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伊勢氏、及川氏、よしおか氏が登壇したCROSS 2016の名物パネルを実況

チーム作りやモチベーションをどうする?CROSSで先達の濃い話を聞いた

2016年02月15日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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内的モチベーションがないエンジニアをどうするか?

 部下とのコミュニケーションに悩んでいるマネージャーは多いようだ。会場からは「イノベーションを作り出すためにあえて黙っているという方法と、大変な状況になる前に情報共有する仕組みを作るという方法は、多少相反している。どこかでバランスをとる必要があると思っているのですが、具体的にどのようにしたらよいでしょうか?」という質問が寄せられる。

 これに関して及川氏は、「ディベート文化がある英語圏はいいと思うけど、日本ではディベートが得意でなかったり、地位が上の人の意見が優先されがち。だから、状況に応じて、相手から引き出すようにし向けたり、質問を変えてみるといった工夫が必要」と答える。「それってファシリテーションとか、コーチングと同じですかね」というよしおか氏に対し、及川氏は「私もプロのコーチに個人的に指導を受けたんですけど、相手が持っている答えを引き出すような訓練を受けた。その意味ではファシリテーションやコーチングに近いのかもしれない」と語る。

 よしおか氏は自身が産業技術大学院⼤学で担当しているアジャイル開発の授業について語る。この授業はWeb開発では一般的なGitHubやHeroku、Slackなどを活用して、11週間くらいでWebアプリのチーム開発を行なうという内容。「授業というより、ハッカソンを毎週やっている感じ。ここでは教員は教えない。だけど作ったモノや作り方を評価する」という進め方で行なうため、自然にコーチング能力や自身でのトレーニング方法が培われてくるという。

予想通り先達たちのコントロールに苦労するニフティの森藤大地氏(右)

 これに対して森藤氏は、「自身で学ぼうという内的なモチベーションがある人はいいけど、資質はありそうだけどモチベーションがない人はどうすればいいですか?」と質問する。これに対して伊勢氏は、「(上司や同僚が)勉強会やコミュニティに参加して、超面白そうな顔してればいいんじゃないの? 技術力を高めることは楽しいという事例を持っていると、それが伝播すると思う」と答える。それでなんとも思わない人がいるのであれば、それはしようがない。「去年参加した(さくらインターネット)田中さんが言っていたのは、モチベーションをつけさせることはできないけど、モチベーションがある人を邪魔しないことはできるということ」(伊勢氏)というコメントに対し、よしおか氏は「その意味では社食が美味しいとか、会社がきれいというのもモチベーションをキープさせる施策かもしれない」と語る。

 及川氏は、「先日、職業としてプログラマーを選んだだけという地方都市の人に『土日にプログラミング勉強しているとか、勉強会をやりたいという話を職場ですると変人扱いされる』という話を聞いた。こういう世界で生きている人にとっては、今までの話は意味を持たないと思う」と指摘。それについて伊勢氏が、「新しいことや技術を上げたいという人もいるし、9時-17時で働いて、その後はワンちゃんと遊ぶという人もいる。これは地方でも、首都圏でも同じこと。でも、地方では刺激を受ける機会がないだけかもしれないので、2~3人でも勉強会開いてみると周りを巻き込めるかも知れない」と語ると、及川氏は「東北の被災地を中心に見てきたが、小さい勉強会がどんどん大きくなったという事例があるので、それはその通りだと思う」と応じる。

 そして、モチベーションの話をきっかけに及川氏は、日本のプログラマーの問題点にメスを入れる。及川氏は「個人的には職業としてプログラマーを選んだだけという人はプログラマーと呼ばないで、違う言葉にしてほしいなあと。日本ではプログラマーの地位が低いじゃないですか。日本では『コード卒業してコンサルになったら一人前』という話があったり、優秀なことやってても孫請けというだけで賃金が安かったりする」と指摘。「そんなだから、日本はIT分野での国際競争力がなくなったりしている。プログラマーがやっている仕事はそんな簡単な仕事じゃない。将来的に自動でコード生成できるような仕事をやっている人たちは、個人的にはプログラマーとは違う呼び名にしてほしい」とヒートアップする。

