“写真”ではないかもしれないけど
筆者がこの仕事を始める前、「写真をやれ!」とカメラを買うよう進めてくれたのは須田英之さんでした。
当時、先輩は「写真は、真実を写す、と書く」ことを意識すべきだと説きました。筆者の個人的な解釈は、加工された画像とシャッターを切ったままの写真は、意味が違うということです。
このアイディアは、最近の「報道写真でRAW画像を禁止する」といった海外メディアの流れにも符合します。これはデジタル時代の「写真」の1つの考え方で、「撮った瞬間カメラで生成されるJPEG画像が写真」だよね、ということです。
そこで考えると、iPhone 7 Plusのポートレートモードは、どう解釈すべきでしょうか。シャッターを切った瞬間に生成されるJPEG画像であることには間違いないし、ポートレート用のレンズを使えば同じような写真をデジタルカメラで撮影することもできます。
でも、原理的には、被写体と背景を合成するような「加工」を瞬時に行っているわけで……。iPhoneのHDR写真しかりではありますが。
非常に楽観的に捕らえるとすれば、「写真で良いじゃないか」という答えで良いと思ってはおります。よりポジティブに捕らえるなら、写真を撮影するというプロセスが、テクノロジーによって進化した結果と評価することもできますし。
このポートレートモードは、iPhone 7 Plusで撮影できる“写真”の一例でしか有りません。2つのセンサーで捕らえた写真をどのように扱うか。アプリには、カメラのAPIが公開されているからです。
アプリ開発者が、iPhone 7 Plusによって、新しい”写真”の概念を作り出してしまうかもしれないとすら、思っています。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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