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国内導入企業が明かす「活用の心得」、OpenStack Days Tokyo 2016基調講演(前編)

JFEスチールがグループクラウドにOpenStackを採用した背景

2016年07月13日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 そこでJFEスチールでは、新たなITインフラ環境への転換を図ることを決断した。具体的には、JFEグループ内で共通利用するグループクラウドを構築し、各製造拠点に分散していたシステムをここに集約する。製造に直結するシステムであるため24時間×365日の可用性を担保し、同時に、将来を見据えたオープン技術と標準技術の採用、製造現場のビッグデータ解析基盤とすることも目標としている。

 このJFEグループの共通クラウド(グループクラウド)である「J-OSCloud」において、OpenStackが採用された。アーキテクチャとしては、セルフサービスポータル/構成管理データベース、オーケストレーター/OpenStack、そして物理リソースという、3層の独立したレイヤーで構成されている。ユーザーがポータルからリソースの払い出しを要求すれば、そのコマンドがAPI経由でオーケストレーター/OpenStackに伝わり、自動的にプロビジョニングが実行される。

OpenStackを採用したJFEスチール新ITインフラのアーキテクチャ図

 このアーキテクチャのポイントについて、渡邉氏は「当社のデータセンターにはさまざまなベンダー製のハードウェアがあるが、それをOpenStackで抽象化することで、柔軟に使えるようにしている点」だと説明する。仮想サーバーやベアメタルサーバーだけでなく、今後、コンテナ技術を導入することになっても、OpenStackを介して抽象化されていれば、ユーザー側はまったく意識することなく利用できる。

 「これまでのITインフラは、特定のベンダーに依存しており、スピード感をもって変化させることができなかった。OpenStackを使うことで、VMwareのハイパーバイザにすら依存しない、真にベンダーフリーの環境を実現できた」(渡邉氏)

OpenStackで抽象化することで、ベンダー非依存のアーキテクチャを実現した

 なおJ-OSCloudでは、使用するOpenStackのキーコンポーネントをコンピュート(Nova、Glance)、ブロックストレージ(Cinder)、ID管理(Keystone)の4つに絞り込んでいるという。必要最小限の実績のあるコンポーネントに絞り込むことで、トラブルを避けることができる。なお、サービスポータルやオーケストレーター、ストレージにはIBM製品を採用している。

災害対策(DR)のため東西データセンターを保有し、「IBM XIV」ストレージのDRソリューションも用いて可用性を担保する

 「OpenStackの採用によって、アプリケーションの『可搬性』も高まったと実感している。スピード、品質、コスト、オープン性の面で、JFEとして掲げるIT戦略を実現するためのITインフラを作り上げることができた」(渡邉氏)

 JFEスチールでは今後、グループクラウド構築とシステム統合に続いて、データベースや業務プロセスの全社一元化に取り組み、業務効率の向上やワークスタイル変革を推進していく計画を発表している(6月7日報道発表)。

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 近日公開予定の本稿後編では、次世代通信基盤でNFVを実現したNTTドコモ、社内システムをすべてOpenStack上に移行した富士通におけるOpenStack導入についてお伝えする。

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