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大手法律事務所の実像「不祥事企業を狙うハゲタカ」の声も

2017年02月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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『週刊ダイヤモンド』2月25日号の第1特集は「弁護士・裁判官・検察官~司法エリートの没落」です。文系最難関の司法試験に合格したエリートたち、それが弁護士、裁判官、検察官です。特集班は今回、彼ら法曹関係者113人を取材し、法曹界の知られざる真実に迫りました。そこで見えたのは、それぞれ固有の事情から没落の憂き目に遭う三者の姿です。

「彼らの“餌食”は不祥事を起こして社会的信用を失った企業だ。今なら不正会計が明るみに出た東芝。その前なら三菱自動車にタカタだ」

 日本を代表する大企業をターゲットとする“彼ら”とは、その規模と歴史で国内五指に入る大手法律事務所(以下、五大)――西村あさひ、森・濱田松本、アンダーソン・毛利・友常、長島・大野・常松、TMI総合――を指す。

 長島・大野・常松法律事務所に在籍経験のある40代弁護士は、そんな彼らを「ハゲタカ」と呼ぶ。五大の業態がここ数年で変容し、存続が危ぶまれるような企業に狙いを定め始めたというのだ。

 かつて五大は渉外事務所とも呼ばれ、主に大企業向けに法律業務を提供してきた。離婚や交通事故等の個人案件は一切受任しない。

 そんな彼らの“好物”といえば、M&A(企業の合併・買収)だった。欧米ではやりの手法を持ち込んでM&Aのスキームを作り、条件の交渉や契約の締結など一切の事務作業を引き受ける。そのフィー(手数料)が事務所を支える“大黒柱”だった。

 2000年以降、五大は相次ぐ大型業界再編に合わせて中小法律事務所を吸収。最大手の西村あさひは弁護士人数が10年間で2倍以上に膨れ上がった。

 だが、M&Aの“うまみ”はなくなりつつあるという。

 西村あさひに長年在籍し、現在は準大手法律事務所に所属する弁護士は「M&Aの手法が一般化し、中堅法律事務所が安く請け負うようになった。以前ほどフィーが取れなくなっている」と明かす。

 加えて司法制度改革で大量増員された弁護士の一部が、証券会社や会計事務所などに流れ、その弁護士たちが、五大が引き受けてきた作業の一部を担うようになった。機能の区別が失われてM&Aがコモディティー化し、フィーの値下げ圧力がさらに強まったのだ。

 五大の所属弁護士は、1年目の「アソシエイト」でさえ年収約1000万円の高給取りだ。そんな高コストの弁護士を大量に抱えるには、よりもうかる案件を探さなくてはならない。そこで五大が目を付けたのが不祥事企業だった。

 企業の不祥事に絡んだ法律業務は枚挙にいとまがない。

 第三者委員会の設置に始まり、事実関係の調査、メディア対応、行政や機関投資家への説明、それに関連する訴訟など多岐にわたる。

 これら一連の法律業務を「危機管理」と呼ぶが、危機管理はM&Aと違い「依頼主から値引きを要求されることはほとんどない」(前出の40代弁護士)という。

 M&Aの場合、次の案件も継続的に受任したいがために、法律事務所は多少の値引きに応じざるを得ない。だが、危機にひんした企業に“次”はないかもしれない。だから事務所側も遠慮なくフィーを請求する。会社を救ってくれるなら、と企業側もカネに糸目を付けないことが多い。

 さらに付け加えると、危機管理は数年にわたって継続するケースがほとんどだ。

 実際、タカタは08年11月の米国でのリコールをきっかけに危機が始まった。この先も危機が続くことは確実で、言ってしまえばタカタは、大手法律事務所が10年以上食い続けられる“おいしい”獲物なのだ。

 危機管理案件のこうした性質が、五大が不祥事企業に群がる最大の理由だ。

 森・濱田松本の棚橋元弁護士は「私たちは困っている企業をいかにして助けるかを考えている。ハゲタカとは心外だ」と不快感をあらわにするが、今の五大はかつてそう呼ばれた外資系ファンドの姿に重なる。膨張した図体を維持せんがために瀕死の大企業を食らう、腐肉食性のハゲタカのように。

 そして、そんな五大の表層を一皮めくれば、ブラック企業と見紛うほどの過酷な労働環境下で酷使される、若手弁護士たちの姿があった――。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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