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実績と未来を見せた「AWS Summit 2016」 第3回

ゲオホールディングス、freeeも登壇した「AWS Summit Tokyo 2016」基調講演

「2週間でできた」日本電産のIoT基盤など、AWS事例多数紹介

2016年06月03日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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日本電産:試行錯誤のできるIoTビッグデータ分析基盤を2週間で構築

日本電産 常務執行役員 CIOの佐藤年成氏

 日本電産(Nidec)は、精密小型モーター、一般モーター、車載モーターなどの製造を手がける大手総合モーターメーカーだ。

 同社では、2010年から2015年にかけて「Everything goes to Cloud!」というビジョンの下、すべてのITシステムのクラウド移行を完遂した。「移行先はパブリッククラウド、プライベートクラウド、あるいは外部データセンターの(ホステッド型の)プライベートクラウドとさまざまだが、今現在、社内には1台もサーバーがない」と、同社CIOの佐藤氏は説明する。

 そして現在(2016年から2020年まで)は「Orchestration & Standardization」を旗印として、新たなIT戦略「IT Vision 2020」を推進している。あらゆる情報のデジタル化、あらゆるモノのネットワーク接続、あらゆるビジネス情報のアプリケーション間連携、リアルタイムITの実現というステップを経て、最終的には「100%のパブリッククラウド化」を目指すという。

日本電産の2016~2020年IT戦略「IT Vision 2020」。「あらゆるビジネス情報が連携し、業務改革につなげられる環境に持っていく」

 このIT Vision 2020のベースとなるのが、IoTによる製造現場からのデータ収集と分析、活用である。日本電産では、このデータの格納や分析、管理といった処理をAWSクラウドで行っている。ここでクラウドを使う理由について、佐藤氏はIoT環境をすぐに立ち上げられて、試行錯誤ができる環境だからだと説明する。

 「IoTに取り組むときには『すぐやってほしい』『とにかく始めてほしい』という声が多い。さらに、やる前から結果がわかっているわけではないので、現場では『試行錯誤が簡単に、早く、安くできる』ことが求められる。こうしたニーズに応えようとすると、従来のやり方でハードウェアとかソフトウェアから考え始めても絶対にできない。そこで、やはりクラウド活用ということになる」(佐藤氏)

IoTビッグデータ分析を通じて、これまでデータを取得していなかったものだけでなく、データを取得していながらも気づかなかった知見をも掘り起こす狙い

 佐藤氏は、実際にIoTを、モーターの外枠をプレスするアルミ鋳造機における品質管理に適用した自社事例を紹介した。開発に当たっては、「クラウドネイティブ」「オープンソース/新技術」「内製化」をテーマとして「早く安く、IoT基盤を提供することに取り組んだ」と説明する。

 「サーモグラフィで温度画像を取得して、それをクラウド上で画像分析して……と、そういうシステムだが、これをやるのに2週間でできた。開発は1週間で、検証とユーザーへの説明に残り1週間を使っただけ。こんなに早く出すことができる」(佐藤氏)

IoTビッグデータ分析の実例。導入により20%の不良発生率を3%まで抑えることができた

日本電産が構築したIoTビッグデータ分析基盤のシステム構成図

 さらに「今の流行りもの」、つまり新技術を積極的に使ったのもポイントだと、佐藤氏は語る。システム構成図を見ると、サーモグラフィ装置からの温度画像転送は東芝の「FlashAir」(Wi-Fi内蔵のSDカード)を、それを受信してAWSへ転送するゲートウェイには「Raspberry Pi3」とソラコムのSIMカード「Soracom Air」を使っている。

 「とにかく流行りものを使え、と。これらのパーツはどれも数千円で買えるし、中にはタダでもらったパーツもある(笑)。それだけで出来上がった」(佐藤氏)

 またAWSクラウド側では、S3やRDS、Lambda、AWS IoTのほか、R、ZABBIXといったオープンソースプロダクトも使用している。また、画像の蓄積先には自社開発した「GreenForest」を利用した。佐藤氏は、クラウドの活用によって“IoTによる業務改善”が簡単、安価に始められることをあらためて強調し、講演を締めくくった。

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