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新サービスのコンセプト、開発やイベントの舞台裏をがっつり聞いた

卒業から1年!玉川さん、スタートアップを楽しんでますか?

大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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グローバル展開は長い長い道のり

ASCII大谷:次に今年やろうとしていることをお聞かせいただければ。“F”の次は7月にあるというイベントにとっておくとして、直近の取り組みから。

玉川:先日、リセラープログラムを開始しました。今までもSIMの再販はできたのですが、SORACOMのコンソール自体は開放されていなかった。でも、SAM(SORACOM Accesss Management)の機能で親ユーザーが子ユーザーのアカウントを払い出せるようになったので、契約したパートナー様がお客様にコンソールを提供することができるようになりました。「払い込みや調達はパートナーにやってもらいたいけど、SIMのオンオフは自分でやりたい」「開発はパートナーにおねがいして、運用は自分たちでやりたい」といったニーズに応えられると思います。リセラー向けの割引もやりますので、エコシステムの拡大にもつながるかなと。

ASCII大谷:エコシステムという意味では、パートナーもどんどん増えましたね。

玉川:先日にcloudpack(アイレット)、クラスメソッド、ハンズラボ、日立製作所に加え、サーバーワークスもインテグレーションパートナーに名を連ねていただきました。請求やアカウント周りなどのエコシステムの細々したところは、パートナー様にビジネスやっていく上で非常に重要。その点ではプライオリティも高いのできちんと整備していきます。

ASCII大谷:グローバル展開についてもお聞きしたいです。SORACOMのサービスはAWS上にあるので、理論上はすぐにグローバル展開できるというのは理解しています。ただ、通信事業って基本的にローカルに根ざしているし、SIMのビジネスも現地でうまくやらなければいけない。ここらへんの課題も踏まえ、話せる範囲で教えてください。

玉川:グローバル展開は長い長い旅路です。まずグローバルの市場は非常に大きいというのが大前提。IoTに関しても、2020年にデバイスが250億個という予測が出ているし、現状のM2Mやセンサー系の市場もけっこう大きい。日本はまだそれほど大きくないですが、ヨーロッパ、北米ではそれぞれ6000万デバイスくらいはすでにつながっている。

ASCII大谷:通信事業者やITベンダーもIoTビジネスにはいろんな形で関わっています。

玉川:今日はシスコがジャスパーを買収しましたしね。確かに、ご指摘の通り、通信のビジネスは地域によって全然違います。たとえばヨーロッパはMVNO市場がけっこう進んでいて、EU内で国境を越える時にSIMを入れ替えるのは普通です。国土の広い北米は弱肉強食の世界なので、キャリアとの提携も相対契約が多いですよね。こうした事情の異なる市場に対して、誠実で、着実で、イノベーティブにやりたいと思っています。現時点ではどの地域からスタートするか明言できませんが、今年のうちにまず一歩目を踏み出して、実績を作っていきます。現在、14にまで増えたAWSのリージョンの地の利を活かして、いまだかつてないグローバルなIoTプラットフォームを作ってみたいと思います。

AWSからソラコムへ!振り返ると「感謝」ばかり

ASCII大谷:リリースから5ヶ月、AWSからの「卒業」からは1年経ちましたけど、玉川さんめちゃくちゃ楽しんでいる感じですね。

玉川:もう1年ですか!とにかく楽しかったです。リリースした時もみんなとうれしかったし、意義のあることをさせてもらえていると感じます。IoTというぼんやりしているモノに対して、積極的かつ果敢に挑み続けて、市場を作ってきたし、グローバルなIoTプラットフォームを作るという取り組みにも共感にいただいた。その意義を評価してもらえたし、周りにいい影響を与えているのかなと思います。やっていくうちに、みんなに背中を押してもらって、いいことができてるんだなという実感が出てきました。

ASCII大谷:開発者向けのカンファレンスに参加すると、本当にそれを感じますね。

玉川:エンジニアのパワーを解き放つこともできた。うちにいるレベルのエンジニアが、ほかの会社いっても、正直これ以上研鑽することはないし、新しいものを作らせてもらえるわけでもない。下手すれば管理職に回されてしまう。でも、グローバルプラットフォーマーになって、世界中で使ってもらえると、お金も集まるし、そういった場所も大きくできる。なにより、AWSはやっぱり楽しいですね。中の人は大変なんでしょうけど、品質や安定性がすごく上がっていると思います。みなさん開発が早いと言ってくれますけど、AWSの存在は非常に大きい。自分たちのリソースを本業に割けている感じがします。

ASCII大谷:1年前はAWSというグローバル企業にいたじゃないですか。今だから言える、退職したときの気持ちやスタートアップに移ったあとの感想ってありますか?

玉川:いっしょに育ってきたAWSのチームを離れる時は本当につらかったですけど、長崎社長はじめ、いろいろな人がサポートをしてくれたので感謝しています。あと、コミュニティの存在がでかいですね。昔だとある会社を離れると、すべてのコミュニティを失って、次の会社でまた新しいコミュニティを作らなければならなかった。JAWS-UGもあるし、最近ではソラコムのユーザー会もあるし、会社から離れても関われる場所があります。AWS時代から変わらずおつきあいしてくれている人がいっぱいいてくれて、ありがたいです。

ASCII大谷:まさに個人で参加するからこそのコミュニティの本領発揮ですね。

玉川:会社設立した時も、1人で背負っていたわけではなかったし、とにかく自分で考えて動いてくれるメンバーが集まってくれたので、僕は恵まれています。僕が無茶言っても、よしなにしてくれます。

ASCII大谷:最近の無茶はどんなのがあったんですか(笑)?

玉川:IoT向けに無償公開したSORACOMのアイコンセットを画像のみならず、4色全部、パワポで提供したいというのを公開の前々日に言ったことですかね(笑)。そこからエンジニアが必死にプログラム書いて、アイコンと名称のセットを2時間でフォーマット化してくれました。私としては妥協してしまうと落ちていくので、場を上げる役割です。

ASCII大谷:もう1つレベルを上げるということですが、周りも大変ですね(笑)。スタートアップになっても働き方は変わってないんですか?

玉川:スタートアップにありがちな土日までずっと仕事とか、社内で怒号が飛び交うとかないですね。先日、うちに手伝いでおねがいした秘書の方が入る前に「(スタートアップなので)社長さんは怒鳴ったりしないんですか?」と気にしていました(笑)。あと、ソラコムを自分で始めて、いろんなことが自分事になりましたね。不平があったら、自分で直せばいいので、あきらめなければならない余地がきわめて小さいですね。

ASCII大谷:期待も大きいので、今年もがんばってください。

玉川:でも、まだまだ道半ばです。富士山で言うと、1合目くらいですから。

「まだまだ道半ばです。富士山で言うと、1合目くらいですから」

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