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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第163回

超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった

2017年04月22日 12時00分更新

文● 四本淑三

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CLEANは真空管アンプの再発明

 現場では「すごくいい」しか連呼していなかったので付け加えると。

 李さんのおっしゃるとおり、ボリュームが12時を回るあたりから徐々にパワーアンプの歪み感が増してきて、右に回しきると完全なドライブサウンドになる。実質的にはボリューム12時以降はゲインコントロールと考えてもいい。

 その歪み方が絶妙で、ローの切れた、シャープでアタックの強い音でありながら、同時に太さも失っていない。わかりやすく言うと、ギターがストラトならスティービー・レイ・ボーン、テレキャスターだったらミック・グリーンのような、太くて荒々しいあの感じ。こうなると、もっとゲインを突っ込んだらどうなるのか、試してみたくなる。

 実はそんなこともあろうかと、取材には私物のブースターを持参していた。接続したのはt.c. electronicのSPARK BOOSTERというペダル(VOXじゃなくてごめんなさい!)。クリーンブースターとして使うと26dBまでゲインを突っ込める。

CLEANのバックパネル。ACとROCKではインピーダンススイッチだったところが、音量を1/10、1/100に規制するアッテネータースイッチに変更されている

 MV50のボリュームが右側に回っている状態でブースターのゲインを上げてゆくと、それに比例してきれいに歪みの量も増え続ける。強く弾いてアタックが潰れるような頭打ち感もない。それでいてボリュームを下げれば、キーボードアンプにすら使えそうなクリーントーンが得られるのだ。

 21世紀に再発明された真空管を使い、21世紀的解釈で再発明されたギターアンプであるMV50の中でも、キャラクターの新鮮さではCLEANが一番かもしれない。

 ただ、ボリュームをフルアップにするとヘッドフォンアウトも最大音量になるし、スピーカーへの出力をアッテネーターで最小に落としても結構音は大きい。だから真夜中に歪ませて小音量で弾きたい場合は困る。でも、それ以外の場面ではすごくいい。すごくいいぞ……。

パワーアンプの動作をNutubeで再現

―― これはすごくいいですね。万能なんじゃないですか。

江戸 そうなんですよ、実は。クリーンもいいし、ちょい歪みくらいでもいい。きれいにつながってますよね。それにペダルにばっちりだよねって、結構話題になっています。ブースターを使う人にはCLEANが合っているかもしれないですね。

―― 変な言い方ですが、これが一番真空管っぽい気がします。ボリュームを上げないと歪まないところまで含めて。

 それで音量が大きすぎる場合のために、アッテネーターで落とせるようになっているんですね。

―― 一体、中身はどうなっているんですか?

 ACとRockは、Nutubeをプリアンプとして使用していて、ボリュームノブが単純なマスターボリュームとして機能します。CLEANもNutubeをプリアンプに使用していますが、回路的なステージとしては、完全にパワー管の歪みのようなパワーアンプの動作の再現を目的としています。この回路への送り量を、ボリュームが決めています。

―― それで実際のパワーアンプはクラスDでも、ボリュームを上げるとフルチューブアンプのように鳴り始めると。

 歪ませない場合には正確な波形が出る一方、強く弾くとナチュラルなコンプレッションがかかって、あまり歪みを感じないようにもなっています。最終的なサウンド、実用性など、すべてに関して細かく企画と打ち合わせ、それぞれの機種が最適な仕様となるように持って行った結果です。

―― まいりましたね。僕はACにしようと思っていたんですが、CLEANも買ったほうがいいのかな、やっぱり。

江戸・李 (笑)

(次回最終回は、MV50で初投入された注目の新型真空管Nutubeについて)

■関連サイト



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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