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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第173回

Samsungに詰め寄るHuawei、中国では特許訴訟に勝利

2017年04月13日 10時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII編集部

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マーケティング強化、端末側ではAI、VR

 Huaweiは世界スマートフォン市場でNo.3の地位を揺るぎないもものにし、いよいよ2位に向けて歩みを進めることになる。スマートフォン事業を率いるRichard Yu氏は、「今後1~2年でAppleを超える」と宣言してはばからない。言葉通りになれば、早ければ今年ということになる。

 もっとも台数でAppleを超えることができても、Appleは最後の敵。射程距離にはSamsungがあるはずだ。Samsungは自社と同じAndroidベンダーであり、ソフトウェアとハードウェアすべてを手がけるAppleに対してSamsungの方がHuaweiと立ち位置が類似している。実際、ゆくゆくはSamsungはHuaweiに越されるという見方をするアナリストもいる。CNBCはDrexel Hamiltonのアナリスト、Brian White氏の「将来的に中国勢がSamsungを倒すだろう。そして、それはおそらくはHuaweiになる」との見解をレポートしている。

 だがスマートフォン市場そのものが転機を迎えているだけに、”イケイケ”でやってきたHuaweiもこのまま順調に端末事業を拡大できるのかはわからない。

 Huaweiは3月31日、2016年通年の監査後業績を発表した(Huaweiは非公開企業なので、業績を公開する義務はない)。それによると、2016年度の同社の全体の売上は前年比32%増の5216億人民元(約8兆7316億円)、だが371億人民元に到達した純利益の伸びは、前年比でわずか0.4%増に止まっている。

 同社はコンシューマー向けの端末事業のほかにネットワーク、法人(ICTソリューション)の3つの事業の柱を持ち、最も大きいのはネットワーク事業で、全体の55%を占めている。

 端末事業は前年から43.6%増加し、1798億800万人民元(約4兆円)に。出荷台数は前年同期比29%増の1億3900万台到達を発表している。なお、この業績発表前の2月末、コンシューマー事業の利益が社内で設定していた目標に達しなかったと、Reutersが報じている。

 純利益が伸びなかった一因が、マーケティングだろう。Androidスマートフォンはスペック、デザインともに大きな差別化を測ることが難しく、マーケティングにどれだけ投資できるかが成否を分ける。Samsungに並んで、世界中の主要空港などで展開しており、2016年、HUAWEI P9で初めてグローバルでのマーケティングキャンペーンを実施した。欧州のオペレーター39社と組んだジョイントマーケティングも展開した。

 しかし、スマートフォン市場そのものの成長が鈍化する中、マーケティングだけでは長期的な成長は図れない。Samsungの背中を見てきたHuaweiは、そのことを熟知しているはずだ。端末部門トップのYu氏は以前、Financial Timesの取材に対し、デザイン、それにAIやVRといった新しい技術の取り込みを考えていると語っている。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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