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消費者の手元にどう商品を届ける?流通「最後の一歩」争奪戦

2017年02月09日 06時00分更新

文● 森山真二[流通ジャーナリスト](ダイヤモンド・オンライン

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アマゾンで購入したタイヤなどの取り付けサービスが一部のエッソのガソリンスタンドで受けられる(写真はイメージです) Photo by Kazuhiko Hosokawa

ラストワンマイル市場を押さえろ――。「物流の最終拠点」から「消費者の手元」まで、どのように商品を届けるか。この「最後の部分」を巡るビジネスがラストワンマイル市場だ。ネット通販大手のアマゾンなどが先駆的にラストワンマイル市場の仕組み構築を目指しているが、今後、流通業は皆、避けて通れない道である。「ラストワンマイルを制する流通業こそが、市場を制する」という見方がある。市場争奪戦は静かに始まっている。(流通ジャーナリスト 森山真二)

アマゾンの通販で購入したタイヤを
ガソリンスタンドで取り付ける

 米アマゾン・ドット・コムはラストワンマイル市場開拓に熱心な企業だ。すでにドローンで宅配の実験をしているが、そんなアマゾンが日本でもラストワンマイル市場をめぐって、先手を打ち始めている。東燃ゼネラルと提携、3月からアマゾンの通販サイトで購入したタイヤやバッテリーなどの取り付けサービスを、東燃ゼネラル石油のサービスステーション(SS)で始める。

「エッソ」ブランドを展開する系列のサービスステーションのうち、傷やへこみなどの修理、また車検や車体のコーディングなどを実施するなどのサービス業務を行う「ドライバーズリンク」実施店約1200店のうちの一部店舗から展開する。店舗は今後、順次拡大を目指す。

 これは最近、ネット通販で低価格のタイヤを購入する消費者も増えていることに対応したもの。ガソリン販売に加えて、物販やリペアサービスなどの収入を拡大したいSSという拠点に着目した格好だ。

 実はアマゾンは、すでにこのサービスをカー用品の販売が本業のオートバックスセブンなどでも展開している。ラストワンマイルはどこで、どう商品を受け取るかが肝となる。この「アマゾン方式」を取れば、流通業のホームセンターや家電量販店などの流通業が、アマゾンの販路に化ける可能性がある。

 つまり店舗を持たないアマゾンは、スーパーやコンビニではない店舗、異業種など消費者の身近にある拠点を使って、ラストワンマイルへのアプローチを始めたといえるのだ。

企業などに「販路」を確保する
オフィスグリコ、ヤクルト

 菓子をどういった手段、どういう形で販売するかに、ラストワンマイルの発想を取り込んだのがオフィスグリコだ。まるで富山の置き薬と同じ手段で、オフィスの需要を獲得した。

 そもそもナショナルブランド(NB)の菓子といえば、スーパーやコンビニといった販路が一般的である。会社で就労時間中に菓子が食べたいと思えば、「持ち場」を離れるしかないし、コンビニやスーパーといった店舗が近くにない企業もある。

オフィスグリコ専用の「リフレッシュボックス」。自分でお金を入れて購入する Photo by Takeshi Yamamoto

 江崎グリコはこの職場の“小腹空いた需要”に着目し、富山の置き薬と同じ販売手法で菓子販売を始めた。オフィスグリコ専用の小型の「リフレッシュボックス」と呼ぶ、小箱をオフィスに置いてもらう仕組みだ。ボックスの中のお菓子は無人販売である。中にはグリコのチョコレートや焼き菓子など複数の種類が入っており、購入の際は、貯金箱のようなところに100円を入れて購入する。

 2002年に東京に進出して本格的な展開を開始。当時は1万2000台、3億円程度の売上高だったが、15年度にはオフィスや工場など11万事業所にボックス13万台を設置。販売センターも都内のオフィスビルが集中し、ボックスのドミナント体制がとれる虎ノ門、品川などにきめ細かく設けた。その結果、現在は年間の売上高は53億円のビジネスに成長している。

