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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 第26回

なぜクルマほしいのか、水口哲也が話す欲求を量子化する世界

2016年06月21日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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テクノロジーによって新たな可能性を見出す人間の身体性

高橋 人工知能の話が出ましたが、人工知能はやはり究極的には人間がいかに肉体から離脱していくかという方向性を持っていると思うんです。しかし、同時にというか平行して水口さんのテーマである「共感覚」的な肉体の復権、つまり、身体性の再評価といったことも起こってくるような気がしています。

 もちろん前者も興味深いんですが、エンターテインメントの未来ということを考えると後者の文脈で「テクノロジー×身体×エンターテインメント」という三位一体が重要になってくるのではないかと……。

水口 それは間違いないでしょうね。ここ数年で人間が新たな視界や視点を獲得したという意味で「GoPro」なんかはその序章だったのかもしれないけど、これがVRと融合して自分のいま見ているものを誰かと共有できたりするようになると、これはものすごいエンターテインメントになりますよね。

高橋 そういう意味で今後テクノロジーが急接近していくのは特にスポーツの分野ですよね。やるほうも観るほうも新しいエンターテインメントとしての可能性に満ちている気がします。僕も数年前から走ったり泳いだり自転車に乗ったりしてますけど、水口さんもかなり熱心にサーフィンやってますもんね。

選手の体に装着したセンサーを駆使してフェンシングのサーベルの軌跡などを視覚化した「fencing visualized project」による映像。「テクノロジー×身体×エンターテインメント」の未来を感じさせる秀逸な作品

水口 いままで人間ってちょっと我慢を強いられるようなことを楽しみに変える工夫をしてきたわけじゃない? たとえば面倒なクルマでの移動を「Fun to Drive.」みたいな気分に置き換えたりね。僕らはそういう物語の創出に加担してきたところもあるわけだけど(笑)。忙しいスケジュールの合間を縫ってがんばってニューヨークに打ち合わせに行ったりするとそれなりの充実感があったりして。

 でも、テクノロジーの発達によって無理にそういうことをしなくてもよくなっているから、これまでとは違う身体性を求め始めているということはあるかもしれませんね。クルマの自動運転なんかが一般化すればツラい運転をしなくてもよくなるわけだし、もっと別の場所に身体性を求める動きは加速するんじゃないですかね?

高橋 テクノロジーによって確実に時間の編集の仕方が変わってきているし、多くの人たちがライフスタイルやワークスタイルを見直し始めていますよね。以前この連載の中で菅付雅信さんと対談したんですが、いま水口さんと話していることと内容こそ違うんだけれども、テクノロジーが変質させた価値観や幸福感という意味ではとても通底している部分があります。

水口 ホント、僕もここ数年でライフスタイルとワークスタイルが変わりましたね。いまアメリカに会社を作って現地のスタッフと毎日やり取りをしているんだけれども、Skypeでの打ち合わせからデータの受け渡しまでなにからなにまで現地に行かずにわりとスムーズにできています。改めて本当に便利になったと思いますよね(笑)。

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