の目が現れ、鼻の穴からなにやらプラスチック片を取り出すと、可愛らしい小さな鼻になった。

「びっくりしました? これ、“鼻プチ”っていう、鼻を高く見せるアイテムなんです。コスプレイヤーで整形している子は、意外と少ないですね。女装(※女性キャラのコスプレ)をする子にちょっといるくらい。私たちのような男装(※男性キャラのコスプレ)レイヤーは、基本的にはやりません。整形すると丸くて可愛らしい目にしかならなくなっちゃって、男装が似合わなくなるし、何よりキャラに合わせて、そのつど目の形を変えられなくなるじゃないですか」

 めぐみさんは、毎回、コスプレ前に2時間以上はメイクに費やし、「鼻プチが行方不明になったと思ったら、数日後に口から出てきたことがあった」と笑うが、それでも整形しようとは思わないという。

キャラになりきるコスプレイヤー
整形はいまだに「タブー」

「以前、コスプレ雑誌に某美容整形外科の広告が載っていたことがありました。『コスプレイヤーにおすすめのプチ整形!』といった感じで。いやいや、誌面で散々、工夫をこらしたコスプレメイクを掲載していたのに、結局元の顔から変えろってか! と矛盾を感じてしまいました」

 そう感じたのはめぐみさんだけはなく、周囲の仲間たちも同様で、雑誌に批判が集まったほどだった。

「衣装もメイクも、一から作り上げた末にキャラに似せる、というのが、コスプレをやる意義というか。私たちがほしいのは、“可愛い”や“綺麗”じゃないんですよ。“キャラになりきる”ことが目的なんです」

 そうした考え方がオーソドックな、めぐみさん周辺のコスプレイヤーの間では、整形の話題はいまだに「タブー」だという。

 ならば、アイドルはどうだろう。

女性器を整形した
地下アイドル

「やる子はやるし、やらない子はやらないですね。ってうか、どこから整形ですか? ヒアルロン酸注射?歯列矯正?レーザーでシミ取り?そのレベルなら、ほとんどの子がやっていると思います」

 と教えてくれる、地下アイドルの奈帆さん(23歳・仮名)は最近、驚きの整形手術を受けた。

「女性器にヒアルロン酸を打ちました。Gスポットを膨らませて、女性器の入り口にもでこぼこするように打って。性欲に忠実な友人がいて、彼女が快楽の限界に挑戦している話を聞いて、私も触発されたんです。完全に好奇心ですね。セックス時に気持ちよくなるとか、男性の体を離さないといった触れ込みでした」

「ヒアルロン酸だから、数年後には皮膚に馴染んでしまう」ことから、大掛かりな手術を受けるといった印象はなく、気負わず女性器を進化させたのだ。

「麻酔を塗るから痛くないし、入念なカウンセリングを受けるから不安もありません。ただ、200万円くらいかかったので、元が取れるように彼氏を作らなきゃいけないのが大変なんですがね。あはは」

 女性が性を謳歌することを、誰も咎める理由などない。

ジェンダーレスな存在を目指す
男性モデル

 男性も負けてはいない。ぷっくりとした涙袋と、適度な二重まぶたの、ぱっちりとした目。綺麗な鼻筋。柔らかそうなアヒル口――。SNSのタイムラインに、女性アイドル顔負けの自撮り写真をアップすると、女性ファンからの「可愛い!」「その顔、好き!」「なんでそんなにきれいなの?」といったコメントがつくのは、モデル活動をはじめて1年のわたるんさん(28歳)だ。

「周りにモデルをやっている子がいて、僕も、見た目が若く見えるし、イケるかなと思って事務所に入りました。普段は、パックをして肌の若さを保つ努力をしたり、女友達に勧められたファンデーションや鼻筋シェードなどを使っています。自撮りは、アプリを使って盛っています」

 ジェンダーレスな存在を目指しているそうで、「可愛い系を狙ってやっているから、『可愛い』と言われることが一番嬉しい」と、わたるんさんは話す。

「元々、周りから『可愛い』と言われることが多かったので、そこを突き詰めようと思った結果です。よく、『涙袋にヒアルロン酸を打っているんじゃないの?』と整形疑惑を持たれることがありますが、整形は未経験。でも、興味はありますよ。もっとくっきりとした二重にしたい、とか、顔のほくろをとりたい、とか。コンプレックスがあるから。それに、盛れるアプリで簡単に理想型が作れてしまうので、『僕の顔のココをこうしたら、もっと可愛くなれるのか』とか、イメージが湧きやすいんです」

 だが、整形に至らない理由は、「そこまでお金をかけようと思わない」から。

「僕がやりたい目の整形は20万円くらいかかります。そこまで金をかける価値を見出す人もいますが、僕はまだいいかな、と思いますね」

「指名を増やしたかった」という元ホスト
入店祝い金代わりに整形手術が無料だった

 一方、元ホストの理人さん(27歳・仮名)は「小顔効果があるボトックス注射と、埋没法で二重にしています」と、爽やかに明かす。その理由は、前述の優鼻さん同様、「アイプチが面倒くさくて、かぶれるから」ということと、単純に「指名を増やしたかった」からだという。

「入店直後、“祝い金”代わりに整形手術数ヵ所を無料でできる、というシステムがあったんです。ただなら誰でもやるのでは?僕は治したい箇所や、理想の顔がはっきりしていたので、整形はこの1度だけですが、繰り返している友人もいます」

 元モデルで現在はニートの友人は、「ヒモをしていて、女性に金を出させて」整形したといい、二重、涙袋、ボトックス、鼻プロテ……と日々増えていった。

「元からブサイクではなかったし、女性にモテていたんですけどね。流行りに合わせて、どんどん顔を変えている印象です。で、そのつどメンテナンスもしなきゃいけないので、また治して……と、繰り返して、数ヵ月単位で何十万も費やしているんじゃないですか? 本人は絶対に言いませんけど」

 言わずとも不自然に目立った鼻を見れば一目瞭然、「イジったよね?」と聞いても、「事故ってちょっと治しただけ」と明言を避ける。

整形は化粧と同じ
動機は男女で異なる!?

「俺は顎の形がコンプレックスで、キャバ嬢の友達に相談したら、『顎はやめたほうがいいよ。安くて200万円以上するし、腕の良くないところにいくと、顎関節症になるから』と教えてくれたので止めました。でも、整形を繰り返す友人は、“流行っている”となんでもやっちゃうタイプなんですよ。それでバランスの悪い顔になっても、それでも『カッコイイ!』『イケメン!』と言う女性は多いので、止められなんじゃないですか?」

 そんな中、整形人口が周囲に多い理人さんは、整形の動機で男女差があることに気づいた。

「最近は王子系男子、ジェンダーレス男子がモテるからと、世間に合わせて美を追究する男性が多い一方、女性は一貫して“自分のため”という感じがします。コンプレックスの解消や、アンチエイジングのために、整形しているのではないでしょうか」

 さらに、「SNSで盛れるから、リアルで会ったときとのギャップを埋めたい」という、現代ならではの動機も増えているという。

「整形は、化粧と同じ。やってよかったという声が圧倒的に多い」と言う理人さん。彼らにとって、“親からもらった体を変えるなんて”という苦言は、もはや死語に近いのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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