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サラウンド音響をPCやゲーム機で手軽に楽しむ! 第1回

Windows 10音声をサラウンド化するDolby Atmosって何?

2017年01月30日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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PCの場合はヘッドフォンで楽しむのが基本?

モバイル機器でも採用例が目立つDolby Atmos。左はDolby Atmos対応の「Lenovo TAB3」、右はZTEのフラッグシップスマホ「AXON 7」

 Windows 10やXbox OneのDolby Atmos対応はまだ先なので、これらはあくまでも筆者の予想となるが、HDMI出力からのDolby Atmos信号の出力はCPU負荷も大きいため、スペック要求が高くなる可能性や、HDMI出力を持つグラフィックボードなどの追加が必要になる可能性はある。これでは、モバイル用のノートPCなどでは対応が難しい。

 そこで浮上してくるのが、“ヘッドフォン向けDolby Atmos”(Dolby Atmos For Headphone)という技術。これは、Dolby Atmosの立体音響をヘッドフォン再生で実現するもの。

 HRTF(頭部伝達関数)により2チャンネル再生のヘッドフォンで仮想的に前後左右+高さの音を再現する。バーチャルサラウンド技術を併用したものと考えていい。

 これは、「OverWatch」というゲームのPC版ですでに採用されている。PCのヘッドフォン出力に手持ちのヘッドフォンを接続すれば、Dolby Atmosの音響が再現されるというもので、ヘッドフォンも対応モデルのような特別なものは必要ない。

 これならば、ほとんどのWindow 10マシンで対応が可能だろう。ただし、HDMI音声出力からはDolby Atmos(Dolby TrueHD音声信号)が出力されることはなく、AVアンプなどとつないでも本来のサラウンド効果は得られない。あくまでもヘッドフォン視聴のための技術だ。

 実際にDolby Atmosか、ヘッドフォン向けDolby Atmosか、Windows 10でサポートされるのがどちらかは現状では不明。

 筆者の予想としてはヘッドフォン向けDolby Atmosのサポート、あるいは両方のサポートとなるような気がしている。

ヘッドフォン向けDolby Atmosを一足先に体験できる!

ヘッドフォン向けDolby Atmosを体験できるアプリ。ただし、Windowsインサイダープログラムに参加する必要がある

ヘッドフォン向けDolby Atmosを体験できるアプリ。ただし、Windowsインサイダープログラムに参加する必要がある

 ヘッドフォン向けDolby Atmosは、ユーザーにとってのコスト負担も少なく、多くの人にとってはアップデートが待ち遠しいものとなるだろう。実は、このための体験アプリがWindowsストアで用意されている。

 このアプリを利用するためには、Windows Insider Previewが必要で、Windows Insider Preview Programに参加しなければならない。

 参加自体は決して難しいものではなく、素人でもできるが、公式にリリースされる前のテスト版をダウンロードするためにさまざまな不具合が生じる可能性はある。

 それでも構わないという人、そんな場合でも問題を解決できるスキルのある人という条件は付く。興味のある人はぜひとも参加してみよう。

「Lenovo Legion Y720」

「Lenovo Legion Y720」

 あるいは、レノボが立ち上げたゲーミングPCブランド「Legion」の「Y720」は、いちはやくDolby Atmos(ヘッドフォン用と思われる)に対応したノートPCだ。

 ゲーミング仕様だからスペックもかなりハイスペックだ。Windows 10の正式対応よりも早くDolby Atmosを体験できるだろう。

Dolby Atmosが盛り上がる一方で、DTS陣営はどうなのか?

「DTS:X」のロゴ

「DTS:X」のロゴ

 Dolby Atmosと同じレンダリング方式を採用した最新のサラウンド方式には、実は「DTS:X」というものもある。

 基本的に考え方は同じで、AVアンプなどのサラウンドシステムでは、Dolby AtmosとDTS:Xの両方に対応するのが当たり前となっている。こちらは今のところはWindows 10やXbox Oneでの対応というニュースはない。

「DTS headphone:X」に対応し、実売2000円前後という価格ながらサラウンドを楽しめるパナソニックのイヤフォン「RP-HJC260」なのだが……

「DTS headphone:X」に対応し、実売2000円前後という価格ながらサラウンドを楽しめるパナソニックのイヤフォン「RP-HJC260」なのだが……

DTS headphone:Xのサービスやスマホアプリはもうすぐ終了となる

DTS headphone:Xのサービスやスマホアプリはもうすぐ終了となる

 しかし、DTSにも「DTS headphone:X」という技術がある。これもバーチャルサラウンド技術を組み合わせ、ヘッドフォンで高さ方向を含めた11.1chの再生が可能という技術。

 数年前にWindowsのゲームなどで採用されたほか、スマホアプリも提供されていたのだが、スマホアプリの方は今年の5月でサポート終了となる予定。

 このため、最新の状況がどうなっていくはやや不透明だ。DolbyとDTSは映画のサラウンド音声ではライバル関係にもあるので、Dolby Atmosと同じようにPCやゲームの分野にも本格的な参入を期待したいところ。

 ついでと言ってはなんだが、「プレイステーション4」にも頑張っていただきたいところ。ハードの仕様上なのかゲームの音声もBDの再生もリニアPCMサラウンド出力が基本で、Dolby Digitalへの変換出力が可能だが、BD再生時でもDolby TrueHD音声のビットストリーム出力はできない。

 そのうえ、「Xbox One S」がUHD BD対応を果たしたのに、「プレイステーション4 Pro」はUHD BD非対応であり、オーディオ再生能力においてはかなり水を空けられてしまった感がある。

 UHD BD(というか4Kコンテンツ)は配信でもかまわないかもしれないが、ゲームの音声が平面的な5.1/7.1ch出力のままか、Dolby Atmosのような立体音響となるのか差は大きい。

 DTS陣営、プレイステーション陣営ともに、巻き返しを図ってほしいところだ。

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