マーケティング強化、端末側ではAI、VR
Huaweiは世界スマートフォン市場でNo.3の地位を揺るぎないもものにし、いよいよ2位に向けて歩みを進めることになる。スマートフォン事業を率いるRichard Yu氏は、「今後1~2年でAppleを超える」と宣言してはばからない。言葉通りになれば、早ければ今年ということになる。
もっとも台数でAppleを超えることができても、Appleは最後の敵。射程距離にはSamsungがあるはずだ。Samsungは自社と同じAndroidベンダーであり、ソフトウェアとハードウェアすべてを手がけるAppleに対してSamsungの方がHuaweiと立ち位置が類似している。実際、ゆくゆくはSamsungはHuaweiに越されるという見方をするアナリストもいる。CNBCはDrexel Hamiltonのアナリスト、Brian White氏の「将来的に中国勢がSamsungを倒すだろう。そして、それはおそらくはHuaweiになる」との見解をレポートしている。
だがスマートフォン市場そのものが転機を迎えているだけに、”イケイケ”でやってきたHuaweiもこのまま順調に端末事業を拡大できるのかはわからない。
Huaweiは3月31日、2016年通年の監査後業績を発表した(Huaweiは非公開企業なので、業績を公開する義務はない)。それによると、2016年度の同社の全体の売上は前年比32%増の5216億人民元(約8兆7316億円)、だが371億人民元に到達した純利益の伸びは、前年比でわずか0.4%増に止まっている。
同社はコンシューマー向けの端末事業のほかにネットワーク、法人(ICTソリューション)の3つの事業の柱を持ち、最も大きいのはネットワーク事業で、全体の55%を占めている。
端末事業は前年から43.6%増加し、1798億800万人民元(約4兆円)に。出荷台数は前年同期比29%増の1億3900万台到達を発表している。なお、この業績発表前の2月末、コンシューマー事業の利益が社内で設定していた目標に達しなかったと、Reutersが報じている。
純利益が伸びなかった一因が、マーケティングだろう。Androidスマートフォンはスペック、デザインともに大きな差別化を測ることが難しく、マーケティングにどれだけ投資できるかが成否を分ける。Samsungに並んで、世界中の主要空港などで展開しており、2016年、HUAWEI P9で初めてグローバルでのマーケティングキャンペーンを実施した。欧州のオペレーター39社と組んだジョイントマーケティングも展開した。
しかし、スマートフォン市場そのものの成長が鈍化する中、マーケティングだけでは長期的な成長は図れない。Samsungの背中を見てきたHuaweiは、そのことを熟知しているはずだ。端末部門トップのYu氏は以前、Financial Timesの取材に対し、デザイン、それにAIやVRといった新しい技術の取り込みを考えていると語っている。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
この連載の記事
-
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? -
第331回
スマホ
2023年は世界で5Gが主役になった年 世界の5G契約数は16億に -
第330回
スマホ
iMessageが使えるAndroidアプリが作られ、すぐ遮断 そしてRCS対応 吹き出しの色を巡る攻防 -
第329回
スマホ
10月の世界でのスマホ市場は前年同月比5%増 なんと27ヵ月ぶりで暗黒時代を脱出したかもしれない -
第328回
スマホ
一時はウェアラブルの代名詞だった「Fitbit」が一部の国で販売停止 Pixelにブランド統一か - この連載の一覧へ