 オフィス街を歩けば、「オフィスグリコ」の押し車や販売員が定期的に企業を巡回し、商品を補充したり代金を回収したりする光景がしばしば見られるだろう。

 最近はリフレッシュボックスも多様化している。100円だけでなく、150円、200円の菓子専用ボックスやカップスープ・カップメン専用ボックス、ドリップのコーヒーが入れられるコーヒーマシンもある。さらに、夏場の需要に対応して冷凍冷蔵庫などをそろえており、オフィスなどでの「小腹ニーズ」に対応している。

 オフィスグリコに可能性を感じるのは、すでに11万社という企業に入っているという実績である。オフィスにグリコ商品の専用販路を持っているも同然で 、例えば定期的に巡回するサービススタッフを通じて、菓子だけでなく、まったく違う商品やサービスをアプローチできるところだ。

 オフィスグリコでは今のところ、菓子以外の商品のアプローチなどを展開している気配はないが、今後、巡回するサービススタッフが種々のサービスや取り次ぎ機能などを提案することも可能だ。

 ラストワンマイルを押さえた企業の強いところは、この機能を使って他ぼ商品やサービスを売れることにある。例えばヤクルトはヤクルトレディがヤクルトを巡回販売しているが、今ではヤクルトだけではない。化粧品から、食品などとカテゴリーは広がっている。

インターネットと融合した
スマートロッカー

 こんな光景は、近い将来夢ではない。

 20○○年のある日。都内に在住の会社員のAさんはコンビニに立ち寄って、設置してあるロッカーから依頼していたスーツのクリーニング品と、ネット通販で頼んでおいた商品を受け取り帰宅した。

 コンビニやスーパー内のロッカー設置はすでに始まっており、珍しいことではないだろう。ただし、もっと進化して、これからはロッカーがインターネットとつながって有機的に機能する時代がやってくるかもしれない。

 事実、実用化に向けて準備が進んでいる。この「スマートロッカー」を展開しているのがウエブスペース(東京都八王子市)だ。今までのロッカーといえば預ける機能しかなかった。自分で荷物を入れて、自分で出す自己完結型。つまり、保管の機能が中心だったが、スマートロッカーはネットに接続することで、あらゆる小売り業者とつながり、しかも決済までできるのが特徴である。

 すでにウエブスペースでは、駅やコンビニ、マンションやオフィスなどとつながった実験を始めている。

 ロッカーがネットとつながることで、利用者は時間に縛られず、商品を受けとることができる。しかも、指定された場所で受け取りができるのも強みだ。

 例えば、ロッカーがインフラとしてコンビニやスーパーなど、あらゆる場所に設置されれば、将来的には旅行先で購入したお土産、出張先で不要になった書類などをロッカーに預け、宅配業者が受け取り、それを指定した会社や自宅に宅配してもらうような利用方法もできる。

 スマートフォンの操作で済むため伝票を書き込むという作業は基本不要だし、決済もその場でできる。迅速性、利便性は高まるはずだ。

ネット注文品を無料配送する
酒類販売のカクヤス

 酒類販売のカクヤス(東京都北区)もラストワンマイル市場に取り組む企業だろう。同社は、都内23区内に半径1.2kmの場所ごとに店舗を置き、ネットなどで注文を受けて無料で宅配している。

 まさにラストワンマイルの発想だが、同社は酒類だけでなく、事務用品や花、業務用食材など、取り扱い商品を広げている。

 物流の最終拠点から、いかに消費者に効率的、効果的に商品を届けるか。それがラストワンマイル。ただ、まだこの市場は未開拓の市場である。今後は例えばアマゾンがSSと組んでカー用品の取り付けサービスを始めたように、何かと何かを組み合わせて新市場、新サービスを構築することが流通業界を大きく変えるかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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