理化学研究所は4月21日、国際宇宙ステーション(ISS)に高出力レーザーを装備することでスペースデブリ(宇宙ゴミ)を除去する技術を考案したと発表した。
これは理研、仏エコール・ポリテクニークと原子核研究所宇宙物理センター/パリ第7大学(フランス)、伊トリノ大学、米カリフォルニア大学アーバイン校との共同研究によるもの。
老朽化した人工衛星やロケットの部品などのスペースデブリは今後の宇宙開発の懸念とされているが、効率的な除去技術が開発されていないのが問題となっている。今回提唱された技術は、500kWのレーザー(パルス)を照射し、デブリ表面にある金属などを蒸発させ、固体表面から吹き出るプラズマの反動でデブリの軌道を変えて大気圏に落としてしまうというもの。計算上、100km以上離れた位置からでも10cm大のデブリであれば10秒照射で大気圏へ落下させることができるという。
小さなデブリに関しては検出が難しいが、アイデアとしてEUSO型超広角望遠鏡を用いることが提案されている。EUSOは地表に向けられた望遠鏡で、本来は宇宙線(高エネルギー粒子)が大気に飛び込んで発光する現象から宇宙線の到来方向を探るもの。高感度で高解像なカメラを用いつつ広視野角を持ち、デブリの反射する太陽光を捉えることができると考えられる。
現在のところ提唱された技術にすぎず、十分な出力を持ちつつISSで運び上げるほどコンパクトなレーザー装置、EUSOで捉えたデブリに対して正確かつ高速にトラッキングして照射する装置などが開発されたわけではないが、いずれも現在の技術で実現可能なものとしている。
デブリ除去技術は各国の宇宙機関で研究が進められており、例えばESA(欧州宇宙機関)では銛や網で捕獲する装置を考案している。しかしセンチメートルサイズのデブリを効率的に除去する具体的な方法はほとんど研究が進められておらず、今回提唱された技術はかなり有望と言えるだろう。