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銭湯業界復活!?仕掛人は20~30代の若者たち

2017年04月06日 06時00分更新

文● 吉田由紀子(ダイヤモンド・オンライン

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20〜30代経営者が続々誕生
銭湯業界に復活の兆し

 このところ、銭湯がずいぶん変わってきた。そう感じる方はいらっしゃるだろうか。大きなブームにこそなっていないが、銭湯の人気がじわじわと復活している。

埼玉県川口市の喜楽湯。今も井戸水を薪で湧かしている老舗の銭湯だが、番台を守るのは若いスタッフである

 例えば、東京・台東区にある「日の出湯」。ここは、シェアオフィス付きの銭湯である。お湯につかってサッパリしたら、同じビル内のオフィスで仕事ができるという便利さ。オフィスだけでなく、シェアハウスが隣接する銭湯もある。神奈川県横浜市の「清水湯」だ。

 東京・北区の「殿上湯」は、広々としたマッサージスペースを新設して好評。銭湯は夕方から深夜の営業が大半だが、なんと、昼の12時から翌朝10時まで、22時間営業をしているところもある。東京都昭島市の「富士見湯」だ。様々なイベントを打ち出して、新しいお客を集めているのが、京都の「梅湯」。

 また、飲食面もかなり充実している。東京・大田区蒲田の「福の湯」では、ロビーで焼きたてのピザが食べられ、人気を呼んでいる。食堂や居酒屋を併設するのは、スーパー銭湯では珍しくないが、街場の銭湯では、まださほど多くはない。

 これらの銭湯に共通するのは、20代から30代の若い世代が運営にあたっている点だ。こういった新しい銭湯の話題も手伝って、このところ、銭湯がじわじわと注目を集めている。その火付け役になったのが、「東京銭湯 – TOKYO SENTO – 」というWEBメディアである。

 東京銭湯は、若者目線で銭湯の情報や楽しみ方、イベントを発信している。各地のがんばっている銭湯を紹介する記事を皮切りに、モデルやアイドルが銭湯で撮影をする「ゆはかわいい」というコーナーや、銭湯が大好きな人物をクローズアップする「Humans of 入浴」。面白いところでは、不動産屋とタイアップして「風呂なし物件ツアー」も開催している。最近は、銭湯好きのホリエモンを招いて対談も行うなど、かなりアグレッシブな活動を展開中。東京と銘打っているが、取り上げる銭湯は全国エリアである。

銭湯サイト運営のかたわら
実際の銭湯経営にも乗り出す

 立ち上げたのは、デザイナー(Superposition Inc.)の日野祥太郎さん。銭湯業界の関係者ではなく、まったく部外からの参入である。

「子どもの頃から風呂そのものが大好きだったんですが、当時は銭湯へ行く習慣はありませんでした。デザイナーになって仕事を始めた頃、近所に銭湯があったので、気分転換に通いだしました。それがきっかけとなり、だんだん銭湯にハマっていったんです」(株式会社東京銭湯代表 日野さん)

 利用者として銭湯へ足しげく通っていた日野さんが、WEBメディアを立ち上げたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。

「災害時には誰もが助け合わなくてはならないということを痛感しました。でも、自分のまわりを見てみると、地域のコミュニティがなくなっていることに気づいたんです。若者がもっと参加して地域とのつながりをもう一度、作りたい。そう思った時に、銭湯を拠点にできないかと。銭湯は地域の人が気軽に交流できる居場所です」

 2015年3月にサイトを立ち上げた直後から、主旨に共感する人びとが集まり、今では3~40人のメンバーで取材を行い、企画やサイトに運営にあたっている。

 昨年からは、埼玉県川口市で「喜楽湯」という銭湯も実際に運営している。昭和20年代から続く老舗の銭湯を引き継ぎ、井戸水を使い、薪で沸かすという伝統を守っている。

「多くの銭湯を訪問してきたので、銭湯経営の大変さは頭ではわかっていたのですが、実際にやってみると本当に大変で、先達のみなさんのご苦労が身にしみました。例えば、掃除ひとつとっても技術が要る。でも、各銭湯さんはいろいろな見識や技術をもっているのに、それらのノウハウが業界内で共有できていないんです。これはもったいない」

銭湯で地域コミュニティづくり
イベントや他店舗とのコラボも

 喜楽湯では、積極的にイベントを開催し、集客を図っている。落語や漫才を上演したり、こどもの日には、駐車場に近隣の人が交流できる場を設けて楽しんでもらったりしている。地域の店舗とのコラボも盛んだ。古着屋さんやカフェなども出張してくれ、地域で相乗効果が生まれているという。

「喜楽湯は、やはりご高齢のお客さんが多いのですが、我々が運営を始めてから、徐々に若い人が増えています。WEBやSNSでの情報発信はもちろん、駅前でのビラ配りも行っています。ビラ配りをした時は、銭湯がビラ配りなんてめずらしい!と興味を持ってくれました。実際、近所の人でも、自分の住む街に銭湯があることを知らないという方が多く、これには驚きました」

 特に力を入れているのが、接客。スタッフはお客さんのキャラクターや趣味をさりげなく聞き出し、似た趣味を持つ人がいれば、つなげる工夫をしている。こうやって常連の輪ができていき、営業終了後に一緒に飲みに行ったり、掃除の手伝いをしてくれたりする関係も生まれているという。

 銭湯業界は、昔ながらの慣習を守る店舗が大多数である。チラシを配ったり、WEBやSNSで発信するなど、普通の商売ならば当たり前のことを行っているところが、まだまだ少ない。それだけに、今後の伸びしろも大きいのではないだろうか。

 現在、週に1軒の割合で廃業している銭湯。わずか460円(東京都)で楽しめる街場のオアシスと思えば、これほどコストパフォーマンスのよい場所もない。自宅に風呂のある方も、たまには銭湯でリフレッシュしてみてはいかがだろうか。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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