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歯周病が「玄米」「小松菜」で改善する理由

2017年03月03日 06時00分更新

文● 夏目幸明 [経済ジャーナリスト](ダイヤモンド・オンライン

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歯の噛みあわせが悪いと、集中力が途切れ、肩こりや腰痛もひどくなる、といった話を聞く。これを日本で最初に主張したのが、群馬県高崎市にある「丸橋全人歯科」の医師たちだ。この意見は当初こそ黙殺されたが、現在、同歯科は有名スポーツ選手が通うほどの人気を得ている。彼ら“歯並び先生”たちの主張は「歯は全身と影響しあっている」というものだ。(経済ジャーナリスト 夏目幸明)

縄文人が歯周病に
かからなかった理由とは

 歯周病は実に恐ろしい病気だ。歯の周りの骨が溶け、歯茎が赤く腫れる、血が出る等の症状が現れ、最終的には歯が抜ける。お年寄りになると入れ歯が増えるのは歯周病の影響だ。

辻本院長はこれまで、5000例以上の造骨手術を手がけてきた

 その特徴は「3S」と言われる。まず「Silent(静か)」。自覚症状が少なく、重症化しないと気づけないのだ。次に「Social(社会的)」。歯周病は日本人の成人の8割以上が罹患していおり、歯を失う原因の第1位、由々しき問題なのだ。最後は「Self Controllable(予防可能)」。ケア次第で、予防可能といわれている。

 ケアの常識は単純だ。今まで「歯周病の最大の原因は歯垢に潜む細菌である」とされてきた。そこで「日常的に歯と歯茎を丁寧にブラッシングし、歯垢を除去することが最も有効だ」といわれる。

 しかし、丸橋全人歯科の辻本仁志院長は、別のアプローチを試みていた。

「もちろん歯垢除去は大切ですが、これに加え3週間ほど、食事の糖質を少なくするか、白米を玄米に変えてみてほしいのです。初期の歯周病であれば、症状が劇的に緩和される場合がありますよ」

 丸橋全人歯科は、その名の通り「歯は全身と影響を及ぼしあっている」と考え、治療を行う歯科医だ。現状の保険制度では、この病院の医師たちが考える治療がしにくいため、保険を利用しない形で治療を行っている。

 辻本院長よれば、先の主張をするにあたって、重要なデータがあったという。

「実は、縄文人は歯周病がほとんどなかったのです。また、先代の院長は歯と全身の関連を研究するため、モンゴルでも調査を繰り返しました。結果、都市部では歯周病が見られたもののの、遊牧民の間ではほぼ見られなかったのです。ブラッシングに関しては、我々、現代の日本人のほうが、よほどしっかり実践しているにもかかわらずです」

 辻本院長らは「現代日本人の生活習慣や食生活に原因があるのでは?」と話し合うようになった。そんななか、辻本院長はある法則性に気づいていった。

「患者さんの中に、ブラッシングを徹底的に行ない、スケーリング(歯石の除去)を行っても、歯周病がどんどん悪化していく方たちがいました。しかも、これらの患者さんは、歯周病で歯がなくなったあと、インプラント治療を行うために歯のまわりの骨を補強する手術を行っても、元の骨が柔らかすぎて、いい結果が出せないのです」

 なかでもひどい患者さんがいた。彼の職業はパティシエ。当初、患者本人は「甘いものを食べる機会が多いから、糖分が口の中に残ることが多く、歯周病菌が繁殖するのでは」と考え、熱心にブラッシングをしていた。しかし、辻本院長は別の可能性に着目した。

