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「シェアリングビジネス」は実際どれくらい儲かるのか

2016年06月28日 06時00分更新

文● 星野陽平(ダイヤモンド・オンライン

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近年、新たなビジネスモデルとして注目を浴びている「シェアリングエコノミー」。主に欧米を中心として2000年代からブームに火が付き、ソーシャルメディアの成長とともに爆発的に世界へと波及した。“サービスの共有”をテーマとした革新的な経済概念は、いまや日本の市場にも大きな影響を及ぼしている。今回はそんなシェアリングエコノミーの現状を、様々な角度から浮き彫りにしていこう。

いま注目の急成長ビジネスモデル
“シェアリングエコノミー”とは

 Airbnb(エアビーアンドビー)など、一般住宅に旅行者らを有料で泊める、いわゆる「民泊」が話題となっている。しかし、従来型の民宿経営者たちからは睨まれており、旅館業法違反で摘発されるケースも発生するなど問題も多い。そういったリスクを含みつつも政府の規制改革会議は5月19日、営業日数を制限した上で民泊を全面的に解禁する方針を示した。政府の後押しもあって今後、民泊の普及は拡大する見込みだ。

営業日数の制限はあるものの、全面解禁された民泊ビジネス。ほかにもシェアリングビジネスは実際には、どのくらい儲かるものなのだろうか?

 民泊に限らず、カーシェアリングや駐車場シェアリング、会議室シェアリングなど、最近、シェアリングエコノミー業界は話題に事欠かない。

 しかし、そもそもシェアリングエコノミーとはどういったビジネスなのだろうか? シェアリングサービスを展開する企業などが加盟する一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事で、ガイアックス代表執行役社長の上田祐司氏に話を聞いた(以下、「 」は同氏のコメント)。

「シェアリングエコノミー協会では、サービスの供給者と利用者がn対n(個人間取引)のサービスを狭義のシェアリングエコノミーと定義しています。Airbnbや会議室など空間を貸すスペースマーケットなどは、部屋や場所を借りたい人も貸したい人もn対nです。ヤフオク!やメルカリなどのオークションサイトもn対nではありますが、モノの所有権が移転するので『シェア』という意味合いは薄くなります。一方でプラットフォームとなる企業などが多数のユーザーに場所やモノを貸し出すコワーキングスペースのような1対nというビジネスモデルもあり、これもシェアリングエコノミーに準じます」

 プライスウォーターハウスクーパースの調べによれば、2013年に約150億だったシェアリングエコノミーの市場規模は、25年には約3350億ドルに成長する見込みだという。

「シェアリングエコノミーが流行している背景には、ソーシャルメディアとスマートフォンの普及が挙げられます。たとえばレストランを探すとき、今では多くの人は食べログの口コミ評価を参考に決めますよね。そんな風に、ソーシャルメディアの普及によって赤の他人が身近になってきて、他人とモノやお金のやりとりをすることに抵抗感が薄れてきました。そして、スマートフォンが普及して人々はいつでもオンライン状態になっています。これによって、リアルタイムで借りたい人と貸したい人が繋がることができるようになりました。こうした理由によって、個人が容易にシェアリングエコノミーに参入できるようになり、受け皿となるプラットフォームも次々と立ち上がっています」

農業体験から駐車場まで
アイデア次第で手堅い収入に

 では、シェアリングビジネスは実際に、個人が参入してどのくらい儲かるのだろう。それについて、クラウドソーシングサービス大手のクラウドワークスが2月に公開した決算説明資料の数字が、大きな話題となった。昨今の情勢から、波に乗っているビジネスモデルと思いきや、ふたを開けてみれば、平均月収20万円以上を達成したユーザーは、たった111人しかいなかったのだ。

「クラウドソーシングというのは、空いた時間でお小遣い稼ぎをしたいという人が多いので、それだけで生活できるという人は多くはないようですが、年収1位の30代女性の翻訳家は2025万円、2位のウェブエンジニアの男性は1486万円でした。クラウドワークスは、クライアントもユーザーも契約額も右肩上がりですから、これからどんどん稼ぐ人が出てくるはずです」

 とはいえ、年収2000万円というと、あくまで特別なスキルを持った人のケースであって、実感が湧かないかもしれない。もっと誰でも稼げる可能性はないのだろうか?

