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東芝の上場廃止を最終判断する東証の審査ポイントとは

2017年04月12日 14時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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4月11日に記者会見した東芝の綱川智社長 Photo by Reiji Murai

「5月になっても監査法人の承認が得られない可能性はある」

 東芝の綱川智社長は4月11日の記者会見で、2017年3月期の通期決算も監査法人の適正意見が得られないことがあり得ると認めた。

 東芝は同日、2度の延期を経て、2016年4~12月期の決算報告を発表。だが、監査法人の適正意見が得られていない「意見不表明」のままでの公表だ。

 東芝が昨年12月27日の公表で、米原子力事業会社ウエスチングハウス(WH)の巨額損失の可能性を表面化させたことに監査法人のPwCあらたは「12月より以前から損失の可能性を認識していたのではないか」との疑いを強めてきた。

 翌12月28日にPwCは、それより前から損失を認識していた可能について調査を進めるよう要請していたことも11日の東芝の発表で明らかになった。WHの社長・会長を長く務めてきたダニー・ロデリック氏(3月27日付で辞任)ら経営陣が、損失額を少なくするよう内部スタッフに「圧力」をかけたという内部通報も、PwCの疑いを強めた。

 2016年6月から新日本監査法人から交代したPwCあらたは、調査範囲を広げてきたが、これに対して東芝の綱川社長は11日の記者会見で「色々なチェックをしても何も出てこなかった」と「無実」を強調する。東芝側で調査を担当した佐藤良二・監査委員会委員長も「監査法人の度重なる示唆や指摘に対しては真摯に回答した。一連の調査はすべて完了し、連結決算の数値に影響を及ぼす事象はなかった」と説明している。

 ある東芝の経営陣の1人は「監査法人は自分のリスクを過度に恐れているだけだ」と恨み節を漏らしてきたが、浮き彫りになったのは監査法人の東芝に対する不信感で、5月中旬に迎える17年3月期の年度決算までに、PwCの了承を得られる見通しは立っておらず、事態は深刻化の一途を辿っている。

適正意見のない決算発表が
即上場廃止にはつながらないが…

上場維持に赤信号 Photo by R.M.

 過去に東京証券取引所の上場企業で、適正意見が得られなかったのは、民事再生法の適用を申請したスカイマークとシコーのほか、不正会計が発覚したメディビックグループとフード・プラネットなどにとどまっており、大手企業としては異例だ。スカイマークとシコーは経営破たん、メディビックは売上高が1億円未満に急減して上場廃止となった。フード・プラネットは純資産が10億円を割り込んで昨年9月から上場廃止の「猶予期間」に入っており、5月末までに回復しなければ上場廃止となる。いずれも、決算に監査法人の適正意見がなかったことが直接の理由ではなく、その他の理由で東証の上場廃止基準に抵触した。

 東芝も、適正意見のない決算発表が直接的に上場廃止につながるわけではないが、15年9月から有価証券の虚偽記載で特設注意市場銘柄に指定されており、3月15日から監理銘柄指定となったことで、すでに上場維持か廃止の二者択一しかなく、東証の東芝株の審査も緊張感が高まっている。

 東証関係者によると、東芝株の審査のポイントは、(1)15年の不正会計問題で不備が見つかった内部管理体制、(2)福岡市の子会社で注文書偽装が発覚したことに伴う子会社管理、(3)WHの巨額損失計上に伴う海外子会社管理──など広範囲にわたるが、これに加えて「決算で監査法人の適正意見が得られなかったことも対象になる」としており、上場廃止の危機は一段と高まる。

 ある東証幹部は「巨大な会社で多様な問題を抱えているので難しい判断になるのは間違いない。だが、東芝の企業規模が大きいからとか国策の原子力を抱えているからという理由で、われわれの判断が鈍ることはない。上場企業としてふさわしい資質を持っているか否かで判断する」と断言する。

 東証の審査期限は設定されていないため長期化しそうだが、東芝の17年3月期決算報告を見極めて、審査は佳境を迎える見通しだ。虚偽記載に加え、監査意見のない決算を発表した企業に上場企業としての資質はあるのか。東証の判断が一段と注目されるのは間違いない。

(週刊ダイヤモンド委嘱記者 村井令二)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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