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キング関口台スタジオのエンジニアを取材

50年のときを経て、麻倉怜士がザ・ピーナッツに出会う

2015年06月14日 12時00分更新

文● 小林久 語り●麻倉怜士 構成/写真●ASCII.jp

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アナログマスターととても相性がいいDSD

麻倉 フォーマットにDSDを選ばれた理由についても教えてください。

小林 元がアナログマスターなので、一度DSDにしてから必要に応じてPCMなどにコンバートしていく形がいいと考えています。

キング関口台スタジオにおかれている録音用機材。中段にDSD録音では定番のPyramixが置かれている。

麻倉 配信では5.6MHzですが、デジタルマスターも同じ品質なのでしょうか?

小林 当時は音の良さに加えて、実質的に最高峰の5.6MHzを選択しました。今後は状況をみながら11.2MHzに取り組みたいです。

麻倉 DSDでサンプリングレートを2.8MHzから5.6MHzに増やすと、音に明確な違いが出てきます。2.8MHzでは少しまったりするというか、地味な感じもあるのですが、5.6MHzになるとそれこそピカピカするような切れ味が出てくる。

小林 おっしゃるように「5.6MHzはピカピカだぜ」と、感じる人間も多いですね。まずはなるべく高いサンプリングレートのDSDでデジタルマスターを作っておき、配信の形態や商品のフォーマットによって変換していくことになると思います。

実は古いほうが状態がいい、アナログマスターテープ

麻倉 デジタル化のプロセスについて教えてください。アナログ録音したマスターテープから直接デジタル化する手法を取られていますが、気になるのは使用されるテープに劣化などがなかったかという点です。

安藤 明さんが手にしているのが、マスターテープ。録音順に番号が振られている。

安藤 意外に感じるかもしれませんが、実はテープは年代が古いもののほうが、問題が出にくいんです。ご存知かもしれませんが、1980年代前半に作られたマスターテープには磁性体がポロポロと落ちてしまう不具合があります。磁性体を定着させる作業を経ずに再生するとテープの走行が不安定になったり、痛みやすくなったりします。これより前の年代のテープにはこうした問題がありません。

麻倉 なるほど。1960~70年代の音源ですが、当時、テープは手貼りで編集されているんですよね?

安藤 はい。ザ・ピーナッツに関しては、ちょうどマルチマイク方式(複数のマイクからミキシングして2チャンネルを作る)を使い始めたころだと思いますが、これはまさにミキサールームで演奏を聞きながら卓を調整し、その場で左右2チャンネルにミックスダウンしていく手法で録音されています。ですから途中に直しを入れる場合も、(別テイクのテープの録音から)切り貼りして対応しています。

マスターテープはこのようなジェラルミンケースに収められて管理されている。写真は倍賞千恵子さんの録音。

麻倉 その直しにはスプライシングテープを使用すると思いますが、マスター用のテープとは別素材ですよね。「編集点が経年劣化する」といった問題はないのでしょうか?

安藤 糊が乾いて剥がれてしまうといったことはあるのですが、つけなおせばいいのでそこは大丈夫です。ちなみに、グランドマスターと呼ばれるテープはひとつだけで、リールの色を見ることで区別できます。エンジニアが気に入らないと言って録音しなおした場合では、それを廃棄するのが原則ですから、マスターはダブらないように管理されていますね。

麻倉 さすがというか、老舗ならでは。こういったマスター音源のマネージメントも優れていますね。マスターテープはどちらに保管されているのでしょうか?

安藤 スタジオの一角に専用の保管庫があって、そこにマスターテープを収め、系統立てて管理しています。先輩方の努力の結果と言えますが、録音順に単一の番号が振られており、アーティスト別でも簡単に見つけられるよう整理されているので、今回のように後の時代に再利用するといった場合でも探しやすいですね。

麻倉 こういった蓄積があるから、新しいフォーマットが脚光を浴びた際にもすぐに対応できるわけですね。そして今回のハイレゾ・ベストコレクションのような企画を通じて、こうした過去の資産をデジタルで改めてアーカイブしていくことになるのでしょう。

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