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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第359回

業界に痕跡を残して消えたメーカー 新製品発表の反面教師となったオズボーン

2016年06月06日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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ライバル会社の対抗策として
後継機を開発

 このあたりが同社の絶頂期でもあったが、競争も激化していた。直接の競合となったのはKaypro Corporationが1982年に発売したKaypro IIである。

Kaypro社のKaypro II。こちらも可搬型ではあるが、もっと無骨で大きい。ただそれは必ずしも重要ではなかった、ということなのだろう

 スペックはほぼ同じで、4MHzのZ-80に64KB RAM、5インチFDD×2という構成であるが、CRTは9インチに拡張され80桁×24行表示が可能、しかも価格は1595ドルだった。ちなみにこのKaypro IIは、SF作家のアーサー・C・クラークが「2010年宇宙の旅」の著述に使われたことでも有名である。

 Kaypro IIはもともと、工場などで測定用カードなどを装着して使うことを想定した頑丈な構成だったため、スマートなOsborne 1と競合するとは思われなかったのだが、実際にはOsborne 1にせよKaypro IIにせよ、置きっぱなしで使われたということだろう。

 またAppleやIBM-PCといった新しい製品が出てきたことで、8bitのZ80ベースのマイコンが次第に時代遅れになりつつあるという問題もあった。

 もちろんこうした動向はOsborne氏も理解しており、銀行から総額20万ドルほど資金を調達して次の製品の開発に取りかかった。これがOsborne 2、あるいはOsborne Executiveと呼ばれるマシンである。

Osborne Executive。頑張ってCRTの場所を作りました、という感じもする

 CRTは7インチに大型化され、CPUはDual Z80B(6MHz)に、RAMは124KBにそれぞれ強化された。CP/Mは3.0(Osborne-1はCP/M 2.2)が搭載されるなど、基本はOsborne 1の高性能版という扱いである。価格はやや上がって2495ドルとなっている。

 さらに同社は、Kaypro IIへの対抗策としてOsborne 4ことOsborne Vixenの開発も行なっていた。こちらはやや大型化した筐体と7インチCRTに加え、縦置きの5.25インチFDDを搭載するほか、オプションでHDDを内蔵することもできた。

Osborne Vixen。頑張ってCRTの場所を作りました、という感じもする

 CPUの構成はOsborne 1と同じ4MHzのZ80であるが、価格は1498ドルでKaypro IIより100ドル安い。実はこのZ80版のVixenの開発の裏で、IBM-PC互換機の開発も始まっていた。詳細は不明だが、筐体はVixenのものを利用していた「らしい」。

新製品を発表するも買い控えで
資金繰りが悪化し倒産

 さて、いよいよ本題である。Osborne Executiveの試作機が完成したあたりで、Osborne氏は報道陣を招いてOsborne Executiveをお披露目したのだが、これが報道された結果としてユーザーの急激な買い控えが発生した。

 要するに「もう少し待てばOsborne Executiveが出るから、今Osborne 1を買うのはやめよう」というわけだ。この結果、Osborne 1の市販価格は1983年7月には1295ドルだったのが、同年8月には995ドルまで下落。それでも買い控えは止まらず、同社は急激に資金繰りが悪化、1983年9月に倒産するに至る。

 それでもへこたれないOsborne氏は1984年、Osborne Vixenをなんとか発売するが、残念ながら売れ行きは期待から程遠いものだった。結局Osborne氏は再び著作の世界に戻る。彼が1984年に出版した“Hypergrowth: The Rise and Fall of Osborne Computer Corporation”はベストセラーになっている。

 ちなみに、この「新製品を早く発表したため、買い控えによって資金繰りが悪化する」現象は、コンピュータ業界で“Osborne Effects”(オズボーン効果)と呼ばれるようになっている。

 もっともWikipediaの「オズボーン効果」では、これが通説であり、実際は都市伝説に近いという話を紹介しているが、事実かどうかはともかくとして、こうしたマーケティング的事象にのみ、その名前が残っているというのは、もの悲しいものがある。

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