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韓国、危機的状況での大統領選に保守派のダークホース登場か

2017年03月29日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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朴槿恵氏は、大統領の弾劾・罷免後に、検察の取り調べを受けた。与党にとっては大きな打撃となり、次期大統領も左派候補が優勢だ Photo:REUTERS/アフロ

韓国で、朴槿恵前大統領が弾劾・罷免され、5月9日に大統領選挙が実施されることになった。次期大統領選挙候補者で支持率トップの文在寅氏は左派。親北朝鮮派として知られ、対米、対日関係の悪化も懸念される。韓国経済の低迷が続いている中、次期大統領は手腕を発揮できるのか。(経済ジャーナリスト 池 東旭)

 韓国経済界は、朴槿恵氏の大統領弾劾・罷免の余波に、息を潜めている。贈収賄罪で朴氏と共に起訴されたサムスン電子の李在鎔副会長のほかに、ロッテホールディングスの辛東彬(=重光昭夫)会長やSKグループの崔泰源会長といった財閥オーナーも、同様の容疑で追及されている。

 大統領選挙は5月9日に実施されるが、それまで韓国は権力の空白期となる。大統領を代行する黄教安内閣は過渡的存在にすぎず、行政はまひしている。公務員も様子見に終始して積極的に動かない。財界も新規事業を全てストップしている。

 政治の混乱に加えて、国際情勢も激動している。特に韓国経済界が頭を痛めているのが対中関係だ。

 中国は米国が進めるTHAAD(戦域高高度ミサイル防衛)の韓国配備に強く反発して、韓国製品のボイコットなど経済制裁を断行した。中国政府は、THAAD関連施設がロッテ所有のゴルフ場の敷地に建設されることを理由に、中国国内で営業中の過半のロッテマートの営業停止を命じた。3月からは、中国から韓国への団体旅行(昨年は約800万人)が禁止された。

 韓国の対中国の輸出入額は全体の2割前後を占める。貿易、投資、文化交流などあらゆる分野で、日本や米国より中国への依存度ははるかに高い。安全保障・軍事で米国に依存する韓国にとってはジレンマだ。

 韓国経済は危機的状況にある。GDP成長率は、15年以来、3%を切っている。輸出は伸び悩み、内需も冷え込んでいる。韓進海運など海運・造船企業の破綻が相次ぎ、雇用も悪化している。2月の失業者数は135万人になり、1999年の通貨危機以降、最悪の数字になった。

 米国の利上げも韓国には痛手だ。ウォンの急落と資本流出を避けるために、金利を引き上げざるを得なくなるからだ。金利上昇は1400ウォン強に膨れ上がった債務を抱える家計部門を直撃し、多数の「信用不良者」を生み出す。だが、政治の混乱で経済政策は後手に回り、浮上の兆しは見えない。

 そんな中での大統領選挙である。世論調査(3月17日)を見ると、次期大統領選候補者で支持率が33%と最も高いのが野党「共に民主党」代表の文在寅氏。それを同党所属で中部忠清南道知事の安熙正氏(18%)、中道野党「国民の党」の前共同代表だった安哲秀氏(10%)が追っている。大統領弾劾の影響で、保守陣営候補はことごとく、支持率1桁台だ。

 文氏は大学時代に民主化運動に関わった経験を持つ弁護士。対北融和政策を積極的に進めた盧武鉉元大統領の秘書室長を務めた。「自分が大統領になったら米国より先に北朝鮮に行く」と発言したこともある。他方、従軍慰安婦問題で日本に対しては批判的で、対日関係を悪化させる可能性もある。

 討論会で「雇用を重視する」と発言したように、経済政策においては財閥への規制強化や消費者金融利用者の債務減免など、左派的政策を取るのは確実だ。しかし、韓国経済の低迷に打つべき手を打てるかは不透明だ。

サムスン会長義弟の出馬説が浮上
ダークホースに

 ここにきて新たな大統領候補が取り沙汰されている。それは「中央日報」会長の洪錫炫(ホン・ソクヒョン)氏。同氏は、3月18日に会長を辞任したが、韓国メディアでは出馬への布石と報じられている。洪氏はソウル大学電子工学部を卒業し、米スタンフォード大学で博士号を取得。駐米大使などを歴任するなど華麗なる経歴を持つ。サムスン一族と姻戚(姉は李健熙サムスン会長夫人、おいは李在鎔副会長)でもある。

 政界では新人であるため新鮮さが強みで、左派政権に抵抗がある有権者や保守派の受け皿として、出馬すればダークホースになる可能性が高い。もっとも、アンチ財閥の風潮がまん延しているため、支持拡大に向けて課題も多い。

 現時点では、大統領弾劾の反動で左派候補が有利。左派候補が当選すれば東アジアの地政学リスクは増幅する。THAADについて、最有力候補の文氏は「次期政権が決める」と態度をあいまいにしている。だがTHAADはすでに工事が進み、上期中に稼働を開始する。左派政権が中国に配慮し撤収を要求すれば米国も黙っていないだろう。

 朴政権は米中と等距離外交を目指したが、結局、親米路線に回帰し中韓関係を悪化させた。左派政権になって米韓関係が悪化し、東アジアの安全保障体制に深刻な亀裂が生まれれば、核ミサイル開発を続ける北朝鮮はほくそ笑むことだろう。

 経済面でも外交面でも、次期大統領が就任直後から厳しい課題に直面することは不可避だ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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