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東京から1時間の人口流出都市、横須賀の憂鬱と希望 第3回

ヤンキーだらけは本当か?地元出身者が横須賀の今を語る

2016年05月18日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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受託開発会社のジレンマと谷戸のイノベーション

内藤:受託開発の会社だと安定的な収入を上げるのが大変ですが、タイムカプセルもそういうところはありますか?

大手SIerであるTISの中で、地方創生まで含めた新しいビジネスを模索中の内藤稔さん

相澤:われわれも納品したらお金になるワンショットの受託案件は多い。継続すればいいけど、なければ厳しい。そういう安定性は大きな課題だけど、受託開発の会社は「みんな自社サービスを当てたいけど、当てられない」と言います。

内藤:本当にそうですね。地方に行くと、電力会社と通信事業者からの仕事がなくなると会社が終わると考えるところ多いです。もちろん、それではいかんと考えている方もいるし、クラウドだったら全国やグローバルに展開できるサービスを作れるという期待もあるんですよね。

相澤:地方の会社は特にそのジレンマに陥ることが多くて、大手の下請けとしてそこそこの収益を得ると、そこがゴールになってしまうんです。そこに陥らなければならないです。

内藤:地方と東京の違いってそういうところにあるのではないかと思っています。東京は会社がいっぱいあるので営業効率がいい。だから、クオリティがそれほど高くなくても、なんとなく生き残っている会社っていっぱいあるんですよ。日本は電話営業の文化がないので、どうしても対面での打ち合わせが必要。その点、横須賀なら東京まで1時間くらいで行ける。

相澤:しかもここの家賃は120㎡弱で1ヶ月6万9000円です!

内藤:すごい!

相澤:東京だったら、6万9000円でワンルームしか借りられないですよ。僕、サラリーマン時代に大宮に転勤になったことがあって、無理だよなと思いつつ、2週間くらい通勤に挑戦したんですけど、やっぱり無理だと気がついたんです。だったら、横須賀で全然いい。

大谷:なんか新しいワークスタイルを、いかにもイノベーティブじゃない旧家で実践しているのが、実にイノベーティブです。

離れてわかった横須賀のよさ

内藤:今は千葉に住んでいるんですが、横須賀を出て初めて横須賀のよさを知った。子供ができて、自然にふれあえるすばらしさを理解した感じです。今の子供は小学校に入ると防犯ブザー渡されて、近所に遊びに行くときに親がついていきます。僕が子供の頃って、そんなことなかったようなあと。

相澤:昔は勝手口空いていて、友達が勝手に家に上がって、ゲームやってましたからね(笑)。

大谷:時代が変わったという話もあるけど、谷戸ならそういうふれあいが残ってそうな気がしますからね。

軍港をのぞむ谷戸からの夕日

相澤:横浜や鎌倉の人たちと最近交流してますが、三浦半島のポテンシャルはすごいとつくづく感じます。たとえば、横浜も観光客いっぱい来ますが、3日間見るところってないんですよ。中華街とみなとみらいは1日で終わりますよね(笑)。泊まってくれないから客単価が上がらない。東京に泊まって、横浜の観光が終わったら、東京に戻ってしまう。これは横浜の課題なんです。

大谷:実家が横浜だから、すごくわかります。確かに横浜だったら泊まらないで、東京に帰ってしまいますね。

相澤:でも、戦艦三笠や猿島、観音崎などのある横須賀のほか、横浜、三浦、鎌倉、葉山など三浦半島全体に拡げると、一泊・二泊する価値が出てくる。だから、本当はほかの自治体と連携したいんですけど、周りとめちゃくちゃ高い心理的な壁があります(笑)。内藤さんは理解してもらえると思うのですが……。

内藤:はいはい。下手したら、相手は敵ぐらいの壁ありますね。

相澤:最近、横浜の専門学校でも教えているのですが、横浜の人たちは横須賀来たことない。横浜から遠いイメージありますが、京急で25分ですよ。鎌倉の人ですら遠いと言いますからね。この心理的な壁を外すのは、自治体の力だけではなく、草の根の力も必要です。

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