「弊社のシェアリング事業の1つに、地域ならではの観光体験を提供するTABICAというサービスがあります。主に農業体験を売りにしているサービスなのですが、たとえば、トマトやブルーベリーを栽培しているホストのケースですと、家族連れなどのゲストと一緒に作物を採って、終わったらバーベキューをする。それで、月に10~15万円ぐらいの収入を得ています」

「他にも外国人が教える料理教室のTadakuというサービスもあります。フランスやイタリアなどの外国人と一緒に本場の家庭料理をつくって、一緒にいただくというものです。人気ホストは月20~30万円程度稼いでいます」

「もう1つ、当協会に加盟している軒先株式会社が運営する軒先パーキングという駐車場シェアリングのサービスでは、東京スカイツリー周辺に登録していただいている駐車場で、稼働率8割程度、1日3000円ぐらいの売上が出ています」

 シェアリングエコノミーは、自分が持っているスキルやモノ、スペースをシェアするものが多く、組織化や規模を拡大するのが難しいのかもしれない。とはいえ、大儲けとまではいかなくとも、個人のサイドビジネスとしては、そこそこの収入にはなると言えそうだ。

まだ課題はあれど影響力は甚大
社会に新たな価値観を創生

 一方で、シェアリングエコノミーのサービスのなかには、法律的な観点から収益化が難しいビジネスモデルも少なくない。

「nottecoという自家用車の相乗りサービスがありますが、道路運送法では業として有償で運送・輸送するには、国土交通大臣の許可が必要です。そこで、nottecoでは、ガソリン代や高速代など実費を超えない範囲でコストシェアを行うルールになっていて、全件目視監視をしています」

 話題になっているAirbnbについても、よく言われるのが旅館業法との兼ね合いだ。旅館業法では、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業行為をするには許可が必要とされる。

 しかし、現状のAirbnbでは、なかには旅館業法の基準を守っているホストもいるが、ほとんどのホストは許可を持っておらず、様々な議論を呼んでいる。

 このようにシェアリングエコノミーは、新しい産業であるゆえに、法律上の課題も少なくない。だが、そのインパクトは社会を変える可能性を秘めている。

「やや大袈裟な言い方になりますが、シェアリングエコノミーは資本主義に対するアンチテーゼなんです。資本主義というのは、たくさんモノを生産して、たくさん売って、たくさん所有してもらうというモデルです。そのために、大衆に宣伝をしたりして、『モノを所有することに価値があるんだ』という洗脳をしていゆくわけです」

「一方、シェアリングエコノミーは、モノを生産しません。すでにあるモノをみんなで共有することでお金をやり取りします。なぜ、そうするかというと、共有した方が効率的でコストが安いからです。4人家族でサッカーボールを4つも持っているのは、バカバカしいですよね。サッカーボールなんて家族に1つあれば十分じゃないですか、というのがわれわれの提案です」

「実際、社会はシェアリングエコノミーの価値観に近づいてきていると思いますよ。昔のバブル期は、恋人たちは高級車に乗ってクリスマスに一流ホテルで過ごすというのが流行っていましたが、今は、何かを消費したり所有したりすることよりも、SNSブームに見られるように、人とつながることに対する願望が強い人が多くなっていると思います」

 シェアリングエコノミーは、単にコストが安いというだけのビジネスモデルではない。社会の価値観が変化し、他人と繋がることが当たり前になったからこそ成立する新時代の経済活動のあり方なのだ。それゆえ今後、個人の他人と繋がりたい願望が増せば増すほど、市場規模が際限なく拡大していくことは間違いないだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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