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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第353回

デスクトップ向けのBristol Ridgeは6月発表か? AMD CPUロードマップ

2016年04月25日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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苦しい決算発表をするも
中国へのIPライセンス供与で株価が上昇

 さて、ロードマップの話は以上だが、最後に先週発表されたAMDの2016年第1四半期の決算発表の話に触れておきたい。

 まず決算そのものであるが、なかなか壮絶というか、あまり良いものではない。英語だとわかりにくいので簡単にまとめると、以下のようになる。

AMDの2016年第1四半期の決算発表。同社の4月21日付けのEarning Callのスライドから抜粋

AMDの2016年第1四半期の決算発表
  2016年第1四半期 2015年第4四半期 2015年第1四半期
売り上げ 8億3200万ドル 9億5800万ドル 10億3000万ドル
粗利益率 32% 32% 32%
営業費用 3億3200万ドル 3億2300万ドル 3億5700万ドル
営業利益 -5500万ドル -3900万ドル -3000万ドル
純利益 -9600万ドル -7900万ドル -7300万ドル

 売り上げは文字通り売り上げであるが、利益率は要するに原価を引いていくら残るかである。AMDはこれが30%台とかなり低めである。インテルの場合、今年第1四半期の決算報告によれば59.3%で、平均60%近い。

 大体半導体メーカーの場合、粗利益率が40%以下ではかなり苦しく、50%を超えてやっと安定という感じなので、これは相当苦しい数字である。

 実際8億3200万ドル売っても、粗利益率が32%なので、粗利益は2億6600万ドルほどでしかない。なのに営業費用が3億ドル以上かかっていたら、それは赤字になるわけである。

 ちなみにこの数字はGAPP(Generally Accepted Accounting Principle:米国会計基準)に準拠していないもので、GAPP準拠のものだともう少し数字が悪くなるが、そこは本質ではないのでここでは割愛する。

 それにも関わらず、この発表を行なった同社CFOのコメントは楽観的であった。もちろん売り上げがやや低いのは、セミカスタムSoCの売り上げが伸びず、モバイル向けプロセッサーの売り上げも伸びなかったのが主要因であるが、営業費用に含まれる開発費(言うまでもなくZenやPolaris/Vegaの開発費)がピークを過ぎてこの先は減っていくため、多少なりとも資金繰りは改善していくという話と、もう1つの隠し弾である中国へのIPライセンスの話があったからだ。

 そのIPライセンスの話が下の画像だ。AMDは中国の天津に拠点を置くTHATIC(Tianjin Haiguang Advanced Technology Investment Co., Ltd.)と共同でジョイントベンチャーを設立。AMDはこのジョイントベンチャーにCPUコアをIPライセンス供与するほか、SoC製造のデザインサービスを提供。ジョイントベンチャーはこのIPをベースに中国国内向けのサーバ向けチップを製造・販売する。

中国へIPライセンスを供与。この発表により、決算の結果がひどいにも関わらずAMDの株価は急騰した

 この契約にあたり、AMDはジョイントベンチャーから総額2億9300万ドルのライセンスなどの費用を獲得し、さらに実際に製品が出荷されるたびにロイヤリティーも受け取れることになっている。

 絶対額として大きいか小さいかといえば、中国市場向けだけでこの金額をジョイントベンチャーが回収できるのか怪しい気もするあたり「額が大きい」。

 だが、売り上げ総額や、AMDの抱えている長期債務(2024年までに総額20億2500万ドル)など、あるいは現時点で同社が保有する現金および現金等価物(7億1600万ドル)と比べるとそう大きくないなど、判断は微妙なところではあるが、とりあえず苦しい会計の一助になると判断されたようだ。

 ちなみに契約の詳細は不明であるが、IPとしてZenコアを提供するという報道もある。このあたりの詳細が、COMPUTEXのタイミングで明らかになるかどうかははっきりしない。

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