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ミニストップのソフトクリームを「なめてはいけない」理由

2017年04月27日 06時00分更新

文● 吉岡秀子(ダイヤモンド・オンライン

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入社2年目のストアオペレーション部の山本早織さん。「実技試験は緊張してしまった」が合格。胸ポケットにバッジが Photo by Hideko Yoshioka

コンビニのコーヒーマシンの前にアイスコーヒーを求める行列ができる陽気になってきた。そんな他社の動きにもわれ関せず、ミニストップにはソフトクリームづくりに情熱を傾ける「ソフトクリームマイスター」なる達人が、のべ約3万2000人(2017年度)もいる。「ソフトクリームマイスター」とは、どんな制度なのか。その目的は何か。現場を見に行ってみた。(コンビニジャーナリスト 吉岡秀子)

「ソフトクリームのプロ」を認定する
「マイスター制度」

ソフトクリームバニラ。くるくると高く巻いていないように見えるのは、コーンの口が花のように開き、底がとがらず平らで、コーンの中にクリームが沈んでいるため(見えない)。このフラワーコーンはミニストップオリジナル Photo:MINISTOP

 平日の午後3時。千葉市内のミニストップを訪れた。

 昼のピークを過ぎ、イートインコーナーには休憩中らしきビジネスマンがアイスコーヒーを片手に、思い思いの時間を過ごしている。まったりとした店内の雰囲気に、一瞬ここがコンビニであることを忘れそうだ。

 事前に同社の広報担当者から仕入れた情報によると、ミニストップが加盟店の従業員や社員に「ソフトクリームのプロ」を認定する「ソフトクリームマイスター制度」を導入したのは2003年。

 ミニストップ社員は全員、受験を義務づけられているそうで、厨房にいた入社2年目という女性の制服の胸にもマイスターの証であるバッジが輝いていた。

 そもそもミニストップがここまでソフトクリームにこだわるのはなぜなのか。

食品衛生上さまざまな規制
独自路線を突っ走ることができた

創業時のソフトクリームは、通常の高さのある「くるくる巻き」だった Photo:MINISTOP

 歴史を紐解くとソフトクリームの販売を始めたのは1980年、1号店のオープンと同時だ。コンビニ創業としては後発組だったため、他社と差別化するために当初から厨房やイートインコーナーを設け、ファストフードに注力したというのは有名な話である。その「買ってすぐ食べる戦略」の一環として、70年の大阪万博でブームを起こしたソフトクリームにも目をつけたという。

 思えばこの「最初から店内に厨房を作ったこと」が奏功した。

 ソフトクリームの製造は食品衛生上さまざまな規制があり、同業他社が後から参入しようにも難しい。そのため、オリジナルのバニラソフトの開発(91年)、オリジナルのフラワーコーンの開発(92年)、ソフトクリームを使った派生商品・ハロハロ発売(95年)等と、ミニストップは独自路線を突っ走ることができた。

 ちなみにソフトクリームバニラは現在5代目。バニラ以外のフレーバーも、1作目の「いちごソフト」を出した98年から2016年までに「キャラメルソフト」「アセロラソフト」「ベルギーチョコソフト」など、実に84作を出している。

どの店でも同じ品質で提供
試験は4月に実施

オリジナルのフリーザー。クリームが巻かれながら出てくるため、人の手はあまり動かさなくてもいい工夫がしてある Photo by H.Y

 さて本題に移ろう。

「ソフトクリームがミニストップの顔になり、お客様の期待が高まるほど『どの店でも同じ品質』を提供できなくてはならなくなった。そこでマイスター制度を創ったのです」(ミニストップ)

 筆者も今回初めてオリジナルのフリーザーなるソフトクリームを作る機械の前に立たせてもらったが、「失敗してはダメ」というプレッシャーがハンパない。

「機械の下のペダルを踏めばソフトクリームが出てくるから操作は簡単」と説明を受けたが、思い切って踏めない。怖い――なるほど、パートやアルバイトも最初はみんな、こうなんだろう。だからソフトクリームづくりの知識を得て、日々実践を重ねる必要がある。ソフトクリームマイスター制度は、そのモチベーションアップためのものなのだ。

マイスターの認定書。マイスターのいる店は店内に掲示している Photo:MINISTOP

 実際にマイスターになるには、年に一度、ソフトクリームの需要が高まる4月に実施される試験を受け、合格しなければならないのだ。

 試験は、(1)筆記試験、(2)実技試験の2段階。これで「技術」(規定どおりのソフトクリームを作ることができる)、「知識」(機械の仕組みを知り、適切に調整できる)、「リーダーシップ」(従業員同士で注意・指導ができる)の技量を測り、合格点に達した者を「ソフトクリームマイスター」に認定するという。

 ソフトクリームづくりに、なぜリーダーシップが求められるのか首をかしげたが、店の雰囲気が売り上げを左右するコンビニならではの基準なのだろう。

毎年30問ほど出て
9割正解しないとアウト

マイスターのバッジ。2013年から「金色」になった。それまでは「銀」 Photo:MINISTOP

 受験者の声を聞くと、「実技は緊張しなければなんとかなるが、意外に筆記が難しい」という。だいたい毎年30問ほど出て正解率が9割以上ないとアウトだいうからかなり厳しい。

 試しに“過去問題”を3つだけ挙げてみよう。

■次の図式の(   )を埋めよ。

 ※答えは記事の最後にあります。

 Q1.ソフトミックス(原料)+(   )=ソフトクリーム

 A:水 B:生クリーム C:空気

 Q2.ミニストップでは、(   )のソフトクリームの売上の1パーセントを使い、花の環運動を応援している。

 A:平日 B:土曜日 C:日曜日

 知らず知らずのうちに、ミニストップの施策まで把握できる。極めつけは、必ず出るという次の問題だ。

 Q3.ソフトクリームはスリーブ(コーンの袋部分)を持ち(   )で提供する。

 A:笑顔 B:右手 C:片手

 Q3については、ヒントを言えば、なんと、筆記試験を解くだけで接客マナーが身につく仕掛けになっている。何より驚いたのは、一度マイスターの称号をもらっても「忘れちゃいけないから」と毎年更新する熱心な人が多いということだ。

そして、謎は残った…
ソフトクリームが「くるくる巻き」でない理由

「ハロハロ」というかき氷デザート。実はソフトクリームバニラを有効活用するためにできた Photo:MINISTOP

 白状すると、「ミニストップのソフトクリームって、なぜ『くるくる巻き』じゃないんだろ?」という素朴な疑問が取材の動機だった。カタチの謎については「企業秘密」と回答は得られなかったが、いやもう十分。

 あの手この手で“店の顔”のクオリティーをキープしようとする姿に、「ソフトクリームをなめるなよ」と言われた気分だ。

 ちなみに、下記が先ほどの問題の正解である。あなたはすべて正解できましたか。

【正解】

 Q1:Cの「空気」、Q2:Bの「土曜日」、Q3:Aの「笑顔」


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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