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オネエ大活躍のテレビ番組はLGBT理解に寄与するか

2017年04月14日 06時00分更新

文● ダイヤモンド・オンライン編集部(ダイヤモンド・オンライン

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“テレビ”ほど、あらゆる種類の登場人物(出演者)にあふれたメディアはない。

 まさに、多様性(ダイバーシティ)の集合体――それがテレビ番組の存在価値であり、コンテンツの魅力かもしれない。しかし一方で、「テレビの力が弱くなった」とも言われ続けている。

 いまさら語るまでもないが、その要因のひとつは、ネット系メディアがもたらした日本人のライフスタイルの変化だ。携帯電話やパソコンをツールにしたSNS(ブログ・ツイッター・フェイスブック・インスタグラム…)の活用で、消費者はテレビを視聴する“受動的行為”より、自ら何かを発信する、また、「検索」で何かを見つける“能動的行為”を盛んに取るようになった。

 民放キー局は、リモコン(dボタン)を介した双方向の番組を制作したり、公式テレビポータルサイト(TVer)を展開するなど、どうにかして、生活者をテレビのコンテンツに向き合わせようとしている。そうした状況を、かつて、ビジネス誌である「週刊ダイヤモンド」は、「新聞・テレビ断末魔」と銘打ち、特集したが、それでもやはり、テレビの力はいまだに強い。

 たとえば、連続ドラマの視聴率や番組内のタレントの言動はネットユーザーにつぶさに拾われ、ネット掲示板やSNS、ネットニュースで四六時中ネタにされている。

 コンテンツの強弱は、メディア自体の強弱とは必ずしもイコールの関係にはないのだ。

バラエティ番組は、なぜ、
オネエ系タレントに寛容か?

テレビにはあらゆる人が出演している 写真:地球の歩き方T&E

 テレビ番組の“出演者”という観点で見れば、「オネエ」と称されるタレントが高いバリューを持ち、いまや、テレビ以外のメディアでも確たるポジションを得ていることは周知のとおり。

 マツコ・デラックスさん、ミッツ・マングローブさん、IKKOさん、はるな愛さん……いまや世代を問わずに知られた顔と名前だ。

「もともと、テレビというものは、異質な人――つまり、一般人が日常生活であまり見かけなかったり、出会うことのない人たちがたくさん登場するメディア。だから、オネエ系タレントがテレビ番組に出るのは自然な流れ。制作サイドからすれば“正攻法”のキャスティングなのです」

 エンタテインメント・ジャーナリストの麻生香太郎氏は、そう解説する。

“異質な人”と言えば、“オネエ系”だけではなく、テレビは、見た目に特徴のあるお笑いタレントやビジュアル系アーチストも普通に映し出していく。顔を白塗りにしていたり、突飛な衣装を着ていたり……街中ではそうそう見かけない人たちだ。オネエ系タレントは、あくまでも、そうしたテレビ出演者の“多様性”の一部であり、近年、そのボリューム(番組露出)が増しただけと言っていい。

「特に、オネエキャラとして番組に出ている人は、得てして、頭の回転が良く、独自の鋭い視点を持っているタレントが多い。それが、視聴者に支持され、番組制作者にもてはやされる理由でもある」(麻生氏)

 独特な価値観があり、芸術的センスも高いので、オネエ系タレントは芸能界には欠かせない存在だと麻生氏は断言する一方で、次のような苦言も呈する。

「オネエ系タレントに限らず、テレビ局のプロデューサーやディレクターはもっといろいろな人材を発掘すべきでしょう。若手のお笑い芸人の中には、テレビに出て然るべき人もたくさんいます。いまのバラエティ番組は、一言で言えば、テレビマンの能力低下の表れ」(麻生氏)

LGBTへの正しい理解が
“寛容”のスタートライン

「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)」の視点からテレビの世界を俯瞰すると、SNS社会ならではの問題も内在しているのが分かる。

 ある芸能関係者は「タレントの立ち居振る舞いや見た目について、視聴者の目がかなり厳しくなっている」と告白する。SNSでの拡散や掲示板での書きこみで、タレントが矢面に立たされやすい環境になっているのだ。出演者の社会への影響が大きい分、テレビ視聴者における「多様性の受容」は、むしろ以前よりも低くなっていると言えるだろう。

 そんな環境下で、オネエ系タレントたちは大きなハレーション(放送事故など)を生むことなく、世間に受け入れられている。結果、一般社会における「セクシュアル・マイノリティ」の存在を身近にしているように思えるが、実は、セクシュアル・マイノリティのステレオタイプを増長させたり、イロモノ的な印象を高めてしまう危険性もある。

 例えば、「オネエ系タレントとして、女装してテレビ出演するXさん」。実際にはXさんの性自認や性的指向は本人にしか分からないものであり、仮に、自らの性自認と性的指向をXさんが公言しても、それはあくまでも、“テレビ視聴者向け”の可能性もあるのだ。

「オネエ系タレントのXさんはゲイだ。世の中のゲイの人はみんながあんなカンジだ!」

 こうした短絡的な思い込みは、LGBTという言葉(呼称)が一般的になりつつある現在(いま)、当該タレントと視聴者の双方を不幸にしていくだろう。

 バラエティ番組は、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)とおぼしきオネエ系タレントの出演には寛容だが、それが、視聴者に直結しているとは考えづらい。LGBTを含むセクシュアル・マイノリティの人たちへの正しい知識と理解のうえ、テレビ番組の制作者も視聴者も“多様性に寛容であること(ダイバーシティ&インクルージョン)”を心がけるべきだと思う。

(「オリイジン」編集長 福島宏之)

※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン(Oriijin)」の掲載記事を加筆修正したものです。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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