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amadana熊本浩志社長インタビュー

メーカーの危険な「自分が主役」という思い込み

2015年10月13日 13時14分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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ユニバーサルミュージック大原浩氏(左)、amadana熊本浩志社長(右)

時代をとらえる鍵は「チェキ」

──まず、なぜレコードプレーヤーをつくろうとしましたか。

大原 いま世界的にレコードが売れている。日本でもレコードの市場を大きくできないか、という話が社内で上がっていました。ただ、レコードだけつくってもプレーヤーがなければ仕方ない。そんなとき、クラウドファンディングでレコードができる『QRATES』というサービスをやっている方から、DJ仲間ということでamadanaの熊本社長を紹介してもらったんですね。

──社長DJなんですか!

熊本 実は。

大原 ということで今年、年明け早々お会いしたんですが、本格的なプレーヤーをつくるのもまた違うなと思ったところがありまして。ファッションとして落とし込めるものでないとダメだろうという話になったんですね。

──ユニバーサルミュージックといえば日本最大手のレコード会社です。老舗オーディオメーカーを選ばなかったのはなぜですか?

大原 アメリカでは、実はアーバンアウトフィッターズというアパレルショップでレコードが売れているんです。そこがアマゾンの次に売っている。日本でもファッションと結び付けていかないといけない。すると本格的なプレーヤーをつくるんじゃなく、インテリアになるようなレーヤーをつくらないといけないと。

熊本 「音楽好き」と「音好き」は似て非なるもの、ということもありますよね。

アメリカのアナログ文化を日本に持ちこみたいという

──どういうことですか?

熊本 「音楽好き」は音の細かいクオリティにすごくこだわっているわけじゃないけれど、アーティストはたくさん知っている。ヘッドホンの世界でも、例えば「beats」のようにファッションアイコンとして注目されるメーカーがありますよね。こうしたメーカーがもともと “オーディオメーカー”かといったらそうではない。過去のオーディオメーカーの延長線上にあるものではありません。きっとそれはいろんな業界に起きていることだろうと。ファッションブランドのように、顧客の体験をうまく伝えられる人の方が、モノづくりがうまくなってしまったところがあると思うんですよ。

──なるほど……そこでデザインのamadanaが浮かびあがってくると。しかし社長もDJなら、レコードプレーヤーを作ろうとしてたんじゃないですか。

熊本 もちろん、お話をいただく前からレコードの波がきてるのはわかってはいたんです。でも、レコードが驚くほど売れていた20年前に青春時代を送り、アルバイトをした数十万円を全てレコードにつぎこんでしまうほどレコードを買っていた……そんな人間からすると、20年後の今また、これほんとなのかなと思うわけですよ。

──これは、ごく一瞬の小さな現象にすぎないんじゃないかと。

熊本 そう思いながらも腑に落ちたのは、レコードが売れているという現実そのものとは別に、インスタントカメラの「チェキ」が売れていることでした。

シンプルな操作感にこだわった

──チェキですか。

熊本 あるいはスターバックスがこれだけ日本中にある中で、ブルーボトルコーヒーが入ってきたことであるとか。世界がハイパー・デジタル、サブスクリプションに向かっていき、iPhoneで4Kが撮れるようになった中、なぜかフィジカルなものが売れている。撮り直しもできなくて、1枚しか写真が出てこないチェキをなぜ若い子が買っているのか。ひょっとすると本当に時代は今、アナログに向いているのかもしれないと感じたんです。

──モノではなく、ライフスタイルそのものにヒントがあると。

熊本 大事なのは文化なんです。コンテンツの手段としてハードがあり、コンテンツとハードが文化をつくる。三位一体。チェキもハードがあり、コンテンツとしての写真があり、シェアして楽しむという文化が根付くようになった。昔、写真を交換して楽しむことは少なかったと思います。しかしスマホを経由して「写真をシェアすること、交換することが当たり前」という文化ができたわけですからね。

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