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業界人の《ことば》から 第210回

NECレノボ、5年目までは「100点近い成果」だった

2016年08月30日 12時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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NECパーソナルコンピュータ/レノボ・ジャパンの留目真伸社長

過去5年間は理想形

 留目社長は「過去5年間のジョイントベンチャーは理想的な形。100点近い成果があった」と振り返る。

 その理由としてあげられるのが、統合直後からシェア向上を実現してきたという点だ。多くの企業統合の場合、一時的にシェアが減少することになる。だが、NECパーソナルコンピュータとレノボ・ジャパンの場合はシェアは減少することなく、むしろシェアを拡大させてきた。

 ジョイントベンチャーの開始時に、NECパーソナルコンピュータの社長を務めていた高須英世氏は、両社の合計シェアで30%を目指すことを目標に掲げていたが、2015年度には瞬間風速として40%を突破。今後は、50%のシェア獲得さえ視野に入るほどの勢いがある。

 この背景には、両社の関係が補完関係にあったことが大きい。

 日本のユーザーの声を反映し、付加価値路線を追求するNECパーソナルコンピュータと、グローバルモデル展開を軸とし、ボリューム戦略を推進するレノボ・ジャパンの基本戦略の違いとともに、NECパーソナルコンピュータが高い評価を得ていたコールセンターに、レノボ・ジャパンのコールセンター機能を統合したり、国内生産を実現する米沢事業場においてThinkPadの生産を開始したりする一方で、NECパーソナルコンピュータは世界ナンバーワンのシェアを誇るレノボの調達力を生かして生産コストを削減。

 これを開発投資やコールセンターの強化などに反映して、競争力を高めてきた。LAVIE Hybrid ZEROシリーズやHybrid Fristaのような製品は、レノボとのジョイントベンチャーなしには登場しなかった製品だったといえるだろう。

 また販売面においても、レノボの量販店向け営業部門をNECパーソナルコンピュータの営業部門に吸収する形で一本化し、コンシューマ営業部隊を設置。本部商談に加えて、NECパーソナルコンピュータが持つ各エリアの店舗をきめ細かくフォローする営業体制を活用することで、ほかの外資系PCメーカーにはない支援体制を構築。これがレノボ製品の販売拡大に大きく寄与している。

 「事業統合は難しく、シナジーを出すまでには一定の歳月が必要だと言われるが、NECブランド製品、レノボブランド製品のいずれもがポートフォリオを拡大でき、それぞれの製品の方向性も明確にできた。利益率向上といった成果も出ている」とする。

やり残しは「共創」への取り組み

 一方で、やり残していることもあると留目社長は話す。それは「共創」への取り組みだという。

 「パーソナルコンピューティングを普及させること、あるいはIoTという世界で存在感を発揮するには、メーカー1社が縦割りで製品やサービスを作っても成り立たない。業界を超えて様々な企業と、共創することで、ユーザーの生活をサポートしたり、業務をサポートしたりできる。この取り組みはまだ緒についたばかり」とする。

 NECレノボ・ジャパングループでは、「DREAM(Digital Revolution for Empowering All Mankind)」を打ち出し、2020年を目標に日本のIT活用力を世界最高レベルにし、日本に活力を与えることを目指している。

 そのためにはPC業界以外の企業と連携しながら共創に向けた活動を加速することが必要だとし、レノボ・ジャパンでは、「digital economy council(デジタルエコノミーカウンシル=dec)」を設置し、他社との連携による「共創」を強化している。

 「レノボ・ジャパンは、IBMのPC事業をベースに成長してきた会社。そして、NECパーソナルコンピュータは、NECのPC事業を軸にしている。どちらもPC業界の発祥ともいえる生い立ちを持った会社であり、30年以上に渡る事業経験を持つ。だからこそ、新たなPCの使い方を提案していく必要がある」と留目社長。そして、「NECがやってきたことも、レノボがThinkPadを通じてやってきたことも、コモディティーを追求することではない。NECレノボ・ジャパングループが目指してきたのは、PCを普及させることではなく、パーソナルコンピューティングのパワーを、もっと普及させること。そのためには、スマホやタブレット、サーバー、そしてネットワークとのさらなる連携も必要。そこに挑戦したい」とする。

 これからの5年間については「共創をベースにしながら、個人ユース、法人ユースにおいても、コンピューティングパワーによってもたらされる新たなスタイルを提案し、それを引っ張っていくことができる会社になりたい」とする。

 6年目以降の、NECレノボ・ジャパングループは、PC業界が直面する新たな課題に挑戦することになる。

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