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さくらの熱量チャレンジ 第11回

コミュニケーションロボットを手がけるユニロボットと高火力コンピューティング

会話できるロボット「ユニボ」は大量の計算資源でその役割を果たせる

2016年12月14日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ユニボはあくまで汎用的なプラットフォーム

オオタニ:ビジネス的にはいわゆるB2Cで、個人ユーザーがターゲットなんですか?

前田: USENグループの子会社であるアルメックスさんと資本提携したこともあり、ホテルや総合病院の受付等でユニボを使うといったB2Bの展開も視野に入れて動いています。

もともと弊社はユニボを使って、プラットフォーム事業をしようと考えています。だから、弊社が作るのは最低限の基本機能。あくまで汎用的なロボットを作って、みなさんにはSDKを提供して、カスタマイズしてもらおうと思っています。あとは、スマホアプリのように「スキル」をダウンロードしてもらって、ユニボに装備してもらうようなことも考えています。

ユニボを使ってプラットフォーム事業をしようと考えています(前田氏)

オオタニ:なるほど。ユニロボット自体はハードウェア、最低限の機能セット、SDKを提供するという立場で、ユーザーが自分のユニボを作れるわけですね。

前田:そうですね。ユニボ自体にSDKが入っていますし、そもそもSDKといっても、ターゲットは小学生目線で作っています。購入されたお客様のお子さんでも「スキル」を作れるようになっています。サードパーティの業者に頼まなくても、ScratchのようにGUIの画面でコマンドをワイヤーでつないで、フロー制御を行なえるので、「いらっしゃいませ、こんにちは!」くらいだったら、簡単に作れます。言語を使う場合も基本はJavaScriptなので、開発コストは大きく削減できると思います。

オオタニ:これはうがった見方の質問ですが、ディープラーニングの技術自体をビジネスにするという方向性もあったわけですよね。たとえば、チャットボットを作るとか。なぜ、ロボットを作ったのですか?

前田:やはり、創業者の思いもあり、家庭内で使えるようなロボットを作るのが先にありました。スキルパックや、SDKは後から付いてきた感じです。AIに関しても、日常会話を行なうには、既存のパターンマッチングで作られたシナリオだけでは限界があるよねという課題感から生まれたものです。

そもそもAIのすごさを評価するのは難しい。でも、すごさがわからないと、出資等にもつながらないですよね。ユニボという動くロボットがあり、プラットフォーム構想があり、SDKやスキルマーケットの構想があって、はじめてサービスとして一連の流れが作れたんです。

オオタニ:なるほど。ロボット単体で注目を集めているわけではないんですね。

前田:あと、チャットボットの世界はあくまでテキストですよね。でも、会話だと同じ「ありがとう」でも感情値が異なってきます。そういうのも弊社では収集していって、本人が考えているところを読み取っていきたいのです。そのためには、人と人と同じように、その人を見て、会話以外の情報を読み取っていかないと行けないと思います。

クラウドと連携するユニボのハードウェアと通信機能

オオタニ:次にハードウェア面について見てみたいのですが、顔が液晶画面になっているんですね。

前田:はい。そこにいろんな情報を映し出すことが可能です。B2Bのお客様であれば、広告やお知らせを出すことができます。

オオタニ:脳みそ的なところはクラウド側で持つということで、ユニボ本体は比較的なシンプルな作りなんでしょうか?

前田:そうですね。ロボットとしては、各種のセンサーやLED、個人を識別するためのカメラ、腕や首の駆動系、そしてこれらを制御する「コンダクターエンジン」の一部を搭載しています。コンダクターエンジンの一部はクラウド側にあるというイメージですかね。

オオタニ:通信機能はどんな感じなんでしょうか?

前田:有線LANと無線LAN、Bluetoothを用意しています。有線LANはB2Bの領域で安定性を求めるお客様もいるので急遽入れました。バッテリがあるので、ACアダプタを外しても基本的に1時間くらいは持ちます。あとは腕が外れるので、IoTのデバイスを取り付けるということも今後の展開に入っています。

オオタニ:現状は有線・無線LAN前提なんですね。先日、攻殻機動隊リアライズプロジェクトで、無線LANの設定はロボットのユーザーにやらせたくないという話もありました。安価な通信モジュールが使えるさくらのIoT Platformのような選択肢もあると思うのですが。

前田: SIMを入れるのは考えたのですが、音声データがバンバンあがるので、通信の帯域をかなり使ってしまいます。その点、センサーデータを少しずつ送るようなIoTと違って、現時点ではコスト的に見合わないなと考えています。だから、現状は設定の入ったQRコードをユニボに読ませるという方法を使います。理想としては、やはりSIM入れて、開けたらすぐに使えるというのを実現させたいのですけどね。

高火力コンピューティングにはもっとハイスペックを期待したい

オオタニ:次に、さくらインターネットとの関わりについて教えてください。

前田:以前、ユニボの機械学習を行なうためのサーバーをどこに置こうかという話を考えていて、AWSやAzureなどのクラウドベンダーに問い合わせたのですが、弊社のような使い方をすると自分たちの目指している想定より高価になりそうでしたので、断念しました。分析した結果、自分たちでデータセンターを持たないと厳しいかなと思って、GPGPUを用意しているデータセンターを持っているさくらインターネットさんに問い合わせました。そうしたら、高火力コンピューティングやIoTのサービスを紹介されたのです。

オオタニ:当時はまだサービス開発中という段階ですよね。

前田:とりあえずはユーザーというより、トライアルで使わせていただいたという感じでしたね。機械学習のパフォーマンスを上げるために使いました。量産前の開発に注力していて、現在は使ってないのですけど。

オオタニ:製品として出てきたら、継続的に使うイメージなんでしょうか?

前田:そうですね。継続的な機械学習のためにヘビーに動かしていくと思います。ただ、弊社のAIエンジンはかなり処理能力が必要。学習モデルも複数あるので、並列処理も必要になりますし、ユーザーの趣味趣向のデータはリアルタイムに入ってきますので、別のモデルとして処理する必要があります。本サービスが軌道に乗ったら、劇的な処理能力の向上を進めたいので、高火力のスペックは高ければ高いほどありがたいです。

オオタニ:話を聞けば聞くほど、計算能力が必要な感じがしますよね。私もいろいろなところで発表会に行くと、CPUの処理能力が劇的に上がっていてその恩恵は大きいという話の一方、機械学習の分野のように計算機リソースがいくらあっても足りませんという分野もありますよね。

前田:そうですね。一応、弊社にもリソースはあるのですが、非力なのです。ユーザーが増えれば、インフラにも投資できるのですが、なにしろまだリリース前なので。だから、高火力をいつ使えるのかのタイミングが来るかというのと、学習に見合ったスペックのマシンが出てくるかどうかを見計らっている感じです。

いずれにせよ、高火力コンピューティングは本当に魅力的なものだと思っていますので、うまく使いたいなあと考えています。今後、さくらインターネットさんとはユーザーとしてではなく、協業というスキームもありえます。高火力コンピューティングという分野だけではなく、IoTの分野でもいろいろなことができると思いますので。

オオタニ:現状のステータスと今後の予定について教えてください。

前田:ユニボ自体は現在量産前の最終調整中で、来年にリリースの予定です。開発者には先行して、1~2月くらいにお出ししたいと考えています。

オオタニ:期待しています!

(提供:さくらインターネット)

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