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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第384回

業界に痕跡を残して消えたメーカー 買収先が行方不明になったチップセット会社Corollary

2016年11月28日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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多くの企業に採用された先進的なチップセット
C-Bus II

 C-Bus IIは64bit幅で、バス帯域は400MB/秒となっているので、バスクロックは50MHzほどになる計算だ。おそらくは共有バス方式を取っており、1つのC-Bus IIに最大4つまでプロセッサーを搭載できる。このC-Bus II同士を最大4本まで1つのシステム内で接続できる構成になっていたと思われる。

 またPentiumそのものはBusにECCが出ていないが、C-Bus IIはバス自身にECCのサポートが付き、またメモリーもECC付きを標準でサポートしている。

 さらにC-Bus IIには192Byteと非常に小さいながら高速なキャッシュが搭載され、これは排他的キャッシュ(Victim Cacheとも呼ばれるが、AMDがK8世代で使っていたアレだ)構成で、システムから見ると3次キャッシュとして動作した。

 メモリーはシステム全体で3GBまでサポートしており、バスプロトコルはライトバック方式のキャッシュコヒーレンシをサポートするという、なかなか先進的な構成であった。おまけにバスの電気的特性としては、P6バスよりも早くGTL(Gunning Transceiver Logic)を採用している。

 GTL自身は、XeroxのWilliam Gunning氏が1991年に開発したもので、JEDEC標準にもなっている規格であるが、早くからこれを採用したことの意義は大きい。ちなみにP6バスには、このGTLを改良したGTL+(改良を行なったのはFairchild Semiconductor)が採用されている。

 特徴的なのはこのC-Bus IIは、SCSI/PCI/EISA/MCAの各バスとのI/Fをサポートしていることである。PCI/EISA/MCAはわかるのだが、直接SCSIへのバスブリッジが出るインターコネクトというのは、筆者は初めて見る。

 またOSとしてはIBMのOS/2 SMP、Windows NT Server、Novell Netware、SCO Unix Ware、SCO UNIX/SCO MPX、Sun Solarisがサポートされており、すべてのOS環境でSMP構成を利用可能だった。

 このC-Bus IIは、3種類のライセンス形態があった。1つは完全にカスタマーが自作する場合で、この場合500ドル払うだけで完全なバスプロトコルの仕様書を入手できた。

 もう少し楽をしたいという場合、Corollaryが提供するC-bus II ASIC(SIMPL Chipset)を購入し、これでシステムを構築できた。このC-Bus II ASICにはCBC(Cache Bus Controller)、DPX(Data Path Exchange)、PCIB(PCI Bridge)、CMC(Cache Bus Memory Controller)の4種類から構成されている。

 もっと楽をしたければ、C-Bus II Board Level Productと呼ばれるボードも同社は提供した。CBII/6000という型番の製品があったことはわかっているのだが、こちらの具体的な構成や写真などはついに手に入らなかった。

 ただ通常サーバーメーカーは、2番目のチップセットを購入して自社でサーバーを組み上げる選択をした。代表例の1つは、IBMが1996年に発表したPC Server 720であろう。このマシンはPentium 166MHzを最大6Pで構成できるというもので、タワー型のシャーシに最大6枚のプロセッサカードと7枚の拡張カードを搭載できた。

PC Server 720のシステム構成。一見普通のミドルタワーに見えるが、寸法は353(W)×755(D)×622(H)mmと一回り大きく、HDDを1台入れた状態の最小構成の重量は31.3Kgだったそうだ

PC Server 720のバックプレーン構成。左下がCPU/メモリー用のスロットで、Slot 2がプライマリのプロセッサー/メモリーカード、Slot 1が拡張メモリカード、Slot 3~7が拡張CPUカードとなっている

 肝心のプロセッサーカードが、下の画像だ。微妙に2枚のカードで配置が異なるが、76H3545と76H3248という2種類のカードがあったようで、下のカラー画像が76H3545、モノクロ画像が76H3428なのではないかと思われる。

画像は不鮮明だが、ヒートシンクの下にPentium 166MHzが隠されており、下側のカードエッジの傍にCorollaryのチップが並んでいるのがわかる

こちらはモノクロだが、多少画像は鮮明になっている。チップセットは左からDPXが2つ並び、その横にCBCがいる。CPUとの間に並んだチップは、キャッシュとかではなくCPLDかなにかのようだ

 このC-Bus II製品は結構なヒットになり、Data General、富士通、日立、IBM、Intergraph、NEC、Olivetti、CHEN Systems(連載346回に出てきたSteve Chen博士の会社だ)、Samsung Electronicsといった多くの企業に採用されるに至る。

 ちなみにC-Bus IIは上に書いたように最大16プロセッサーまでサポートしていたが、実際に販売された構成は8プロセッサーが最上位だったようだ。

 Data GeneralのAViiON Enterprise Servers model 5800やNEC Express 5800/170などいくつかの採用例はあるが、これを超える規模はそろそろ共有メモリー方式では厳しいという判断だったらしい。この教訓は続くProfusionに生かされることになる。

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