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第4回ITACHIBA会議で語られた「マネジメントと働き方」

3人の先進経営者が語る「働き方」「制度」「テクノロジー」

2016年02月04日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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「うちに帰って家族とご飯を食べて欲しい」(三浦氏)

 続いて登壇したのはMarkLogic 日本法人代表の三浦デニース氏。シリコンバレーでエンジニアとしてキャリアをスタートさせた三浦氏は、14年前に日本人と結婚。7年前、シリコンバレーから東京に移り、現在はNo SQLデータベース製品の手がけるMarkLogicの日本代表を務めているという。二人のお子さんを育てながら、経営者として外資系企業をマネージするいわゆる“ワーママ”だ。

日米の働き方を熟知したMarkLogic 日本法人代表の三浦デニース氏

 三浦氏はワークライフバランスを考える上では、やはり時間より、生産性が重要だと指摘する。「何時間オフィスにいたかが問題ではない。採用の際も、22時まで仕事するなんてことを期待していないし、やってほしくないとお伝えしている。うちに帰って家族とご飯を食べ、子供の宿題をチェックし、家族が寝てから、ノートPCを開いて欲しいと話している」と三浦氏は語る。

 こうした時間に縛られない仕事環境を実現するためには、成果指標を明確に定義し、マネージャーとしてきちんと評価できる体制を作る必要がある。そして、こうした指標を作るためにはリーダーシップとビジョンが必要になるという。「チームとして成果を上げつつ、各個人が説明責任を果たせるかが重要」と三浦氏は指摘する。

 これを実現するのは簡単なことではないが、三浦氏は経営者として柔軟な働き方を実現する社風を強く意識しているという。そして、テクノロジーによって、課題を解決する必要があるという。「米国ではWiFiがどこでもあって、ノートPCでどこでも情報共有できるのが当たり前だったが、7年前に日本に来た時はそれができていなかった」(三浦氏)。しかし、生産性向上のためにはセキュリティリスクとのバランスを考えつつ、こうしたモバイルワークをきちんと検討すべきだと三浦氏は主張する。

柔軟な働き方の鍵はテクノロジー

 もちろんコミュニケーションは社内だけではなく、家族とのやりとりにおいても重要だという。三浦家ではスキマ時間にテキストメッセージでやりとりするだけではなく、「ちょっとやりすぎかもしれないが、うちでは子供の位置をトラッキングしている」(三浦氏)という。

「人、モノ、金の時代は終わった。とにかく人、人、人」(ChatWork 山口氏)

 3人目の登壇者はChatWork 常務取締役COOの山口勝幸氏。「奥さんが出産の時に実家に帰ってしまい、産休から戻ると旦那は子育てで差を付けられている」という野水氏は、出産時に旦那も在宅勤務できるという制度を導入しているChatWorkに注目し、今回の登壇に至ったという。

ユニークな制度を次々導入するChatWorkで常務取締役COOを務める山口勝幸氏

 山口氏のLTは「日本人は働き方をあきらめているのではないか」という疑問提起からスタートする。「子育てしなければいけないから辞める。親を介護しなければいけないから辞める。どっちも働き方をあきらめてる」(山口氏)。でも、クラウドの登場で新しい働き方ができる。その一助となるのが、リアルタイムなビジネスコミュニケーションを実現できる「チャットワーク」になる。「日本人が7割費やしているビジネスコミュニケーションに必要なものをぎゅっと圧縮したようなツール」と山口氏は語る。現在、8万7000社の導入があり、世界200カ国以上で使われている。

 ChatWorkは東京と大阪、シリコンバレーにオフィスを持ち、現在の従業員は約60名。半年間で倍増したことになるが、このうち5名は在宅勤務で会社には来ない。「心の豊かさを実現する働き方を作り出す」という企業理念に基づき、業務の効率化で時間的なゆとりを生みだし、周りへの気遣いをできるよう腐心しているという。「忙しいと『今はなにも話してくれるな!』になるが、ちょっと時間ができると『どうしたの?』という余裕ができる。これによって、社員や家族はもちろん、社外の人と円満な人間関係ができてくる」(山口氏)。時間、人、お金に効く働き方を15年に渡って追求してきた結果、社員満足度がナンバーワンとなっているという。

「心の豊かさを実現する働き方を作り出す」という企業理念

 ChatWorkは持たざる経営を理念とし、通常の会社にあるようなものがない。「電話がない。紙がない。営業マンもいないし、メールアドレスもありません」(山口氏)。やりたいことをやるために、やらないことを決めており、TV会議の活用で「移動しない」、ファイル検索にGoogleを使うことで「探さない」、動画とマニュアル化を徹底することで「繰り返さない」を実践している。こんな仕事のやり方で大丈夫かと思いきや、創業以来14年間連続で黒字を達成し、14連休が年に3回もあるという。

 ChatWorkは理念だけではなく、社内制度もユニーク。野水氏が絶賛する男性が育休を採れる制度のほか、上司と部下が会社もちのランチで語りあうランチトーク制度、奥さんや彼女の誕生日の食事代を出すバースデイ制度、遠隔にある実家への帰省費用を支給するゴーホーム制度など、とにかく家族に優しい制度を数多く導入している。これらは「いい会社だよねと思ってもらえるので、家族から応援してもらえる」という大きな効果があるという。

働く人を活き活きさせるChatWorkの社内制度

 「顧客満足度を上げるためには社員が活き活きしていないとダメ。そのためにさまざまな制度を試している」という山口氏。「中小企業のリソースはやはり人。人、モノ、金の時代は終わった。とにかく人、人、人」ということで、とにかく人と仕組みに投資していくのがChatWork流のようだ。

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