このページの本文へ

東芝「解体」へ加速、虎の子の半導体も過半数売却へ

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

原子力事業で7000億円を超える損失を計上する東芝。今期末に債務超過を解消できず、東証2部に降格する情勢だ。元凶の原発事業を抱えたまま、稼ぎ頭の半導体事業は来期にも過半の株式売却に追い込まれることになった。“東芝解体”は想定を超えるスピードで現実化しつつある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 村井令二)

14日の記者会見は予定の午後4時から午後6時半に大幅に遅れた。決算延期を謝罪する綱川社長  Photo:REUTERS/アフロ

「半導体の売却は19・9%にこだわっている場合ではないだろう。来期に持ち越してでも過半を売却して資金確保に動くべきだ」。東芝の主力取引銀行の幹部は厳しい口調で話す。

 東芝は2月14日、米子会社ウエスチングハウス(WH)を中心とする原発事業の損失額が7125億円に上りそうだと発表した。記者会見で綱川智社長は、分社化する半導体のフラッシュメモリー事業の株式売却について「マジョリティー(過半数)のキープにこだわらないことに変えた」と述べ、2割未満から、過半の売却への方針転換を表明した。

 主力行はこのわずか数日前にフラッシュメモリー事業の過半売却を要請。こうした取引銀行の「圧力」の背景には、今回の米原発事業の巨額損失を確定する作業の中で浮上した、新たな不正会計の疑惑がある。

 東芝が14日に発表した原発事業の損失は、監査法人の承認を得ない会社側の見通しだ。1月8日と19日の2度にわたるWH従業員からの内部通報を受けて、原発事業の損失を確定する作業の中で、「WH経営者のプレッシャー」が存在した疑いが出てきたためだ。

 仮にWH経営者の関与で原発事業の損失が過少に見積もられたなら決算に影響する。このため「さらなる調査が必要」(佐藤良二・監査委員長)として、決算前日の13日に延期の方針を固めた。

 みずほ銀行など主力3行は3月末までの融資継続を決定したが、東芝が15日に開催した取引銀行向け説明会では、ガバナンスや情報開示に厳しい意見が飛び交った。ある銀行関係者は「東芝は何が起こるか分からない」と警戒感を隠さない。

 決算延期をめぐる混乱は東芝をさらに窮地に追い込む。同社は現在、東京証券取引所の上場廃止の恐れがある特設注意市場銘柄に指定中で、審査期限の3月15日以降も、監理銘柄に移行して審査を継続することが決まっている。審査を担当する日本取引所グループ傘下の自主規制法人の幹部は「東芝は多様な問題を抱えているので審査には時間がかかる」と述べる。

 東芝にとっては4月以降も公募増資が事実上封じられたまま、資本調達の手段が限られる厳しい状況が続く。フラッシュメモリー事業の設備投資は2016〜18年の3ヵ年で8600億円に上り、このままでは資金不足が顕在化するのは確実。「もはや半導体を手放してでも資金を確保するだけの覚悟を示すしかない」(東芝幹部)。こうして主力行の圧力に東芝は屈したのだ。

 だが、その代償は大きい。これまでは期末の債務超過を回避するため、分社するフラッシュメモリー事業の新会社株式の20%未満を3月末までに売却して資本を増強する計画で入札者を募っていたが、過半売却となれば前提条件が全く違ってくる。売却交渉をやり直す中で、期限付きでは十分な価格交渉ができないことから、株式売却を4月以降に先送りする方向で調整に入った。3月末で債務超過が解消されなければ、東証のルールによって、東芝株は1部から2部に降格となる。

半導体売却の一方で原発の切り離し難航
WH債務保証も障害

「虎の子」のフラッシュメモリー事業の株式売却は想定以上のスピードで進む方向となったが、危機の元凶となった原発事業のリスクの切り離しは依然として難しい。

 14日の記者会見で綱川社長は、87%を出資するWH株についても「パートナーがいれば持ち分を減らしていく」と従来からの意向を繰り返したが、容易ではない。

 06年に67%の出資で買収したWH株は、当初から持ち分を下げるために売却先を探してきたが、引受先は全く見つからなかった。13年には共同出資者だった米建設エンジニアリング会社ショー・グループから持ち株20%の売却オプションを行使され、東芝の出資比率はむしろ高まった。

 WH株の売却が進まない理由の一つとしてあまり知られていないのが、東芝がWHに対して行っている債務保証だ。14日の発表によれば、WHの債務保証額は16年3月末で7933億円。仮にWH株の全てを売却できたとしても、債務保証の移転は困難で、東芝による株式売却のハードルを一段と高めている。

 東芝社外取締役を務める経済同友会の小林喜光代表幹事は、14日の同社取締役会直後の記者会見で原発事業に関して「このような産業が一企業で成り立つのか考えなくてはならない」と述べ、民間企業が運営する是非を問い掛けた。

「悪い原発を残して、良い半導体を売る。これが果たして正しい経営なのか」。14日の取締役会で、ある社外取締役は呻いたが、東芝解体の流れを止めるすべは、誰にも見つけられていない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