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日本のITを変える「AWS侍」に聞く 第14回

地元青森県三沢市からクラウドの描く未来を模索する

JAWS-UG青森の立花さんが語る地方、震災、そしてクラウド

2015年07月15日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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コミュニティは活きた情報を得られる貴重な場

 そんな立花さんだが、ADSJの玉川憲さんとの出会いをきっかけに、JAWS-UG青森を立ち上げることになる。2013年2月の第0回の勉強会には、ADSJの堀内さん、cloudpackの吉田真吾さん、後藤和貴さんなどが登壇し、30人くらい集まった。「けっこう手応えがあった。いろんなところに顔を出していたので、感度の高い人が来た」(立花さん)。

「けっこう手応えがあった。感度の高い人が来た」

 その後、3回目の勉強会に現れたのが、青森県でITの振興を手がけている杉山智明さん。「コミュニティを巻き込んで、青森県のITを巻き込もうとしていた3年計画の初年度に声をかけてもらった。ちょうどいいタイミングだった」とのことで、以降は青森県の協力を得て、勉強会を進めることになる。「運営は自分たちでやっていましたが、告知の部分は協力をいただいた。やはりリーチできる数が全然違うので、助かってます。あとは会場の補助も一部いただいています」と立花さんは語る。このように県の協力が得られるJAWS-UG青森は、他の地方JAWS-UGに比べて、集客面の悩みはあまりない。一方で、関心のある人とない人、異なる業種間の落差が激しく、コミュニティに参加しない人たちを掘り起こしていくのには苦労しているという。

 立花さんにとってのコミュニティは、情報収集の場だという。「首都圏と地方で情報の量が変わらないけど、活きた情報かどうかは地方だとわからないんです。使っている人たちの声を聞いて、初めて活きた情報かを判断できる」と立花さんは語る。利害関係なく、インプットできる場であり、アウトプットできる場があることで、初めて首都圏と地方の情報格差を埋められるという。

 JAWS-UGに参加することで、立花さんは自身を客観的に見ることができるようになったという。「仙台の会社で就職し、今は三沢で仕事をしているので、首都圏のスタートアップや大手SIerの状況がわからなかった。立ち位置がわからず、いまいち自分に自信が持てなかった。でも、JAWS-UGに入ったことで、自分に欠けているところもわかったし、自信を持てるようにもなった」と立花さんは語る。

 そんな立花さんのあこがれは、青森県成立の立役者でもある広沢安任だ。戊辰戦争に破れた元会津藩の広沢は、減封移封されて移った斗南(今の青森県の一部)で、困窮する自県を救うため、弘前、黒石、斗南、七戸、八戸の5県の合併を成功させ、今の青森県の礎である弘前県を作る。さらに日本で初めての本格的な西洋牧場を開設し、「牛馬王」として畜産・酪農の分野で地元の発展に身を尽くしたという。

地元の名士である広沢安任の碑(立花さん撮影)

 立花さん曰く、地元には広沢の生き様が展示された「三沢市先人記念館」があり、子供の頃から親しんできたという。「起業するとき、もう一度地元のことを知ろうと思って、歴史を調べた時、この人すごいと。あの時代に、このド田舎で世界を見て仕事している。この人みたいになりたいと思った」(立花さん)。

介護や農業など非IT部門のIT活用に進みたい

 東北初のAPNコンサルティングパートナーに認定され、まさにクラウド専業のインテグレーターとして羽ばたきつつあるヘプタゴンだが、実は大きな岐路に立っている。きっかけは、2014年にラスベガスで開催された「re:invent 2014」での経験だ。立花さんから見て、re:inventで見た展示会のブースのサービスは、正直圧倒されるというほどではなかったという。「技術的に高度なものではなくても、きちんとサービス化すれば、ここでブース出せるんだと思った」と立花さんは振り返る。

 一方で、技術面では負けていないのに、サービス化という点でギャップがあることにはショックを受けた。「今までは自分たちはIT部門向けのサービスを作ってきたが、本来クラウドはIT部門がやってきたことの敷居を低くし、ユーザー部門がイノベーションを起こしていくためのもの。でも、IT部門向けのサービスがなくなったら、自分たちの仕事がなくなる。そこの葛藤が生まれてきて、どうすればいいかと思った」(立花さん)。

 この半年間続いた葛藤を経て、ヘプタゴンは非IT部門向けのサービスの開発に乗り出す。「ITが生活や仕事にもっと近づいていく中、地方は人のつながりもまだ強いし、課題もいっぱいある。むしろチャンスじゃないかと思えてきた」とのことで、新しい分野のお客さんにアプローチしているという。地元の介護事業者と連携し、老人が徘徊しないようにセンサーとクラウドを活用するといった実証実験を開始したり、実家の農家で新しいIT活用を試していきたいという。

実家の農地でも青森らしい新しいチャレンジを続ける立花さん

青森が熱い!8月29日、「東北IT物産展2015青森」が開催!

 8月29日に、東北IT物産展2015青森が開催される。立花さんは「日本にはこんなに面白い技術があったりエンジニアがいるということ、そして東北にもこんなに面白い人がいるんだということを地元の人に知ってほしいという思いで、今年は東北IT物産展の実行委員長としてイベントを青森で開催することを決意した。自分がコミュニティを通じて、楽しかったこと、学んだこと、成長できたことを東北のエンジニアにもぜひ体験してほしい」とアピールする。

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