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業界人の《ことば》から 第233回

周辺機器メーカーにしかできない新たな製品の提案方法

2017年02月14日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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「ディスプレーを売る」だけじゃない

 「これまでの外付けドライブやモニターといった製品は、パソコンにつながない限り動かなかったが、当社が持つ製品同士を組み合わせれば、それだけでエンドユーザーが使えるという提案を始めている。コネクティブというと、大きな意味でとらえる場合が多いが、アイ・オー・データ機器にとってのコネクティブはかなり身近なもの。それが鍵になる」とする。

 そのひとつが、液晶ディスプレー事業での新たな取り組みだ。この事業ではまさに、PCの周辺機器という領域から踏み出し、コネクティブを軸に新たな提案を進める考えだ。

 同社では2017年2月下旬から、49型4K液晶ディスプレーを新たに投入。「これまでは40型までが最大であったが、49型にまで広げることで屋内デジタルサイネージなどの用途に活用する提案が行える」(アイ・オー・データ機器の細野社長)とする。

 ここでは、液晶ディスプレー単体の機能提案だけでなく、2017年春に発売を予定しているスティック型PCによるサイネージ向け端末との組み合わせ提案のほか、自社ブランドによる専用スタンドの提供、1週間分のスケジュール設定を可能にするサイネージアプリ「時間割看板」などの組み合わせ提案をするという。また、4K動画の再生を可能にする手のひらサイズの小型PCを発売する計画も明らかにした。これもサイネージ用途で威力を発揮する製品になる。

新たに投入する49型4K液晶ディスプレー

開発中の4K対応の「CLIP PC」

 「ディスプレー単品の提案に留まらず、周辺端末を含むシステム提案を行ない、顧客がやりたいことを実現できるソリューションメーカーを目指す。競合ディスプレーメーカーにはできない提案をしていく」(アイ・オー・データ機器 事業戦略本部企画開発部企画3課チーフリーダーの澤野 貴史氏)とする。

 細野社長も「これまでの単体販売では機能を前面に打ち出した提案が多かったが、コネクティブの提案では、価値を前面に打ち出したソリューション提案が中心になる」とする。

 これは今後、同社が力を入れるIoTビジネスにも通じる姿勢だといえよう。

 同社では、各種センサーを搭載したIoTカメラの販売に加えて、2016年末にマルチキャリアM2Mルーターを発売したほか、開発中のIoTゲートウェイボックスを今後投入する姿勢などを明らかにしており、徐々にIoTビジネスの拡大に踏み出している。

各種センサーを搭載したIoTカメラ「Qwatch」

Raspberry Piも幅広い提案をしていく

 こうした動きに加えて新たに開始するのが、Raspberry Piの展開だ。同社では、Embest Technologyと国内販売代理店契約を結び、第1弾製品として、Raspberry Piおよびオプション品など6製品を2月中旬から発売。その後、スターターキットを発売するほか、企業ユーザーに対するカスタマイズやOEMの要求にも応えていくという。

 「次のステップとして、Raspberry Piをアイ・オー・データ機器の製品に組み込んだり、教育機関などへの展開を視野に入れながら、Raspberry Piのコミュニティー支援にも取り組む」(アイ・オー・データ機器 事業戦略本部企画部・平林 朗副部長)としている。

 細野社長は「Raspberry Piでもさまざまな展開をしていきたい。Raspberry Piの周辺機器はあるのだが、誰も保証してくれないというものが多い。それが、企業ユーザーには課題となっていた。こういう分野に対しても、これまでの周辺機器メーカーとしてのノウハウを活用して展開していくことになる。今後、この分野に参入するメーカーは増えていくだろう。我々も様子見をしているのではなく、ここでスタートすべきと考えた。だが、ボードを売ることがビジネスではなく、組み込み系技術者などに対して、幅広い提案をしていくことに主眼を置きたい」としている。

ラインアップを揃えたRaspberry pi製品群

 細野社長は「アイ・オー・データ機器は、いままでの延長線上のビジネスもあるが、新たな挑戦にも取り組んでいきたい」と意欲をみせる。

 そして「いまはパソコンの周辺機器メーカーであり、スマホの周辺機器メーカーであり、IoTの周辺機器メーカーである。だが、これらを組み合わせることで、コネクティブを軸にしたソリューション型の企業へと枠を広げることができる」とも語る。

 創業41年目を迎えたアイ・オー・データ機器は、コネクィブをキーワードに新たな方向へと、事業の歩みを進み始めているようだ。

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