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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第394回

業界に痕跡を残して消えたメーカー アナログモデム専業のU.S.Robotics

2017年02月13日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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業績が極めて順調なゆえに
3Comに買収される

 このあたりで会社の動向に目を向けると、U.S.Roboticsは1989年に英国のMiracom Technology, Ltdを買収し、これをU.S.Robortics Ltd. UKとして再編し、ヨーロッパ向けの製造販売拠点としている。

 さらに1991年にはU.S. Robotics, s.a.をヨーロッパの新しい拠点として設立、1993年にはIBM-PC互換のPC/ワークステーションの設計と製造を手がける,P.N.B., s.a.を買収している。

 1995年には、日本でも有名だったカード型モデムメーカーのMegahertzのほか、ISDN SystemやPalm Computingをやはり買収により傘下におさめている。この原資となったのは1991年に行なった株式上場で、2830万ドルを獲得している。

 モデム専業メーカーでここまで株式が評価されるのもなかなかであるが、そのベースとなったのは好調な業績である。古い有価証券報告書が見つからなかったので1997年のものベースになるが、以下のように極めて順調に売上を伸ばしているのがわかる。

U.S. Roboticsの売上と営業利益
年号 売上 営業利益
1992年 1億2968万ドル 1186万ドル
1993年 2億4265万ドル 2412万ドル
1994年 4億9908万ドル 3612万ドル
1995年 8億8935万ドル 6595万ドル
1996年 19億7751万ドル 1億7002万ドル

 実際、1994年頃の数字で言うと、モデム市場全体では8.3%のシェアで、業界3位というポジションでしかないのだが、V.34などの高速モデムに限って言えば43%ものシェアを取って、ぶっちぎりでNo.1であった。

 売上もさることながら営業利益をきちんと出しているのは、利益率の高いCourierシリーズが好調だったことが大きい。また企業ユーザー向けの製品として、Courier以外にLANのソリューションや、Total Controlと呼ばれるアナログ/デジタルWANハブなども提供しており、これらも利益率を高めることに貢献していた。

 このように意気揚々としていたU.S.Roboticsだが、1997年6月に3Comに株式交換の形で買収されてしまう。これはもっぱら3Com側の事情によるものだ。

 3Comは当時Ciscoに続く業界No.2のネットワーク機器ベンダーのポジションにいたが、アナログモデムに関しては製品ラインが欠落しており、これをU.S.Roboticsのポートフォリオで埋めよう、と考えたわけだ。

 買収総額はおよそ85億ドル相当になり、この買収で3Comは売上げ55億ドル、従業員数13000人の巨大企業になった。

 ただこの買収は結果から言えばあまり効果がなかった。というのはアナログモデムのビジネスはこのあたりがピークで、この後だんだん縮小していったからだ。

 2000年に行なわれた3Comのリストラ策の一環として、3Comのアナログモデム部門は、台湾のAccton Technology CorporationとシンガポールのNatSteel Electronics Ltd.の2社とジョイントベンチャーを組む形で、再びU.S.Roboticsの名前で3Comから分離経営することになる。

 この新U.S.RoboticsはV.92モデムやDSLモデムの開発などを始めるが、2001年にNatSteelを買収したSolectron Inc.がこの新U.S.Roboticsの株式を2002年に買収するものの、2004年に経営陣にこの株式を売却する。

 一種のMBO(Managent Buy Out:経営陣買収)ということなのだろうが、非上場企業となった新U.S.Roboticsは2005年にファンドによって再び買収され、さらに2013年にはUNICOM Globalに売却される

 現在もこの新U.S.Roboticsは、UNICOM Globalの傘下でさまざまなモデムの開発と販売を行なっている。

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