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ソシャゲ課金マンガプロジェクトの裏側を探る 第2回

ソシャゲ課金マンガプロジェクトの裏側を探る(中編)

漫画家がクラウドファンディングを始めてからわかったこと

2016年04月30日 17時00分更新

文● 佐藤ポン イラスト●村正みかど 編集●南田ゴウ 

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「しつこいほど告知し、ひとりでも多くの方に知ってもらうよう宣伝した」

――具体的な宣伝方法を教えてください

 はまむら:企画が決まってから募集開始日まで、Twitterで頻繁に告知をしました。ときにはファンの方とメッセージのやり取りをしたり、1日に何時間もTwitterに張り付いていました。あのときは「自分の職業は何だ?」と思いましたね(笑)。僕は人と会話をするのが好きなので問題ありませんでしたが、漫画家のなかにはコミュニケーションが苦手な方も多いです。なので、誰にでもオススメとは言い難いです。そのような方が僕らと同じことをすると、おそらくストレスを感じると思います。

――募集スタート初日はどのように過ごしましたか?

 はまむら:準備はしっかりしたはずなので、「あとはなるようになれ!」ですよ。スタート初日は趣味の釣りに出かけようとしたんです。僕らの性格からすると、どうせ職場で仕事をしていても支援額が気になって仕事にならないから(笑)。

はまむら氏の趣味は釣り。仕事に詰まると、ふらっと海や川に出かけることも

――仕事中もついつい見てしまいそう

 はまむら:ブラウザーを立ち上げてなくても、たぶんスマホで見ちゃうでしょうね。スマホでどこでもネットを見られる時代、よくないですねぇ。いや、今からスマホのマンガを描こうとしてる人間の発言としてはおかしいですけど(笑)。なので、僕らは電波が届かない海にでも行って、ネットを見ないようにするつもりでした。

――そうはならなかった?

 はまむら:まだ最後にやることが残っていたことに気づいたんです。ネットではさんざん告知はしたものの、僕らのお客さんはそれだけじゃない。「エロゲの太陽」を連載中に協力して頂いた秋葉原の店舗に、再び協力してもらおうと思いついたんです。あのときは確か、募集開始日の朝5時くらいだったかな? 急いでチラシを作って印刷しました。もちろんすべて自分で。

――当日の早朝から大忙しですね

 はまむら:スマホを持たずに海に行く予定だったのに、印刷したチラシを持って秋葉原行きに変更しました。そして「ガルテン」などのお店のマスターにお願いしたら、何店舗も快く協力してくださいました。ファンのみなさま同様、お店の方々にも感謝しています。ここまでやってみてわかりました。出版社の宣伝担当さんは、いままで僕らのマンガを告知するのに、そうとうがんばってくれていたんだなって。

秋葉原にあるオトナのバー「ガルテン」。この店は「エロゲの太陽」2巻に登場する背景のモデルとして活用された

 はまむら:「エロゲの太陽」の連載が始まったときなんて、山手線の中吊りまで作ってくれたんですよ! JR東日本に広告だなんて、僕ら無名の漫画家が個人ができるわけがありません。きっと小学館の担当さんは、苦労されたに違いありません。クラウドファンディングをやってみて「よかったな」と思えたことのひとつです。

はまむら氏は自分の作品が電車内に貼りだされているのが嬉しくて撮影。「こらえきれずカメラを使うというマナー違反。ごめんなさい!」(はまむら氏談)

――そこまで告知をがんばった理由は

 はまむら:これは実体験なのですが、以前クラウドファンディングで欲しいモノを見つけたんです。「コレいいな」と思って支援しようとしたら、その時点で募集は締め切られていました。「知っていたら支援したのに」という経験が、けっこう多いと思います。あのときは本当に悔しかったですね。そんな経験があったから、僕らがマンガを出すときには、すべてのファンに知っていてほしかったんです。なので必要以上にがんばりました。

――努力があったからこそ、短期間で目標金額が達成できたと

 はまむら:そのせいかどうかわかりませんが、努力してよかったと思います。あとは描くことに専念できますから。

――それでは目標金額について。4月27日現在、192人の支援者から229万円が集まっています

 はまむら:「ありがたいです」の一言です! だって僕ら、不成立を覚悟してスタートしたんですよ?(笑) まだ発表していないマンガにたくさんの人が価値を期待してくれて、これだけ出資してもらえた僕らは幸せ者です。

 次回のテーマは以外と知られていない「漫画の制作費」について。クラウドファンディングで集めた200万円を超える資金が、どのようにマンガ制作に利用されるかに迫っていく。


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