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AWSの出会いからcloudpackの立ち上げ、快進撃の原動力まで

クラウド業界の梁山泊「cloudpack」の強さを後藤氏に聞いた

2015年09月09日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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難しい案件でも基本的には断らない

 AWSも東京リージョンの上陸以降、ユーザー側にあったセキュリティ面の懸念が徐々に解消。専用線接続やソリューションなどが拡充されてきたことで、エンタープライズでの事例が増えてきているのが昨今の傾向だ。こうした波に乗り、AWSのプレミアコンサルティングパートナーに認定されたアイレットは、顧客数を500社以上(2015年8月時点)にまで拡大している。「日本で5年間AWSをやっている実績、事例の数やバリエーションという点では、やはり群を抜いていると自負しています」と後藤氏はアピールする。

「日本で5年間AWSをやっている実績、事例の数やバリエーションという点では、やはり群を抜いています」(後藤氏)

 用途もゲーム系を中心に、Webやメディア系など多岐に及んでいる。「北米とヨーロッパで英語版のゲームを出すのにあたってAWSをお使い始めたバンダイナムコエンターテインメント様や、その他にも事業部単位での発注から利用を拡大してきたトヨタ様やニコン様など、長くおつきあいいただいています」と後藤氏は語る。

 これらcloudpackで請け負うクラウドの案件は、既存のオンプレミスの案件とはビジネスモデルが大きく異なる。後藤氏は「クラウドは移行のしやすさや導入の敷居の低さが魅力。だから初期費用はほぼゼロでやろうと。なので、月額でいただいている固定料金に、OSやミドルウェアの設定やアカウント追加の費用が含まれています。月額でわかりやすくして、とにかく使ってもらおうと考えたのです」と語る。

 一方で、運用チームは顧客とリソースの利用動向を共有しながら、日々カイゼンを続けていくという。「お客様のシステムを運用し続け、課題やニーズ、成長にあわせて都度システムを提案していけるところがcloudpackの強み。初期コストを投資してシステムを立ち上げるという案件ではなく、継続的にサービスを続けているサイトのコストを下げるとか、安定して運用するといった課題に対して、僕らは応えられる」と後藤氏は語る。導入以降、そのまま手離れしてしまう既存のオンプレミス案件と異なり、ユーザーのニーズに応じて、システムを成長させていけるのがサービスとして提供している大きなメリットだという。

 こうしたcloudpackに来る案件は、やはりチャレンジングなものが多いという。「アイレットの企業文化だと思っていますが、いかに難しい案件でも断らない。お客様の課題を必ず解決する勢いでやっています。だから、ちょっと無理そうでも、お客様とリスクを共有しながら、新しい技術やサービスを使うことが多いです。できることがあらかじめ用意されているわけではなく、やったことないことをR&Dのように検証しながら進めています」と後藤氏は説明する。

競争力の源泉である人材はこうやって確保する

 このようにクラウド業界の中でひときわ大きな存在感を得てきたアイレット。その強さの秘訣が、スキルに長け、チャレンジ精神が旺盛なエンジニアにあることは、間違いない。こうしたメンバーに全幅の信頼を置く後藤氏に、どのようにエンジニアをハイヤリングし、成長させているのか聞いてみた。

 まずはコミュニティの活用だ。後藤氏は「人材採用メディアも使ってはいるのですが、現在会社を支えてくれているメンバーは、先にコミュニティで知り合って、素性やスキル、方向性を理解した上で、声をかけることが多い」と語る。この結果、石田知也氏、比企宏之氏、吉田真吾氏など、自律的に動ける人、自分でスキルを高められる人、周りを巻き込んで仕事ができる人が来ているという。そのため、案件数が増えても、マネジメントの負荷は極端に上がらず、比較的フラットな組織でビジネスを回すことができている。「お客様に対する責任感が強いメンバーが多いです。運用をお客様に移管することになっても、障害時には自身の時間をいとわず現場に駆けつけるメンバーもいます」(後藤氏)。

「先にコミュニティで知り合って、素性やスキル、方向性を理解した上で、声をかけることが多いです」(後藤氏)

 エンジニアの雇用の仕方も一風変わっている。「たとえば、初期のころのメンバーとして元データセンターのエンジニアが若干名いるのですが、彼らは社内では評価されているものの、対外的にはあまり日の目を見ない存在でした。人材の流動性は皆無だったし、今のように花形の職業ではなかった」(後藤氏)。スキルの尖った希少なエンジニアをすくい上げ、自社の強みにしていくのがcloudpack流と言える。

 そして後藤氏が「特異点」と呼ぶのがAWS以外のクラウドに長けた人材の採用だ。AWSだけではフィットしない案件をカバーし、真に必要なユーザーのソリューションを提供するためには、こうした人材は必要だという。「去年の6月にAzure界隈で有名な廣瀬兄弟たちに来てもらっています。デプロイ王子(廣瀬一海)は前職でもOSSを使ってハイパフォーマンスなシステムを作っているし、とにかくOSSに造詣が深い。僕らが今までタッチしていなかった勉強会に出ているし、インフラに依存しないでシステムを動かせるすごい人材を何人か連れてきてくれた」と後藤氏は語る。

 Azure界隈以外にも、Google Compute Platformに強い人材もすでにハイヤリングしており、プラットフォームに依存しない人材を積極的に取り込んでいる。こうしたところが“クラウド業界の梁山泊”となっている所以と言えるだろう。「とにかく顧客のための“ソリューション”を提供しようとしているので、足りないところを埋めるためには、新しいタイプの人材が必要なのです」と後藤氏は語る。

(次ページ、チーム構成や仕事環境にもこだわる)


 

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