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『Monet 17』FitEar須山慶太代表に聞く

「アニソンとは?」本気で考えた高級イヤホン職人

2015年09月30日 09時49分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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「アニソンの記憶」もとにチューニング

──記憶をひっぱりだすって、どうするんですか?

レッド・ツェッペリンなりビートルズなり、聞きこんだ曲は「ここがこうだ」という部分がありますよね。もちろんハイレゾが出て「ここはこうだったのか!」という発見はありますが、何回も聞くと“脳内補正”がかかってくるものです。

──メロディーも歌詞もおぼえちゃいますからね。

アニソンで唯一と言える特徴は「基本的に歌ものである」こと。アニソンは子供に短時間で「何がどういう形で出るか」を伝えないといけない。そこから独特のキャッチーさ、節回しが出てきました。基本的にはメロディーがあって、歌詞がある。なので、あえてボーカルにあたる音域をおさえたんです。

──え、目立たせたんじゃないんですか。

遠くに音を置くことで「あれっ」と思う。でも聞いてると、ここはこうだよな、という経験から、そこを補正してくれる。聴覚の感度調整とかを頑張ってもらうと、ボーカル周辺の音、いろんな構成要素が入っていて、そこを一緒に持ち上げてもらう。マキシマイザーがかかったような感じになる。

──人間の性質をイヤホンの一部として使おうとしたわけですか。

そうです。ただ、コンセプトとして伝わりづらかったんですよね……パッと聴くと「アニソン専用と言っているのにボーカルが遠い」と言われてしまって。乗り越えた人はすごくワン・アンド・オンリーなものになるんですけど。

──上級者向けすぎたと。それで新作の開発につながったわけですね。

2014年のヘッドホン祭りに出した『Aya』ですね。Monetの反省を踏まえ、Ayaは真逆に振りました。上下の音域は変えず、ボーカルをはきはき出るようにして「あ、そうそう。こういう感じ」と、わかりやすくした。その経験を踏まえて作ったのが、『Monet17』でした。ユニット構成は初代と変えずに3ウェイ・3ユニット・4レシーバー。意図的に押さえていたボーカル帯域を上げるためネットワーク(帯域の振り分け部分)を再調整したんです。

Aya。初代Monetの反省を生かしてボーカルを目立たせた

──AyaとMonet17で、傾向にちがいはあるんですか?

Ayaはあっさり、Monet17はこってり、という感じです。Ayaはボーカルの張り出こそはありますが、過不足なく、というのは心がけています。

──基本は歌ものに合わせてチューニングしたと。

ただ「アニソン専用だからボーカルが」ということではないんです。さっきも話したとおり、アニソンにはあらゆる音楽ジャンルが入っている。アニソンがちゃんと聴けるところまでいったら、そのイヤホンは、なんでも聴けるということになる。ロックやジャズやクラシックがシームレスに聴けるので、iPodに入っている曲をザッピング的に聴くもよし、と。

──あらゆる音楽ジャンルをおさえたオールラウンダーができると。

変な話、ジャズなんていうのはどんなイヤホンやスピーカーでも鳴るわけですよ。音楽として完成されていてレンジが狭いので、どんなスピーカーでもきれいに聴こえる。それに「ナニナニ用」というのはキャッチコピーとしてはわかりやすいし、マーケティングにはいいですよ。ただ「これはアニソン向けです」と言われたとき「それ、どの辺がアニソンなんですか」と聞いてみたい気がしますね。

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