「私は砂糖が歯周病に影響を与えるのでは?と考えました」

 もし口の中に残った糖分が原因なら、まめにブラッシングすれば症状は緩和できるはずだ。

「ところが、ほとんど意味がない患者さんが確かにいるのです。そして、これらの患者さんの食生活を調べると、皆が砂糖の摂りすぎだったのです」

砂糖を摂り過ぎた人の歯は
スナック菓子のようにサクサク削れる

 人間は糖分をエネルギーに変え、生きるための活動を行っている。糖分が人間にとって必要なエネルギーであることは論をまたない。

 しかし糖分がエネルギーに変わるときにはビタミンB群を消費する。だから、糖分――中でも糖分以外の栄養素を含まない「砂糖」を摂り過ぎると、人体は急速にビタミンB群不足へ陥ることになる。そして、ビタミンB群が足りなくなると、人体は効率的にエネルギーを作ることができなくなり、細胞の活動が低下してしまうのだ。

「すると、骨の新陳代謝や、免疫細胞の新陳代謝が悪くなります。私は現在までに5000例以上の造骨手術をしてきました。そのたびに骨の状態を診て、体の健康状態を判断しています。この経験から、私が確かに感じるのは以下の3点です。砂糖を多量に摂取している人は骨が明らかに柔らかく、免疫力の低下により歯周病が悪化している。さらに、手術後の傷の治りも悪いということです。そしてこれら症状は、私の科学的知識とも合致しています」

 また、砂糖を摂りすぎるとカルシウム不足に陥る、とも考えられる。砂糖の過剰摂取により、体は酸性に傾く。人体はこれを戻そうと骨のカルシウムを使うため、骨が弱くなるのだ。辻本院長が言う。

「マウスに大量の砂糖を摂取させると骨がボロボロになって弱くなる、という説もあります。私も施術のたびに実感しています。長期間砂糖を摂りすぎてきた患者さんの歯は、削るときの音が違い、まるでスナック菓子のようにサクサク削れます。また、インプラントは通常、骨に強固につくので除去しにくいのですが、骨がやわらかい方は歯を抜くより簡単に除去できてしまいます」

 そう、縄文人もモンゴルの遊牧民も、食生活が豊かではなく、糖分を摂りすぎてはいなかった。だから歯周病にならなかった、と考えることができるのだ。

 だが、糖分は人間の体に絶対必要な栄養であり、まったく摂らないわけにはいかない。そこで辻本院長は「ビタミンB群と一緒に摂取すること」を薦める。ビタミンB群を補うサプリもいいが、辻本院長は「食事から摂りたい」と話す。なぜなら近年、特定の栄養素だけを摂ってもポジティブな影響は弱く、雑多な栄養素を含む形――すなわち食事で栄養素を摂ったほうがポジティブな影響が強い、といわれているからだ。

歯周病は全身の骨の
状況を知らせるサイン

「そこでオススメしたいのが玄米(3~5分づき米でも可)です。玄米の胚芽の部分には、ビタミンB群が豊富に含まれています。精米によって胚芽を含む糠の部分を捨ててしまうから、ビタミンB群不足に陥るのです。歯周病の方は、試しにカメラで自分の歯肉の色を撮影してみて下さい。そして3週間ほど玄米を食べ、また同じ条件で撮影してみてください。血色が変わります。玄米と同時に緑黄色野菜(小松菜等)など、ビタミン、ミネラルを豊富に含む食べ物を摂るとさらに明らかな変化が見られますよ」

 もちろん「糖分を減らすのも効果的」だと言う。そもそも現代は、平均的食生活を送っていても糖分の摂りすぎに陥りがち。「甘いものを控える」「白米、パン、麺を控える」程度のことで糖分不足に陥ることはない。

 最後に、辻本院長はこう話す。

「歯周病は、『このままだと、全身の骨が弱くなってしまいますよ』と身体が本人に送るサインなのかもしれません。全身の骨は目で見ることができませんが、歯や歯ぐきは骨の変化を観察できる唯一の場所なのです』

 もし玄米や、糖分の摂取を減らすことで歯周病が改善されたら、それは、全身の骨も甦りつつあるサインといえる。気になる方はぜひ、実践してみていただきたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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