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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第64回

大塚家具の騒動のネットの反応、会員制の是非

2015年04月24日 09時00分更新

文● 前田知洋

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会員制の力学

 「会員制」というシステムには、ひとつの力学が働きます。「入りたい人」>「入る人」であり、「すいません、ウチは会員制なので…」と「断られる人」がいることで「会員制」が維持されます。必要なことは、顧客に対しての大きな求心力。

 もちろん「会員制」とすることで「求心力がある」ようにみせるイメージ手法もあります。しかし、ネットでほとんどのモノが購入でき、数日後には家に届く現代ではピンとこないのが実情でしょう。

 一方、百貨店の「上顧客カード」のようなサービスも多くの人に受け入れられています。これはポイントによる割引はもとより、「どんな接客をされたいか?」という消費者の選択と企業側がカルテ(履歴)方式でより繊細なサービスを提供できるメリットが一致して普及。しかし、こうしたカードは支払い時に提示されること、「持ちたい人だけが持つ」など、双方のメリットにより成立しているサービスでもあります。

結果、株価は上昇

 大塚家具のケースでは、会長側と社長側のプロキシーファイトの余波で株価が1000円代から2000円代に急上昇。株主総会後は、やや値段を下げたものの、社長側の新しいビジネスモデルへの期待から1600円代を維持しています。市場としては、「会員制廃止」とした社長側のプランを受け入れたと判断することもできます。

 大塚家具で筆者が購入したイスとガーデンテーブルは、初期不良(って、家具には使わない表現かもしれませんが…笑)がありました。両方とも、接客を担当してくれた販売員がすぐに新たな商品を持参してくれて、そのフットワークの軽さに会員制としてのメリットを実感しました。しかし、「会員制でなければ交換は受けられないか?」と言えば、そうではないはずです。ただし、対応はより遅くなったかもしれません。

 もうしばらく、大塚家具の動向はメディアを賑わせる気もしますが、筆者としてはショールームにぜひ足を運ぼうと思っています。会員ではなくても、柔軟なサービスやサポート、新しいサプライズを期待しているところです。まぁ、これは消費者として、コラムの書き手としてのワガママなのかもしれませんが…。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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