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「ふるさとテレワーク」は地方を救うか!? 第5回

会議やチームワークの意識も激変

生産性、急上昇!これぞ景観美の南紀白浜テレワーク

2016年03月25日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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生産性、急上昇!

 セールスフォースのそもそもの思いは、社内にテレワークが浸透する中、地方では生産性がどう変わるかを検証したいというものだった。白浜町には、見込み客の発掘から商談へとつなげる「内勤営業」を派遣。一度に最大11名まで、3カ月交代で短期出張し、延べ16名が移住を伴うテレワークを実践した。他社も含めると総勢25名ほどの実証となったようだ。

 取り組みで最大の特徴となるのは、何と言っても「Salesforce Villageからの景観美」。実際に訪れて圧倒された。一面ガラス張りの窓からは白浜海岸が見渡せる。天井も鮮やかに、床の素材や横長のオープンラックは「温泉の脱衣所」をイメージして設計。まるで「高級リゾートホテル」のような雰囲気が、見学者の「オフィス空間に対する既成概念」を全力で覆しにかかってくる、そんな“場”となっていた。

まるで「高級リゾートホテル」のような雰囲気

「温泉の脱衣所」をイメージ

ミーティングエリア

一面ガラス張りの窓からは白浜海岸が見渡せる

 効果も凄まじい。

 内勤営業はKPIが「月間商談成立件数」と明確で、結果が数字で測りやすいため、元々テレワークはしやすい部署だった。実際、東京でもシンプルに効率化されていて生産性は高かった。ところが、この場所でテレワークしたところ、3カ月間で商談件数はさらに11%、契約金額は63%も増えたという。「もちろん契約金額は大型案件ひとつで大きく変わるものだが、商談件数は単月でもそれぞれ10%ほど上がっているので、かなり信憑性のある数字」と吉野氏。これには東京オフィス側も驚きだったそうだ。

 では、その要因はなんだったのか。「景観によるリフレッシュ効果は当然あって、オン・オフにメリハリが出て社員のやる気につながった。が、どうもそれだけじゃなくて、よくよく聞くとチームワークに変化が起きていることが分かった。オフィスは限られたスペースで仕切りもないため、先輩・後輩が気兼ねなく相談している。しかも、住んでいるマンションは同じで、朝一緒にクルマで出勤する。土日も家族ぐるみで交流しているので、コミュニケーションが圧倒的に促進されたようだ」(吉野氏)

商談件数は11%増、契約金額は63%増

会議の在り方も激変

 こうした結果から視察も相次いだ。鹿児島、埼玉、愛媛などの各自治体や企業など、3カ月の実証期間で200名もの人が見学に訪れた。自治体からは「白浜町を選んだ理由」「移住してみてのメリット・デメリット」といった質問が多く、企業からは「地方と本社の連携はどうやっている?」という質問が多かったという。

 実際、どう連携しているかについては「以前からChatterもあり、コミュニケーションは場所に関係なくクラウドで実現できていた。問題は“対面”をどうするか。当初は顔の見えるテレビ会議をメインとしていたが、必ずしも全ての場面に必要ではないと、意思決定だけなら電話会議で済ませることが増えた」との回答。

 さらなる気づきとして「定例会議は必要か?」という疑問も湧いたという。「東京の会議も効率化されていたはずなのに、リモートだとさらに『長過ぎる』『そもそも毎週必要?』と意識が変化していった。結局、みんな30~40分くらいで終わらせようと事前準備して、発言にも含みを持たせず、ハッキリと言い切るようになった」

 終業時間を厳密に18時と決め、30分後には施設を閉めるのも大きな要因だ。「時間内に仕事を完結させようという意識が高くなった。その後は家族やメンバーと食事をしたり、秋にはイカ釣りに行って釣果をそのまま夕飯にするスタッフもいた」(吉野氏)という。

吉野氏

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