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最新パーツ性能チェック 第210回

TITAN Xとの戦いは、エンスージアストに何をもたらすのか?

新GPU「GeForce GTX 1080Ti」の性能を最新ゲームでベンチマーク

2017年03月09日 23時00分更新

文● 加藤勝明

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 NVIDIAが2017年3月1日にPascal世代の新たなハイエンドGPU「GeForce GTX 1080Ti」を発表した(関連記事)が、本日GTX 1080Tiのレビューが解禁となった。“GTX 1080より35%速く、TITAN Xより速い”のに、TITAN X(米国NVIDIA直販では1200ドル)より安い699ドル、という衝撃的な価格設定で話題を集めている。

 GTX 1080Tiの発売日は3月11日(予想価格は税込約12万円……)とのことだが、今回は評価用のカード(Founders Edition:以降FEと略)をお借りすることができた。果たしてNVIDIAの謳い文句は本当なのか? ベンチマークで検証してみたい。

↑GTX 1080が出た時点で登場が予想されていたGTX 1080TiのFounders Edition。米国における販売価格は699ドル。これの発売に伴い、GTX 1080 FEは499ドル(昨年の発売当初は699ドル。原稿執筆時点では549ドル)に大幅値下げされる。

↑上からTITAN X、GTX 1080Ti FE、GTX 1080 FE。カードサイズからクーラーのデザインまで、ほぼGTX 1080 FEと同じ。

↑上から順にTITAN X、GTX 1080Ti FE、GTX 1080 FEの外部電源コネクター。TITAN Xに近いスペックの製品なので外部電源も8+6ピン仕様となった。

↑GTX 1080Tiは1080無印に対し35%のパフォーマンスアップらしいが、本当にそんな上手くいくものだろうか……。

メモリー周りのスペックに注目

 改めて確定したGTX 1080Ti FEのスペックを確認してみよう。TITAN XはNVIDIA専売なのに対し、GTX 1080Tiはサードパーティーから独自設計のカードが今後(関係者によれば4月頃)登場するため、FEよりもクロックの高いモデルが出回ることになるだろう。

↑GTX 1080Tiのスペック。発表当時のブーストクロックは1.6GHzと表記されていたが、これは正式スペック1.58GHzを丸めた数値だったようだ。

↑「GPU-Z」でGTX 1080Ti FEの情報をチェック。まだGPU-Z側の情報が古いため、ROPやテクスチャーユニット数が正しく表示されていない。

 以上のように、GTX 1080Tiのアーキテクチャは既存のPascalであり、メモリーもHBM2ではなくGDDRX5だ。アーキテクチャー的な新鮮さはないが、既存のPascalベースのGPUの集大成的な設計になっている。以下にGTX 1080Tiで注目すべき部分を簡単にまとめてみた。

①基本設計やCUDAコア数はTITAN Xと同じだが、コアは若干高クロック動作に
②メモリコントローラーを1基減らしたことで、バス幅は32ビット減。搭載量も1GB減の11GBへ
③GDDR5XメモリーはGTX 1080発表当時よりも改善され、11GHz相当のクロックで動作
④電源回路におけるデュアルFETの数を従来の2倍に増やすことで高負荷時の電力効率を向上

 GTX 1080TiとTITAN Xの差異は非常に小さい。どちらもGP102ベースではあるが、フルスペック(つまりQuadro P6000)からCUDAコア128基とPoryMorph Engine 4.0などがワンセットになったブロック“SM”が2基削除されている。メモリーバス幅やメモリー搭載量はTITAN Xの方がわずかに勝っているが、搭載メモリーのデータレート(表ではクロック(相当)としている)はGTX 1080Tiの方が高い。GPUコアのクロックもほんの少しではあるがGTX 1080Tiの方が高く設定されている。

↑GP102をベースにしたGTX 1080Tiの論理的な構造図。赤で囲った部分がTITAN Xにはあって、GTX 1080Tiにはない部分、中央付近の暗い部分はフルスペックGP102から無効化された部分となる。

 だがGTX 1080Tiのアーキテクチャを語る上で重要なのはメモリーだ。4Kや5Kの高画質ゲーミングにはメモリー帯域がカギになるからだ。AMDはすでにHBMメモリーで速度やバス幅面では優位なGPUを作ったが、まだHBMでは容量とコストの両立が難しい。そこでNVIDIAはGDDR5Xの改良をマイクロンと共同で進め、データレートを10Gbpsから11Gbpsに引き上げることに成功した。その結果としてバス幅は32bit狭いものの、メモリ帯域幅は484GB/秒とTITAN Xの480GB/秒とほぼ同程度の帯域を確保している(ちなみにGTX 1080は320GB/秒)。

↑GDDR5Xメモリーの改良により、以前のGDDR5Xよりも高クロック(11GHz相当)動作時の信号波形はぐっとキレイになり、安定動作が可能になった。

 また前掲の④は直接的に性能に影響はない部分だが、ワットパフォーマンスを考える上では面白い変更点といえる。GPUへの電源回路に使われていたデュアルFETを2倍に増やすことで、電力効率をさらに向上させた。基板上のパーツ配置をTITAN Xと対比させてみると、確かにその部分だけパーツ数が明らかに違う。ただTITAN Xの時点で空きパターンがある場所が埋まったということは、この変更はTITAN Xの基板設計時から想定されていたということだ。

 ただこの設計変更はFEに限った話であるため、サードパーティーから今後投入される独自設計カードには採用されない可能性もある点に注意しておきたい。

↑TITAN Xの基板写真(NVIDIA提供)。GPU右の電源回路部分にデュアルFET用の空きパターンがみられる(図中矢印)。

↑GTX 1080Tiの基板写真。赤矢印の空きパターンがあった場所はすべてデュアルFETで埋まっている。青いカコミはGDDR5Xメモリーが減らされた分の空きパターンだ。

↑GTX 980時代の電源回路の大まかな構成(左)と変換効率(右)。昔はMOSFETだったものが……(続く)

↑(続き)GTX 1080ではデュアルFETに変わったことで大幅な変換効率の向上を獲得。これがワットパフォーマンスを引き上げた要因のひとつになる(続く)

↑(続き)GTX 1080TiではそのデュアルFETをさらに2倍に。電力消費量が多くなるほど変換効率の差が開く、というのがNVIDIAの主張。

 またFE限定の要素としては、DVI出力が廃止され背面の排気口が拡大された。回路規模の大きな(1200億トランジスター)GPUコアの発熱を効率的に排出するための苦肉の策といえる改変だが、GPUそのものからDVIが非対応になった訳ではない。外排気にこだわらなくてもよい大型クーラー搭載のサードパーティー製カードはDVI出力を備えることも十分考えられる。

↑TITAN X(左)とGTX 1080Ti FE(右)出力端子のちがい。DVIが削除され、その部分が全て排気孔になっているのがGTX 1080Ti FEだ。

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