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デジタル時代のアナログオーディオ入門 第3回

いい音のままの残す‼! アナログレコードをPCMレコーダーでハイレゾ録音!

2016年04月20日 10時00分更新

文● 鳥居一豊

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組み立てを行なうのは選ばれし5人だけ!
日本のモノづくりのこだわりが詰まった製品

 何から何までこだわりの結晶とも言えるSL-1200GAEだが、もうひとつ注目したいのが、日本生産ということ。

 ダイレクトドライブ・モーターは米子で製造。トーンアームは大阪、4層構造のボディーは広島、ターンテーブルのバランス調整と最終的な組み立ては宇都宮と日本各地の工場でパーツを生産し、組み立てまですべて国内で行なっている。

 ちなみに各工場は元テクニクスのOBが起こした会社で、SL-1200GAEの開発では、こうしたOBたちの技術をノウハウを改めて勉強しなおしたとか。

 さらに徹底しているのは、組み立てはたった5人のベテランが責任を持って行なっており、すべての製品が性能や特性をチェックするだけでなく、音質評価まで行っているという。こうした日本の物作りの良さを世界に発信するのもSL-1200GAEのテーマだという。

 テクニクスが復活したとき、SL-1200の復活を求める声が世界中から集まったそうで、テクニクスとしてもダイレクトドライブ方式をもう一度新開発したいという思いは強かったようだ。というか強すぎたようだ。

 SL-1200は世界で最も有名なレコードプレーヤーのひとつだと思うし、それと同じデザインとしたのはまったく同じ感覚で使ってもらいたいためだという。

 しかし、継承したのは外見だけで、ダイレクトドライブ方式のレコードプレーヤーとしては、放送局などでも採用されたハイエンド機のSP10シリーズのレベルを追求してしまったのだ。ちなみにワウ・フラッターを始めとする性能や工作精度のレベルは、SP10MK2に匹敵するレベルになっている。

 実物の凄みのある作り込みを見ていると、こうした話が決して大げさでないことがよくわかる。プレーヤーを持ち上げてみるだけで重さが違うし、トーンアームは重さを感じさせないくらい軽やかに動く。

 昇降レバーを降ろしたときの上下の動きは優雅と言えるほど(特殊なダンパーを新設計して動きを最適化したとのこと)。配置などを含めて手に馴染む感触なのに、使えば使うほど別物のように感じる。

日本刀のような切れ味と、目の覚めるような鮮烈さ
まさにハイエンド級の音

パナソニックセンター東京で試聴する筆者

パナソニックセンター東京で試聴する筆者

 最後に試聴の印象をお届けしよう。SL-1200GAEにはカートリッジは付属しないため、パナソニックセンター東京ではオルトフォンの「Cadenza Black」(MC型)を使用し、フォノイコライザーアンプはオルトフォンの「EQA555 MKII」だ。プリアンプやパワーアンプ、スピーカーはテクニクスの「R1」シリーズとなっている。

 その音はまさに圧巻だ。「マイルス・デイヴィス/カインド・オブ・ブルー」では、一枚ベールを剥いだような鮮やかさで音場が再現され、ベースやドラム、トランペットやピアノといった楽器の配置がはっきりとわかるような明瞭な音像が現われる。

 奥行き感や定位感もデジタルソースと比べて遜色がない。筆者は同じアルバムのSACD盤も持っているが、まったく同じとは言えないがほとんど差を感じないくらいの音場感が再現できている。

 ダイナミックレンジはアナログレコード(78dB)とCD(90dB以上)と大きく差があるはずだが、実音としてのダイナミックさはCDどころかハイレゾ以上と感じるような迫力がある。マイルスのトランペットの抑えた感じや強く吹いたときの勢いの良さが見事に描き分けられたのは見事だ。

 今度はビル・エヴァンスの「サンデー・アット・ザ・ビレッジバンガード」(再プレス盤の新品)を聴いたが、ビレッジバンガードの部屋の狭さ感がしっかりと再現されたことに驚く。ピアノとベースやドラムの距離が接近していて、音楽全体がギュッと凝縮された感じになるし、演奏を楽しんでいる客のざわめきや拍手の広がり感も見事で、ここまで音場感が再現されたのは驚異的だった。

 なにより、音のエネルギー感と存在感が凄い。たしかに、SACDなどと比べると絶対的な解像感には差を感じる。

 たとえるならばSACDがカミソリ的な鋭利さならば、SL-1200GAEでのアナログレコードは日本刀のような太く厚みのある切れ味だ。それくらい音の存在感と力強さに差を感じた。

 このレベルの音は、天井知らずのコストをかけたスーパーハイエンドなレコードプレーヤーとオーディオシステムにも迫るものと言っていい。そういう意味では、SL-1200GAEの33万円は安いとさえ思えてくる。

 現実的な話をすると、オルトフォンのカートリッジもSL-1200GAEに迫る価格だし、R1シリーズも容易に手の届かない価格だから、それくらいの音が出るのは当然でもある。だが、ソース機器がレコードプレーヤーだと考えるとやはり凄いと言って間違いはないと思う。

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