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世界9カ所のイノベーションセンターをハブに、スタートアップや企業とのエコシステム構築

“老舗”シスコに新たな息吹を、イノベーション戦略担当役員

2016年10月27日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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自社開発や買収だけではない、外部のすぐれたイノベーションの取り込み方

――ところで、イノベーションは社内だけで生まれるわけでありませんよね。実際、シスコはこれまで多くの企業買収を行ってきました。

アンチューンズ氏: シスコはこれまで累計で190社を買収してきている。各事業グループの技術ギャップを埋めるために有効な手段だ。

 ただし現在のシスコは、イノベーション戦略を「5つの柱」で考えている。古くから行ってきたのは「自社開発(Build)」や「買収(Buy)」だが、最近ではそれらに加えて「提携(Partner)」や「投資(Invest)」、「共同開発(Co-Develop)」にも積極的に取り組んでいる。

シスコのイノベーション「5つの柱」

 “ビジネスのデジタル化”時代に突入し、イノベーションもますます加速する今日の市場においては、すべてを自社開発や買収だけでまかなうというアプローチは難しい。そこで、先進的なテクノロジーにはより早期から投資したり、イノベーションセンターを通じてローカルパートナーとの共同開発を推進したりしている。

 もっとも、自社開発や買収というアプローチも、これまでと変わらず重視している。シスコは、ハイテク企業としては最大規模の年間60億ドルをR&Dに投資し、2万8000人規模のエンジニアリンググループを抱えている。つまり、時代の変化によって、アプローチにダイバシティ(多様性)が必要になっているわけだ。

――外部のイノベーションを取り入れるために、スタートアップを対象としたコンテストも開催していますね。

アンチューンズ氏: 投資/パートナー対象となるスタートアップの発掘を目的とした、グローバルなイノベーションコンテスト「Innovation Grand Challenge」も毎年開催している。賞金総額は25万ドルで、3年目となる今年は100カ国以上の5000社超から応募があった。11月には優勝者を発表する。

 社内コンテストと同様に、こちらもすぐれたイノベーションに対しては、賞金の授与だけでなくイノベーションセンターにおけるインキュベーション、シスコからの投資、シスコ事業部門へのアプローチ機会、シスコのチャネル経由での市場投入といった、幅広い特典が受けられる。ほかのコンテストに見られるような、優勝したときだけ少し話題になっておしまい、というものではなく、さまざまなかたちで優秀なスタートアップが軌道に乗るための機会を提供している。賞金額を何倍も上回るようなメリットがあるだろう。

――まだ3年目とのことですが、Innovation Grand Challengeの実績はどうですか。

アンチューンズ氏: 2014年の同コンテストで優勝した、IoT開発支援ツールを提供するドイツのRelayr(リレイヤー)が良い例だ。優勝後、シスコがRelayrに対して投資を行い、共同で開発も進めている。現在では、シスコのソリューションにもRelayr製品が組み込まれている。

2013年創業のスタートアップ、Relayrのサクセスストーリー

今井氏: これまで日本ではあまり告知してこなかったこともあって、日本のスタートアップからの応募はまだ少ないのが現状。来年はもっと積極的に告知し、応募を増やしていきたいと考えている。

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