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JA全農「農家本位の改革」先送りに政府からの圧力必至

2017年04月05日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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改革の年次計画を発表するJA全農の成清一臣理事長(中央)。地方組織まで改革を浸透させられるかが鍵を握る Photo:KYODO/amanaimages

 JAグループの農業関連事業を担うJA全農が3月28日、自らの改革の年次計画を公表した。政府・与党は全農の“ドル箱”で農家に生産資材を売る「購買事業」を縮小し、その分、農産物を売る「販売事業」を拡充するよう求めていた。それに向けた事業や体制の見直しが年次計画の焦点だったが、全農は具体策を明らかにしなかった。

 JAグループによる自浄作用が見られなかったことで、今後、政府によるJAグループへのプレッシャーが強まることになりそうだ。

 全農は、昨年11月に政府・与党が策定した農業競争力強化プログラムに沿って年次計画を検討してきた。だが、同プログラムをまとめた自民党の小泉進次郎農林部会長は3月28日、全農からの説明を受けた後、「農業改革に残された時間は少ない。その危機感を共有できているか、疑う部分があった」と不満をにじませた。

 というのも、小泉氏が最大のポイントに挙げていた購買事業の改革が不十分だったからだ。

 全農は購買事業の縮小後の体制などを示すのを6月に延期。さらに肥料・農薬を値下げするための競争入札など、生産資材の仕入れ方法の見直しも先送りした。

 競争入札の全面的な導入決定に至らなかったのは、全農の地方組織からの抵抗があったためだ。「全農と(仕入れ先の)メーカーになれ合いの関係があるから資材が割高だ」という見方を打ち消すためにも、全農は透明性の高い入札に切り替えるべきだろう。

淘汰を進める覚悟が必要

 そもそも、全農改革の目的は農家の所得を増やすことにある。全農は“嫌われ役”を買って出て、農業界に競争原理を導入し、生産性の低いメーカーや卸を淘汰することを期待されているのだ。

 だが、全農の本業である販売事業の改革も、本気度が疑われる中身になった。

 全農は集荷・販売するコメの9割を直接販売に変える目標を打ち出した。しかし、実現は2024年度とかなり先。しかも直接販売には、売り先を全農に申告した卸売会社への販売も含まれる。全農はコメ生産量の3割を握る集荷力を武器に、卸売会社に売り先を申告させ、“パートナー卸”として傘下に組み込もうとしているのだ。

 改革に乗じて全農がコメ市場の支配力を強めることが、農家の所得向上につながるかは不透明だ。

 なぜなら、全農は地方組織によるコメの投げ売りを中央組織が制御できないなどガバナンスに問題があるからだ。農家から買ったコメがだぶつけば乱売合戦になり、農家の所得向上どころではない。

 今後、全農は改革の内容や進捗具合を政府から逐一チェックされる。すでに、イトーヨーカ堂の前社長を幹部に起用するなど外部人材の登用を進めているが、全農のガバナンス強化が喫緊の課題となっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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