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東芝・片岡氏が語る、アニメの視聴傾向(2016年秋版)

レグザの録画データから「自分の趣味に合う作品」を探す方法がないか考えてみた

2017年04月08日 11時00分更新

文● ASCII

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ファンの視聴傾向を何に利用していくか?

── このデータは何に応用できますか?

片岡 各グループのファン層の掛け合わせで、同じ方向性を持った作品の「AND」を取っていくと、コアな作品の方向性が分かり、作品の傾向がグループ化できます。これを元にどんな客層かが捉えらえると思います。これを見てBDやDVDの販売数はこのぐらいと言えるわけではないですが、ネット配信などには応用しやすいかもしれません。

 作品の話題性を評価する際に、よくTwitterのつぶやき数が示されますが、作品として盛り上って話題になっても、実際のパッケージは売れるかもしれないし、売れないかもしれない。また作品を観ている人が多いかどうかは、必ずしも話題性とイコールではないんです。

 実際に観ていくと、ファン層は単純なジャンルだけで判断できない。もう少し題材を抽象化して「血なまぐさい」とか「非日常」だとか、要素分解していくと見えてくるものがあるかもしれません。

坪井 作品が持っている裏の特徴もあるかもしれません。平野耕太先生(ドリフターズの作者)とジョジョの奇妙な冒険のファン層は近い。

片岡 また、女性向けだからイケメン……といったあまりにも露骨な作品は視聴者の側も踊らされていると感じてしまうようです。やはり重要なのは物語性や仕掛け、そして作り手のこだわりですね。

 『ユーリ!!! on ICE』はそこがうまかった。美少年がラブラブするというのはあるけど、それに加えて、フィギュアスケートの盛り上がりがあって、実際の演技を丹念にアニメとして描き込む。そこまで手間をかけてやるのかという作り手の情熱やファクターが伝わってくる。

ツイート数と視聴数の相関度は必ずしも高くなかった

中村 『ユーリ!!! on ICE』はSNSの使い方も上手で、妄想を広げやすい仕掛けが所々に盛り込まれていました。例えば、本編のEDにインスタ風の絵を入れたり、予告カットやあらすじのあおり方がうまかったり。これにみんながTwitterでコメントして、作品を引っ張っていった。我々のデータでも、女性向け作品では、妄想を広げる余地があるかが大切だという結果が出ているのですが、それをうまく活用した印象ですね。

視聴ランクとTweetランクの対比

坪井 実は最近、TimeOnのアニメ視聴のランキングと、Twitterでの口コミ数のランキングの比較もやっています。ツイートを集計しているアニメレーダーさんの順位と相関を取ってみました。調べると、視聴数が高くてもツイートされないもの、視聴数は少ないけどツィート数は高い作品、どちらも同水準の3グループぐらいあり、ユーリ!!!はどちらも高い結果が出ています。

片岡 左に視聴数、右にツイート数を置いた場合、右肩に上がるもの、逆に下がるもの、同格なものの三つぐらいは見たほうがいいという考え方ですね。ツイートが突出して跳ねた作品は『魔法少女育成計画』があります。視聴数のランキングでは必ずしも上位ではないがコアなファンが多く、SNSで発言しているというのがうかがえます。

中村 SNSでの反響を観た場合、原作の有無も影響するようです。原作がある作品は、総じて視聴数のランキングと比較してツィートが少なくなります。ストーリーの流れが分かっている人が多いので、次はどうなるのかというコメントという意味で弱い。ちなみに原作ありでも乙女ゲーなどでは、推しメンに対してのツイート数が多くSNSが伸びやすい傾向があるようです。

ファンは応援する手ごたえを感じて、盛り上がりたい

片岡 Twitterはコアなファンが発言する傾向が高いですが、視聴数はその上にどのぐらいカジュアルな層が入ってくるかが反映されているということかもしれません。もうひとつ感じるのは、応援したら何かしら結果が上がるもののほうが、ファンが付きやすいということです。2017年の冬アニメであれば、『けものフレンズ』がそうかもしません。アニメレーダーの調査では、2017年1月~3月期のアニメでは『ガブリール・ドロップアウト』や『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』といった作品がずっと高いツィート数を出していましたが、第7話で『けものフレンズ』が3万ツィートを上回り、以後ずっと上位になっているそうです。

 ファンの間では、面白いと言える作品を見つけてほかの人に伝えたいという気持ちが常にあります。それをみんなで盛り上げていく。そういうネットで作る、参加型の共有体験が、SNSに強い作品となるポイントの一つなのでしょう。

 ちなみに、あるトークショーに参加した際、『けものフレンズ』は、なんかすごそうだから化けるんじゃないか、と思ったという指摘がありました。例えば、かつてのガルパンだったり、まどかマギカのように化ける作品なら、最初から流れに乗っかっておきたい。そういう心理が働くようです。『けものフレンズ』は、ストーリー的には化けませんでしたが、逆にそこが面白いと感じさせる作品でしたね。

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