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上司とのコミュニケーションこそが、部下を成長させる ヤフーの人材育成「1on1」とは何か【第1回】

2017年03月25日 06時00分更新

文● 本間浩輔(ダイヤモンド・オンライン

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ヤフーの「1on1」が、人事の領域で関心を集めている。1on1とは、正しくは「1on1ミーティング」といい、原則として毎週1回、30分間、上司が部下と対話するという制度である。その狙いは何か。どのように制度を運用しているのか。1on1の生みの親である、本間浩輔・ヤフー上級執行役員に語ってもらった。

経験を成長につなげるための最良の方法

 1on1ミーティングは、簡単に言えば「わざわざ定期的に」上司と部下との間で行う、1対1の対話のことです。

 会社のなかでは、上司と部下による「面談」は珍しくありません。成果を確認したり、評価を伝えたりするものですね。

 ヤフーの1on1は、そのような面談とは、少し違います。ヤフーの1on1は、人材育成を効果的に行うことが主な目的です。

 かつてのような成長が難しくなった今の日本企業では、少なくとも社員のモチベーションを高く保つための仕組みや仕掛けが必要なのではないか、と思います。

 ですが、現実にはメンタルダウンする若手が出るなど、モチベーション維持策は、なかなかうまく行っていない、というケースが多いような気がします。

 私たちがはじめ、今も試行錯誤しながら続けている1on1は、モチベーションを保つことにとどまらず、経験を血肉とし、成長につなげるための、最良の方法であると思っています。

 3月25日に発売される書籍『ヤフーの1on1~部下を成長させるコミュニケーションの技法』は、いままであまり整理して語ってこなかった1on1の技法を紹介することに加え、ヤフーの人材育成に対する考え方を伝えるための書籍です。

 ここでは、その内容を少し先取りして、エッセンスをお伝えしたいと思います。

『コミュニケーションは頻度』とはこういうことなのかと実感

『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』 本間 浩輔 (著) ダイヤモンド社刊 1944円

 2012年に、私は思いがけず人事の責任者になりました。いろいろな制度をつくり、実施していこうと考えましたが、なかでもいちばん力を込めたのが1on1です。

 上司と部下との間のコミュニケーションを活性化させたい、ということはそれまでも考えていました。

 2012年当時のヤフーは、隣の席の同僚ともメールでコミュニケーションするような環境だったのですが、それでいいとは思えませんでした。私自身の経験でも、部下と真剣に対話しなければならない、と思い至る経験がありました。

 ある事業部門での部長時代のことです。当時、私はスポーツ事業を担当していて、長い時間を社外で過ごしていました。

 しかし、私はコミュニケーションが得意な方だと思っていたため、社内のコミュニケーションも大丈夫だろうという過信があったのです。

 あるとき、部下に対して「このままでは評価を上げられない」というような、ネガティブなフィードバックをしなくてはならないことがありました。するとその部下はカチンときたようで「本間さんが普段何をやっているのかわかりません」と言い放ったのです。そのときに、「これはまずい」と思いました。

 そのころ、コーチングの勉強もしていたのですが、「ああ、コーチングの本に書いてある『コミュニケーションは頻度』とは、こういうことなのか」と実感しました。

 半年に1回飲み会をするよりも、3ヵ月に1回一緒にランチに行くほうがいいし、3ヵ月に1回ランチに行くよりも毎月1回1時間話したほうがいいでしょう。また毎月1回、1時間話すよりも毎週15分ずつ話したほうがいい。

 コミュニケーションは頻度が大事です。仲のいい人とは頻度が高いけれども、ちょっと苦手な人に、たまたま声をかけたときに断られたりしたら、やはり声をかけなくなってしまう。そんなことがありがちです。

 そこで、全員とコミュニケーションの頻度を上げようと思って始めたのが、1on1ミーティングの原型になったものです。「ちょっとお茶しよう」と一人ひとりに声をかけては、カフェで話を聞くようにしたのです。

 当時は、「本間はしょっちゅう、お茶をしに行っている」、とよくない評判も立ったようです。

「1on1が定着すれば企業風土が変わる」

 人事の責任者になって、そんな1対1の対話を制度化して、全社に浸透させようと考えたのですが、もちろん、そう簡単には行きませんでした。

「1on1に時間をとられてほかの業務ができない」とか、「1on1に意味を感じない」などと何度も言われたものです。

 でも、私には1on1を広め社内に定着させることによって、企業風土が変わる、という確信がありました。コミュニケーションが密になることによって、ビジョンが共有できたり、個人の強みを活かしたチームづくりが可能になるだろう、と思ったのです。

 1on1を始めてから5年目になりますが、その思いは、ある程度、実現したのではないかと考えています。もちろん、成果を定量的に評価するのは難しいですが、社内調査では社員の9割が、少なくとも隔週で一回以上の1on1を実施しています。

 ヤフーの社内では1on1という言葉が社内用語として普通に使われていますし、他社でも、1on1を指向する企業が増えている、と聞きます。

 今回、1on1について解説する書籍をつくろうと考えたのも、共感してくださる方々とのネットワークができたらいい。1on1について、きちんと言語化し、仲間を増やして連携し、さらにブラッシュアップしていきたい、と考えたからです。

 そうは言っても、事前に時間や場所を決め、テーマもある程度用意して臨む1on1は、正直に言えば、面倒なものです。

 ヤフーでも最初からすべての社員に理解してもらえたわけではないのですが、制度化することで「やらざるをえないもの」にし、研修など、制度を補完する仕組みもつくりながら、なんとか定着し、浸透することができてきました。

 これから数回の連載記事を通して、1on1の真価や、浸透させるための仕組み、さらには1on1を実施する私たちの思いについて、お話ししていきたいと思います。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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