サーバー仮想化はコスト面、運用面、+αでメリットあり
サーバー仮想化のメリットは、サーバー本体の購入コストが抑えられるだけでなく、それを設置するラックスペースのコストも、消費電力も節減できることだ。「実際、コストは相当安くなります」と宮原氏は述べる。
「仮想化ソフトのライセンスコストが追加でかかりますが、それでも安い。たとえば物理サーバー10台を導入するのと、物理サーバー3台の上で仮想サーバー10台を動かすのとを比較すると、導入コストはだいたい半分ほどで済みます」(宮原氏)
さらに、サーバー仮想化は運用面でのメリットも大きい。ハードウェアの物理障害が発生すると、何時間も(場合によっては何日も)サービスが停止してしまうことがある。その間、サーバー管理者は復旧作業に追われ、当然ほかの従業員の社内業務も滞ってしまう。こうした“負のコスト(ネガティブコスト)”は馬鹿にならないと、宮原氏は指摘する。
ここでサーバーが仮想化されていれば、故障していない別の物理サーバーへ移動して稼働させることができるため、サービスを短時間で復旧できる。仮想化ソフトウェアによっては、自動的に障害発生を検知して仮想サーバーを移動、復旧させる「HA機能(高可用性機能)」を持つものもある。
「この場合はサーバー構成の設計も大切です。たとえば3台の物理サーバーで、それぞれリソースを60%ずつ使って稼働するように構成しておけば、物理サーバーが1台故障しても、残りの2台に30%ぶんずつ仮想サーバーを割り振ってサービスが継続できます」(宮原氏)
特に最近では、仮想サーバーを稼働させたままで物理サーバー間を移動させる「ライブマイグレーション」技術も普及している。別の物理サーバー上で立ち上げた新しい仮想サーバーに、メモリ上やCPU上のデータを含むすべてのデータをコピーしたうえで動作を引き継ぐことで、サービスを停止することなく仮想サーバーを移動(マイグレーション)させるという技術だ。
宮原氏は、ライブマイグレーションを活用することで、たとえば物理サーバーのメンテナンス作業も、サービスを停止させることなく実施することができるというメリットを紹介した。
さらにサーバー管理の現場実務を考えると、開発環境やテスト環境を簡単に作れること、サーバーの“ある状態”を保存しておいて環境を巻き戻せること(スナップショット機能)といった点も非常に便利だ。「現在ある物理サーバーが5台程度の小規模な環境でも、サーバー仮想化のメリットは大いにある」(宮原氏)。
サーバー仮想化のデメリット、向いていないアプリケーションとは
では逆に、サーバー仮想化にデメリットはないのだろうか。
宮原氏はまず、仮想化によって生じる処理性能の劣化(オーバーヘッド)の問題を指摘した。物理サーバーに直接OSをインストールしてアプリケーションを動作させる場合と比較して、ハイパーバイザを介して物理サーバーを利用する仮想サーバーは「だいたい5~10%」の性能劣化が発生するという。
もう1つ、仮想サーバーはOS上の時間(時計)がずれやすいことも指摘した。これは、複数の仮想サーバーが物理CPUを共有する(短い時間間隔で交互に使用する)仕組みのためだ。同様の理由で、ある仮想サーバーの処理が重くなれば、同じ物理サーバー上で稼働するほかの仮想サーバーの処理にも影響を与えることがある。
こうした弱点があるため、大きな負荷がかかる大規模な業務アプリケーションやデータベース、高速な処理を必要とする科学技術計算や物理シミュレーション、正確な時刻を必要とするアプリケーションは、仮想化には向いていないという結論になる。
「とはいえ、まずは『すべてを仮想化する』という考え方で始めるといいでしょう。そのうえで、仮想化では性能が追いつかないアプリケーションや、処理が遅くなると困るようなアプリケーションを見極めて、それだけを物理サーバーに戻すという方針でよいと思います」(宮原氏)
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