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中小企業の持っている技術が面白い!モノづくりの新形態「TRINUS」

オープンにモノづくりをすすめる新しいメーカー目指す

連載
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メーカーとしての実績作りは今後の課題

 とはいえ、トリナスのメーカーとしてのモノづくりは始まったばかり。現在は開発段階で、商品として販売が始まるのはこれからだ。「メーカー」としての実績作りが課題となる。

 「現在は私とCTOの二人に、アルバイトスタッフや外部協力メンバーという少人数でビジネスを進めている。いずれの商品も試作段階で、販売はこのあとから。まずはヒット作を作ることが今後の課題」(佐藤氏)

 販売にあたっては自社トリナス上でのEコマースを進め、さらに商品の特性に応じて取引先を募っていく計画だ。特色ある商品であるため、発売前ではあるものの「手応えは悪くない」と佐藤氏は話す。

 「商品の特性を伝えながら販売していくことが重要だと思っている。どこででも売るというより、商品に似合う売場を選んで、そこで売ってもらうことが、商品の性格を伝える上で大切。たとえば、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のように、『ここで売っている商品であれば、使ってみたい』と消費者が思ってもらえるような場所で、販売してもらうことを目指している。また、販売先は国内だけでなく海外も対象としていきたい。扱っている商品が、小物類かつ電気製品ではないため、法律や許諾の規制も弱いため輸出しやすい」

 現在、5つの商品を開発中で、それぞれ独自にブランド化していく計画を進めている。まずはブランドを確立し、そのブランドの下に新しい商品を開発することを予定。

 こうした展開により商品数は増えていくことになるが、「技術を作っている会社や生産を行ってもらうパートナー企業は中堅・中小企業が多いため、少数生産でも対応してもらえることが多い。たとえば、商品のひとつである100%木製ながら熱湯や乾燥に強い漆器は、10個単位から生産してもらうことができる。メーカーである我々も何万個といった大量の在庫を持つ必要がない。販売が軌道に乗れば、生産ロットをもっと多くしていくことも必要となるが、スタート段階では会社の体力に合わせ、少量生産からスタートする予定」だと佐藤氏は話す。

 商品作り、販路獲得を進めていくために、「人材を増やして、新たな技術を見つける、販路開拓といった業務を強化していく必要がある」という。

 今のところ、佐藤氏は商品化のベースとなる技術を見つけることにはあまり苦労していない。展示会などを見れば、特定用途に使われているが、他に利用すれば新しい価値を生む可能性がある技術は国内だけでも数多く存在しているからだという。

コアとなる募集テーマは、さまざまな企業が持つ技術発となる


技術を生み出した中小企業やデザイナーが有名になる方が望ましい

 トリナスは、かつてなら仕組みだけではなかなか成り立ちにくい試みだが、人とカネの部分を解決する手段が増え、ウェブ上でまかなえる時代になった証といえる。ただしモノの部分については、決して簡単にはならないが、そこは佐藤氏が築いてきたノウハウやネットワークでカバーされているのが強みとなっている。話の端々に、裏での粘り強い製作過程が見えた。

 製品の種類が増えるのはこれからで、一部はまだプロトタイプ。これから市場に出ていくなかで、いかにブラッシュアップがなされていくかが腕の見せ所だろう。花色鉛筆の削りかすが花びらの形になるといった部分は、デザイン当初時点では想定されていなかったものだが、このようなアイデアが発見・共創されていく過程にこそトリナスに期待したい価値がある。

 現時点でサイトでの募集は一時的に動いておらず、トリナス発の製品をまずは市場にまで届けるところに注力している。コンパクトな規模で、埋もれている技術をデザインで生かす仕組みが回りだせば、「モノづくりの大変さ」に縛られない自由で美しい製品が生まれてくるのではないか。

 目下手がけている商品開発をきちんと形にすることが、同社が今後も継続的にビジネスをしていくためには実現しなければならない課題である。

 「たとえば花色鉛筆については、始めてから現在までに1年半かかっている。この素材は、押出成型という製造過程で、配合などを決定するのに時間がかかった。このように価値のある商品とするためにはクオリティコントロールを行うことも必要。商品の最終責任は、我々トリナスがクオリティをコントロールし、ブランド作りに反映させていく必要がある。といっても、ビジネスが順調にまわっていくようになれば、トリナスよりも、その商品をデザインしたデザイナー、もとの技術を生み出した中小企業が有名になる方が望ましい。彼らのバックエンドがじつはトリナスだったと認知されるようになるのが理想」(佐藤氏)

 社名であるTRINUS=トリナスにはラテン語で「三位一体」の意味があり、「技術、デザイン、ユーザーニーズ」の3つと、日本語の「とりなす」という想いを込めて名付けた。

 その社名通り、技術とデザイナー、そしてユーザーニーズを仲介した新しい商品を生み出し、市場に定着させていくことができるのか、同社の取り組みは始まったばかりである。

●株式会社TRINUS
2014年11月25日設立。全国から発掘したユニークな素材・技術を特集し、それらを活用したプロダクトのデザインを募集、さらにユーザーの投票やコメントを踏まえて審査・選定し、自社製品として開発及び販売を行う『TRINUS』(トリナス)を運営。モノづくりの企画・販売、技術マッチング、コンサルティングを手掛ける。
自己資本100%で、調達などは検討中。
スタッフは2016年7月時点で5名。デザイナーや営業人材を今後は増員予定。

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