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日本のモノづくり手法、大手からベンチャーにシャープ新施策

2017年02月06日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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スマートロックのtsumugが参加

 これまでに2016年7月のプレ合宿、2016年11月には1回目のモノづくりブートキャンプを開催。それぞれ4社、5社のスタートアップ企業が参加。10日間の研修を合宿形式で受けた。

2016年11月に開催されたモノづくりブートキャンプの様子

 そこに参加した1社が、tsumugである。同社は、賃貸物件向けスマートロック「SharingKey ForRent」を開発するスタートアップ企業で、先頃、さくらインターネットと、アパマンショップホールディングスのグループ会社であるシステムソフトとの合弁会社であるS2iとの協業を発表。今後、賃貸物件における空室時の防犯対策や仲介業務における貸鍵業務の軽減、民泊など短期賃貸の用途などに利用していくことになる。

 7月のプレ合宿に参加したtsumugの牧田恵里CEO&Presidentは、「モノづくりに入る段階で、工場で使われている言葉が理解できないことに戸惑った。たとえば、金型を作るまでにはどんな段階があるのか、あるいは、この工場では、どこまでをやってくれて、どこまでをやってくれないのか、こちらでどこまでやればいいのかといったこともわからなかった」と振り返る。

 モノづくりブートキャンプでは、こうした工場とのやりとりの際に、スタートアップ企業はどんな姿勢で臨むべきか、なにをすべきかといったことも、現場の技術者の経験をもとに伝授するという。

 「90分の講義時間では質問が終わらずに、30分以上延長してしまったこともあった」と、牧田CEO&Presidentは、モノづくりブートキャンプの現場が、白熱した学習環境になっていることを明かす。

 現在、tsumugでは、2017年春の事業化に向けて、量産を直前に控えている。同社では、SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットで提供されるもうひとつのプログラムである「量産アクセラレーションプログラム」を活用。これによって、迅速な量産化フェーズへの移行などを進めているところだ。

量産化に必要な試作、立ち上げ、品質管理などのサポートも

 量産アクセラレーションプログラムは、有償で提供されているサービスで、量産化に向けて必要とされる商品仕様の決定から工場選定、量産試作、量産立ち上げ、品質/信頼性検査、出荷、アフターサービスまでをサポートする。シャープや鴻海グループ以外の生産拠点を活用した場合にも、シャープが全面的に支援。シャープの社員が、他社工場での量産立ち上げ時にも現場に赴いて、同プログラムに参加するスタートアップ企業を支援する。

 基本的には、モノづくりブートキャンプの講師を務めている技術者が、量産アクセラレーションプログラムにおいても、スタートアップ企業を支援することになるが、自らの本業を持っていながらも、参加企業をサポートする体制を確立している点には驚きだ。これは、この事業が、研究開発事業本部だけの推進体制ではなく、シャープ全社をあげて、推進していることの証だといえよう。

 現在、tsumugのほかに、IoT技術を活用した次世代型医療システムを開発しているArblet、足の動きへの反応を自由にデザインできるスマートフットウェア「Orphe」を開発しているno new folk studioが、量産アクセレーションプログラムの契約を完了したという。

モノづくりブートキャンプで要求仕様書を仕上げる個別研修の様子

 そして、2月13日からは、第2回目のモノづくりブートキャンプが、シャープ天理総合開発センターで実施され、4社が参加するという。申し込みはこれ以外にもあったというが、各社の製品開発スケジュールなどを考慮して、次回参加に調整した企業もあったという。今後、3カ月に1回のペースで、モノづくりブートキャンプを実施していく予定だという。

 シャープが初めて挑んだスタートアップ企業支援制度は、まずは、順調な滑り出しを見せているようだ。これも鴻海傘下ならではの新たな取り組みのひとつとえそうだ。

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