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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 第19回

自慢消費は終わる、テクノロジーがもたらす「物欲なき世界」

2016年04月12日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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アメリカの車所有者で随時利用している割合はたった8%

高橋 やはり現在の“物欲なき世界”にいたるまでのプロセスを考えると“所有から共有へ”という感覚の変化はとても大きいですよね? 『物欲なき世界』の中でも紹介されているレイチェル・ボッツマンとルー・ロジャースの『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』(日本放送出版協会刊)という書籍がありますが、あの本が刊行されたのはリーマンショック直後の2010年です。

 本の中で僕が印象的だったのは、人間が一生のうちで電気ドリルを使う時間はせいぜい10分くらいなのに、アメリカの総世帯の約半数は電気ドリルを持っているという(笑)。そんなもん借りればいいじゃないかと。

Image from Amazon.co.jp
レイチェル・ボッツマンとルー・ロジャースによる共著『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』(日本放送出版協会刊)。2010年前後に勃興しつつあった「Airbnb」や「Aipcar」をはじめとするシェアリングエコノミーの事例を紹介した先駆的な書物

菅付 車に関してもまったく同じことが言えて、アメリカの車の所有者で日常的に運転している人たちは実は8%くらいしかいないんですよ。残りの92%はほとんど利用していないと言っていい。

 そうなると配車サービスの「Uber」でぜんぜんいいわけです。スマホのアプリで呼べばすぐ来てくれるし、登録してあるクレジットカードで決済だから現金で払う必要もないですしね。しかもアメリカではUberはタクシーなんかよりもぜんぜん安いんです。

 ところが日本という国はあらゆる領域で既得権益が強いので、なかなかアメリカのような安さを実現できないし、アメリカのようには普及していかないですね。

「Uber」(ウーバー)はアメリカのウーバー・テクノロジーズ社が2009年から展開している自動車配車サービス。現在、世界58ヵ国・地域の300都市で利用することができる。日本では2014年から東京都内でサービスが開始された

高橋 アメリカという国はこれまで20世紀的な資本主義をずっと牽引してきて、まぁ、いまでも先導しているんでしょうけど、にもかかわらず自国の中からそうした古い殻を破る新しいものがちゃんと生まれてくるのがスゴいですよね。

菅付 そうですね、アメリカは既得権益なんてお構いなしにばんばん壊してしまいますからね。これからはテクノロジーの進歩と共に自動運転のUberみたいなものが登場してくるんじゃないですかね。平日の昼間はすごく安いとか、ラッシュアワーはちょっと高くなるとか、料金体系もだんだん整備されてきてね。

 そうなるともう、月一回のクレジットカード決済で無人ロボットカーをみんなで共有しているようなものですよ。いずれはそういう方向に進んでいくんじゃないかな? 高級車を複数台持ってそれらを乗り回すという“誇示的な消費”は次第に終焉に向かっていくんだと思います。

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