コミュニティに参加させない会社なんてつぶれてしまえ

 最後に森藤氏が出したお題は「刺激を受けるためにコミュニティとどう付き合うか?」というもの。

 よしおか氏は、「技術力は絶対値で見ないといけない。でも、会社の中では絶対値で見るのが難しい。でも、外のコミュニティに出れば、自分の位置や絶対値がわかる。仲間を見つける場所でもあるし、研鑽する場所でもあるし、自己実現する場所でもある。外の世界は絶対重要で、ここに来ている人はそれを発見しているわけですよ」と会場に訴えかける。

 よしおか氏の話に同意した及川氏は、「人間はアウトプットが重要。LT5分やるのでもいいし、こういうイベントでも質問するつもりで話を聞くだけで、全然違う。そう言う意味で、コミュニティは会社の外の広い場所でアウトプットできる貴重な場だと思う」とコメント。

 一方、伊勢氏は、「コミュニティに参加するだけで、いろんな情報源とか、おねがいできる先とか、自分の持てるリソースが格段に増える。最初のとっかかりしにくいコミュニティもあるんだけど、どんなにいやな思いしても死ぬことはない(笑)。とにかくメリットだけを考えて、活用するほうがよいと思う」と決める。

 まとめの質問コーナーにおいて、オオタニが「コミュニティに参加するのが大変という人が多くて驚いている。印鑑がいっぱい必要とか、土日の勉強会まで申請が必要というところもあるが、参加者を増やすにはどうしたらよいと思いますか」という質問を投げかけると、コミュニティ活動に熱心なよしおか氏は、「そんな会社からはどんどん人材が流出します」と一刀両断。「従業員を拘束して、安く使おうというのはビジネスモデルとして破綻している。ソフトウェアは人が作るもの。優秀な人材をどんどん確保しなければいけないのに、そんなことやっている会社の経営者はバカです。そんな会社に未来はないので、とっとと辞めろというのが誠実な答えです。これ以上誠実な答えはない」とたたみかける。

CROSSのメイン会場は超満員に膨らむ

 及川氏は、「経営者も誤解しているところがあると思う。先ほど話した地方の会社も単に今のソフトウェア開発の現場をご存じないだけだった。チラシ持っていったり、スポンサー協力をお願いしたら、徐々に状況が変わってきた。そういう努力は必要だと思うけど、それやってダメな会社はつぶれちゃえばいいと思う」と語る。

 伊勢氏は、「参加者として来る場合は別に黙ってくればいいじゃんと思う。登壇者として出て問題になるのであれば、偽名で出てくればいい。実際、過去に仮面付けて出ていた人もいた」とアウトローながら現実的なアドバイス。これに対して、よしおか氏は「私はむしろ会社名を出して、出てくださいとお願いします。確かに社内手続きはあって、著作権無視で漫画を貼り付けちゃう若い人のプレゼンとかはきちんと指導しますけど、基本は奨励。楽天の宣伝活動をガンガンしてくださいと言ってます」と語る。

 これに関して、伊勢氏が「会社が認めない場合はどうすればいいですか?という質問ですよ」と突っ込むと、よしおか氏は「そんな会社辞めちゃえよ」、及川氏は「そんな会社つぶれちゃえよ」とかぶせてコメントし、会場は大いに盛り上がり。「社内からアクセスできないサービスがあるというのもやめるべき会社のリトマス試験紙。Qiitaにアクセスできない会社はつぶれてしまえよと思う」(及川氏)とたたみかけたところで、タイムアップ。含蓄あふれた抱腹絶倒パネルも終了を迎えた。

 聴講して感じたのは、時代が変わっても、課題は変わらないという点。よしおか氏は、「30年前の話なので、あまり参考にならないかもしれない」と語るが、エンジニアというある種独自の気風を持った人種に対して、どのようにモチベーションを持ってもらうか、どのようにチームとしてのパフォーマンスを上げるかは、今でも大きな課題だ。「ソフトウェアで動いている世界」(よしおか氏)になった現在、戦い続けてきた先達たちの意見はますます光を増してくるように思える。

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